左は昨年度発売したWAGNER 2020のペン先。プラチナ・センチュリーベースの青軸(サンドブラスト仕上げ)が大好評で数ヶ月で完売。
その時に、以前と比べて少しスリットを拡げたり寄せたりするのに力がいるなぁ〜と感じたのだが・・・
当方がジジイになって指の力が弱まったせいかもしれないとあまり気にしなかった。
首軸からペン先とペン芯を引き抜くときのも、さほど力がいらなかったので、気のせいだろうと考えていた。
それに完売で手元にあるのは記念に保存してあるのが1本だけで、それに手をつけるのははばかられるので放置していたのだが・・・
本日、試作用の軸に取り付けられていたと思われるペン先を発掘し、さっそく重さを計測してみたところ・・・
100分の1グラムまで計測できるという触れ込みの中国製精密はかりで10回計って平均値をもとめたところ・・・
0.65gだった。58.5%の金(14金)なので金の量は0.38gほど。1gの金の相場は約7,000円なので、ペン先の金だけで2,660円もする。
ペン先の原価がここまで上がれば、一般的に考えれば定価20,000円以下の金ペン先付き万年筆を作るのは無理!
メーカーの対策とすれば、ペン先を小さくするか、金の純度を下げるか、他の素材(チタンなど)に変えるか、値上げするしか無い。
今年のWAGNER 2021のペン先は左画像右側。これを調整しているときペン先のスリットを寄せるのが今年は非常に大変だと感じた。
はっきりいって爪で両側から押さえて寄せるのが出来なくて、器具を使って寄せるしかなかった。
またペン先とペン芯を首軸から抜くのが大変で、渾身の力で引っ張ってやっと抜けるという具合。
ひょっとしてペン先が厚くなってるのかも?とか考えたのだが、この金価格高騰の時期にまさかね・・・と考えていた。
でもWAGNER 2020のペン先を見つけたのを期に計測してみた。
左側はセンチュリーが10,000円から13,000円に値上がりする前のペン先で、右側がWAGNER 2021のペン先。これらも10回計測した平均値。
以前は0.6gだったペン先が、値上がり後のWAGNER 2020では0.65gとなり、WAGNER 2021では0.7gとどんどんペン先が重くなっている。
ペン先の根元が厚くなっているのではないだろうか?そのせいで、ペン先がいままでよりもしっかりと首軸に固定されるようになった。
それは良いのだが、調整師にとってはペン先調整が難儀するなぁ〜という感じは持っている。
しかし一方で、WAGNER 2019の時よりもWAGNER 2020では一本あたりのAdjustment時間は減った。
またWAGNER 2021ではWAGNER 2020と比べてさらにAdjustment時間は減った。
販売後のユーザの不満を減らすために、金の量を増やして品質を安定させたのだろうか?
そうでなくともプラチナはコストカット穴などの金の量を減らす対策をあまりしていない。
そこへさらに金の量を増やすという対策を講じてでもユーザの満足度を向上させようとするのなら超良心的だが・・・
経営的にはどうなのかなぁ〜? 現在のセンチュリーのペン先がWAGNER 2021と同じの金の量だとするとペン先の金の価格は2,867円。
これを13,000円で販売するのは無謀だと思う。今後金の価格が下がる要素はほとんど無いので、設計変更するか、定価を上げるのが得策だと思う。
現在のセンチュリーの出来なら定価20,000円でも高くない!
可能なら再度設計変更し、ペン先を薄くしてペン芯を太くしてくれると調整師には嬉しい。研磨は同じように出来るが、スリット調整が難しいのじゃ。