2005年09月10日

万年筆は刃物! その6 【引っ掛りの調整】5

普通の人は書き味が悪い時に必ずペン先の引っ掛りを疑う。今時の海外メーカーのペン先はほとんどが外注だ。外注先の工場からメーカーに入荷する時点で、ある程度の丸めはされている。従ってインクフローさえ良ければ、ひっかかる事はあまりない。インクフローの調整、書出し掠れの処方は既に解説した。これで太字、極太のペン先微調整は問題なく出来る。多少の引っ掛りも書出し掠れ取りの技で吸収出来る。そこで、ここでは極細から中字程度のペン先のメンテについて言及してみる。この太さの万年筆の書き味が日常使用によって悪くなり引っ掛る感じがする時の原因と対処策は以下のとおり。

 

高い筆圧で長期間書き続けた為に、紙に接する部分が立方体の一面のように平たくなった。

この場合、イリジウムのスリット両側はエッジが立っており、少しでも筆記確度を変えると引っ掛ってしまう。自分でそこまで使い込めば本望だが、ほとんどがオークションで入手したものだろう。従ってペン先の左右のバランスも十分見ておく必要もある。Vintage物の場合、左右の切り割の位置が自由奔放であったりイリジウムの大きさが左右アンバランスなケースもあるそういう部分は事前に調整師の方にやっていただくと後が楽だが、オークションでの入手金額よりも調整金額が遥かに高価な場合もあり逡巡する。まずは、イリジウムを横から見て筆記部分がまっすぐで、上と下部分が円の途中をスパっと切ったように切り立っているはず。この場合、1200番程度の耐水ペーパーで上と下のエッジを丸めて、横から見たときに、丸+直線+丸という形状に研ぐ。それまでは一直線だった部分の直線部分を短くし、両端を丸める。

これで形が出来たら、右上、左上、右中、左中、右下、左下と10000番から15000番のラッピングフィルムの切れ端を手に持ってペン先を人差し指や親指で器用に押したり引っ張ったりしながらエッジを表出させ少しずつ削る。全箇所の研磨が終わった段階で、インクをつけて紙に書いてみる。ガリガリと引っ掛る部分があれば、そこを再度削る。ホンの少しであれば、ラッピングフィルムの上で、8の字、∞の字旋回を5回ずつぐらいやる。20回もまわしたら酷いことになるので、ほんの軽く5回だけ。それで試す。

まあまあの状態になったら、金磨き布で磨く。前章と同様。EFMの場合はエメリーでざらつかせなくともインク切れは無いはず。ペン先スリットの間を2000番の耐水ペーパーで各5回ほどスリスリしたら出来上がり

 

試し書きした時と書斎での机の高さが違う事による誤差で引っ掛る。

このケースは非常に多い。試し書きする時には、普段よりかなり低い机で試したり、直立でショーウィンドウの上で試したりする事が多い。それらは筆記者の普段の机と椅子の関係を考慮して作られてはいないので書き味の誤差は出る。一般に普段より低い机で試筆すれば、ペンを立てて書くことになり、イリジウムの前の方が紙にあたる。逆に高い位置で試筆すれば、ペンを寝かせて書くことになり、イリジウムの根元が紙に当る。従ってこの位置で試筆してOKを出した物は、スイートスポットが多少ずれている。この場合は,汎韻減邏箸魎愀犬△襪箸海蹐世閏損椶垢譴个茲ぁたとえば、根元が引っ掛る場合は右下と左下を研磨する。金磨き布作業は同様にやる

 

ペン先の左右が段差にずれて一方が激しく引っ掛る。

書き続けていて段差が出来た場合は引っ掛らない筆記確度にあわせて徐々にすれてきているので無理に元の状態にすると返って書き味を落とす。が、ペン先をどこかにぶつけたり、落としたりしてペン先とペン芯の位置関係がずれてそうなった場合は微調整が必要

この場合はペン先の段差が無く、ペン芯とペン先が離れないように注意しながら、上に反っているペン先を上から親指のツメで少しずつ押す。下に曲がっている場合は下から親指のツメで上に押す。位置がそろったら、,汎韻減邏箸魄貭未蠅笋襦

 

要するに,ペン先研磨の全てで、それをどこまで意図どおりに出来るかにはセンスと経験の問題。数をこなさないと上達しないし、良い作品を見ないと上達しない。壊した数だけ上達するのも事実だが、ネットで情報が入る今では昔ほど失敗しないだろう。20年前にこのBlogがあれば、拙者の壊した万年筆の数は一桁少なかったじゃろう。ただ、極意を文章で伝えるだけの文章力は無い、、、残念!

