2005年09月11日

万年筆は刃物! その7 【ガタツキ、ズレの調整】

これから先は、比較的軽いテーマかな。【その6】が一番重く、かつ、文字面の裏に表現するのが難しい【経験則に基づく技】がたくさんある。自分ひとりで経験したことよりも大勢で経験したことの方が奥が深い。従って拙者がここに書いている事より、メーカーに残っているノウハウの方がはるかに膨大だ。【ちゃんと引き継がれていればだが】

 

メーカーを巻き込んだムーブメントも起こりそうな気配なので大いに期待している。万年筆を人間にたとえれば【優等生の反抗期】のようなもので、多少おだてれば極めて良い素質を持っている。

この素質を伸ばしてあげることに一役買いたいと思う。

 

さてペン先のガタツキ・ズレだが、これは設計上の問題と人為的な問題と調整戻りがある。

 

\澤彎紊量簑

 何度も例に出すがViscontiの小さい方のニブの付いたモデルや、マーレン、Pilotの15号ニブのモデル(初期)は、ペン先の首軸の中に入っている部分が、ペン先全体の面積に比して少ないためか、抜き挿しを繰り返すと、ゆるくなってしまう。ゆるくなると力を入れて横線を書くと、ペン先のスリットと首軸の中心がずれてしまう。そうなるとイリジウムの段差が出来たりインクフローが悪くなったりする。一旦なってしまうと気になってしょうがない。拙者の場合は迷わず首軸交換に出すが、海外メーカーだとそうもいかない。その場合は以下のようにすれば改善される。

ペン芯とペン先を合わせて、首軸の内部に入る部分を把握し、ペン先の上面でペン芯内部に入る部分に、瞬間接着剤を塗り1日ほど乾かす。瞬間接着剤は密着させないとなかなか乾かないので根気良く乾かすこと。

乾いたら、凸凹部分に2000番程度の耐水ペーパーを軽くかける。それをペン芯と一緒に首軸に突っ込む。やっと入るくらいきつければ成功。まだ左右にぶれるようであればやり直し。

間違ってもペン芯に瞬間接着剤が付かないように注意。なをこの方式は、セーラー、アウロラ、Viscontiの大型ニブ、デルタ、スティピュラには不適。MontblancやPelikanには不要。

あとのメーカーは個別にコメントで相談くだされ。

 

⊃涌拇な問題【プロの真似して嵌るケース】

 販売店の方針で、以下のような調整をすることがある。

・ペン先のイリジウムとペン芯の先端を出来るだけ近づけ、さらにペン先を出来るだけ首軸に突っ込みインクが切れないことを最優先にする調整。これは客に試し書きさせない店が、誤差をインクフローで吸収させるためにやる調整。この場合は問題ない。

・客の書き癖に合わせて調整する店では、好みの柔らかさを出す為に、ペンさきとペン芯を可能な限り首軸から前に出す調整をする。プロは筆記者の筆圧を把握し、かつ、ペンソケットの能力を見極めてやるので問題ないが、それを素人が真似てやるケースで問題が発生する。前に出しすぎるとペン芯とペン先の密着力が弱くなり、グラグラするようになる。

この場合は、一旦ソケットや首軸からペン先とペン芯を抜き、正しい位置に揃えてから押し込む。正しい位置は万年筆売り場へ行って確認すること。

なを、筆圧が弱い人にとっては、ペン芯の先端とイリジウムの距離を離してもインク切れはしない。また、ペン先がかなり前に出ていてもずれない。筆圧の強いことが一番の問題と心得よ。

実際、筆圧が弱いほうが楽しめる万年筆の種類も増える。可能であればトライしてみてくれ。

そのためには、まずはインクフローをよくすることが先決じゃがな。

 

D汗位瓩蠅発生した長刀のケース

 セーラーの長刀の場合、ペン先先端が多少上に反っている。それに従ってペン芯も多少は上に反らせていないとペン芯とペン先の間に隙間が出来て、ペン先を上に向けるとスリットからインクが引く。下に向ければすぐにインクは降りてくるが、上に向けてしばらく考えたりしていると出ないことがある。ペン芯とペン先が密着していればその確率は格段に下がる。

最初はいくら密着させるように調整してあっても、直射日光にあたったり、35度にもなる部屋に放置していれば、ペン芯は徐々に元の形に戻っていく。従って、定期的にペン芯の形状を長刀に合わせて整える必要がある。これは比較的簡単。

90度のお湯にペン芯だけ浸して回転する。1分もやれば多少柔らかくなるので、出してペン芯先端部分をを上にそらせるように机の上に押し付ける(ペン芯の斜面の部分を押し付ければ反る)。

ペン先とあわせてみて、隙間が無ければ成功なので、すぐに水で冷す。反りすぎてペン先先端が開きすぎている場合は、かまわず首軸に装着し、再びお湯につけると、徐々に戻るので5秒間隔で上げてみて、よさそうな時点で水に入れて変化を止める。

これは定期的にやると良い。こうやって手をかけるのも万年筆の楽しみ方。

車にはプラグ交換や、ワックスがけが必要なように、気持ちよく使うためには万年