2005-09-10 AM



Posted by pelikan_1931 at 06:00│Comments(19) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 | 万年筆
この記事へのコメント
ここで金磨き布調整が出てくるわけじゃな。
この調整方法はプロは誰も使っておらん。拙者が初めて4本のヘミングウェイで紹介した。(画伯に進められてな)
ある文具店では4本のヘミングウェイの横に金磨き布を置いて販売していたらしい。それほどインパクトがあったらしいが、終わった後の清掃を書かなかったので、インクが出なくなって困った人が大量に先生のペンクリに流れたらしい。終わったあとをちゃんとやれば比較的穏やかな調整方法じゃよ。拙者の調整にとっては、今でも最も重要なプロセスじゃ。
Posted by pelikan_1931 at 2006年01月30日 23:08
第1回ブログ・コメンテーターの会はまずまずでした。
御茶ノ水 → 銀座 → 中延 となかなかの一日でした。

Sio-Tien-Dong さん、勉強会いかがでしたか?
Posted by M's Dad at 2005年09月24日 02:29
23日ですと、小生も、stand talker氏も都合がよいのですが…。
Posted by M's Dad at 2005年09月14日 14:58
23-25日 あたりは?
Posted by pelikan_1931 at 2005年09月14日 06:04
下見に行きませんか?pelikan_1931さん、stand talkerさん。
ご存知かもしれないけれど、「山の上」という天ぷら屋の、
ランチの天丼は絶品です。私は、世界一じゃないかと思ってます。
タレが、甘いのと辛いのと選べるんです。
あの街で天ぷらを食するなら「いもや」かもしれないけれど、
社会人になって初めて山の上ホテルで天丼を食べてからとりこになってます。

それと、「山の上」には、神戸近辺でしか買えない「ダイヤレモン」というサイダーがあって、これまたおいしいのです。
Posted by M's Dad at 2005年09月14日 03:12
pelikan_1931 さん

伝説の山の上ホテルですよ! あの!
ぜひ、皆で文章を書きましょう。(^_^)
そう、万年筆は「書く武器」ですもの。

万年筆調整の極意を見て触って感じたい。
万年筆とインクと紙の調和を探求したい。
はじめての万年筆を触りまくりたいです。
雑誌への特集企画提案書を書きましょう。
共同執筆の原稿の投稿先を悩みましょう。
新しい表現のための言葉を創りましょう。
気持ちを切り替え自分を見つめたいです。
古典を紐解き抜書きを繰り返しましょう。

そうなのです。このクドさが命取り(^_^)。

失礼しました。


Posted by stand talker at 2005年09月13日 23:45
stand talker しゃん

いやぁ、山の上ホテルに缶詰にされてねぇ、、、

で何書いてたんですか? 『永』の字をひたすら、、

シャレになりませんぜ。

ま、『檸檬』や『薔薇』を延々と書く方もいますが、、、

Posted by pelikan_1931 at 2005年09月13日 22:30
御茶ノ水(?)から職場までの回数券用意して参加します。
あ、定期のほうがオトクでしょうか。新幹線通勤夢でした(^_^)

pelikan_1931 さんは会場に固定ということになるでしょうから、
他の人が適宜、万年筆買いに走ったり、家に着替えに帰ったり、
時々仕事に寄ったりすればニードにマッチしますよね!(ほんとか?) 

pelikan_1931 さんご苦労様です。
Posted by stand talker at 2005年09月13日 19:24
stand talker しゃん

スィート?でも借り切って2日間。1日目の前半は万年筆書き比べ(酒抜き)そっから先は、何でもありですかね。
仮眠以外に寝てる時間なんてなさそうだし、、、3連休が必要かも、、
Posted by pelikan_1931 at 2005年09月13日 04:38
「万年筆コンクラーベ」 言いえて妙! 決定!
でも、ゑでぃ しゃんは、お酒が飲めん(精神年齢は未成年とか)

「Something Special」も 金無垢149 もそろう。

食い物は、デブデブショッカーしゃんに紹介してもらうか、、

いずれにせよ、コンクラーベ状態でペンクリやらされてはシャレにならんな。
Posted by pelikan_1931 at 2005年09月13日 04:09
す、すごい事になってますな。。。(^_^)

>開高健さんとの万年筆談義 >M's Dad

 そんな話があったのですね。軽々しく話題振ってすみませんでした。
 単なる憧れだけで山の上ホテルと口に出してしまいました。
 本当は缶詰どころか、行ったことすらないのです。すみません。


でも、ますます実現しなきゃいけなくなりましたね。この流れでは。
しかたがない。協力します。(^_^)
Posted by stand talker at 2005年09月13日 02:46
この企画が本当に実現することになったら、
秘蔵してある1980年代前半の
「Something Special」を持っていきます。
このウイスキーのことは、
開高健著「生物としての静物」の中の
『この一本の夜々、モンブラン』に登場します。

できれば、文鎮倶楽部さんにご協力いただいて、
金無垢149を巨匠の写真に添え飾りたいなぁ。
Posted by M's Dad at 2005年09月12日 23:54
んと、「万年筆コンクラーベ」

万年筆好きを集めて鍵のかかった部屋に閉じ込めて、三分の二が満足するまで談義を続ける。3日を超えたら食事を減らし、それでも満足せずに5日を超えたらパンと水とぶどう酒だけにする。

あれぇ、喜んで入りそうな人ばっかり?
Posted by ゑでぃ at 2005年09月12日 23:06
では、山の上ホテル初の万年筆談義の会でも企画しますか!
万年筆サミットというのはあちこちで使われているので別の名を考えねば!
Posted by pelikan_1931 at 2005年09月12日 20:09
山の上ホテルは思い出の場所。
開高健さんと万年筆談義を夜通しするはずだったのです。
「金ペン堂で、純金の、モンブラン149を買って、山の上ホテルで万年筆談義に花咲かせよか。君はオマスを持ってきなさい」
「それと、先生、サムシングスペシャル、ですね。忘れずにボトル持っていきます」
今思えば、王様のなかの王様の万年筆を、日本文学界の王様がやっと入手した記念の夜なのだから、その夜飲むべき酒は、『生物としての静物』に登場するブレンドウイスキー「サムシングスペシャル」もいいけれど、ブランデー「ロア・デ・ロア」あたりを選ぶべきだったかもしれない。

約束を交わした直後、開高さんは倒れた。モンゴルでなく、天国に、イトウを釣りに行ってしまった…。夢の万年筆談義は実現はしなかった。
Posted by M's Dad at 2005年09月12日 13:54
山の上ホテルですか。

缶詰にされるのもいいかも。
Posted by pelikan_1931 at 2005年09月12日 02:15
ご指導、どうぞよろしくお願いいたします。

と言いたいところですが、やっぱりお願いして調整して頂いたほうが
安心です。怖いです。自分では。

糖尿病患者さんが毎日、自分でインシュリン注射しているのを見て
「すごいなぁ」と感心していたら「生きるため」と一喝されました。
そんな父はモンブラン派 (^_^) 

それとは違うレベルとも言えますが、自分の事は自分で、、、、、
でも出来ることだけにしないといけませんよね。。。(^_^)

>合宿
 山の上ホテルがよろしいかと。(^_^)
 出展:M's Dad さんから借りた「こころ 第53号」より
 金ペン堂さんの記事が載っており、非常に参考になりました。
Posted by stand talker at 2005年09月12日 02:12
じゃ、次は合宿でトレーニングじゃな。
朝練、昼練、夜酒で。
Posted by pelikan_1931 at 2005年09月12日 00:05
pelikan_1931 さま

,両豺腓任垢、自分の筆記で形成された面ですと、引っかかりは気に
ならないのですが、線が少しだけ太めになってしまうように感じます。

線幅を戻してもらう(線幅を細くする)時に、実は書き味が相当変わって
しまうことがあり、(あるHPで最近UPされたように)「線のピント」が
問題になるように思います。

今のところの結論は「自分でやれ!」なんですが・・・・・(^_^)

そんな悩みの中、少し荒めのラッピングフィルムを使う、というのは
エポックでした。感謝。

>極意を文章で伝えるだけの・・・
 その極意、(後方からでしたが)確かに拝見いたしました。(^_^)

Posted by stand talker at 2005年09月11日 20:57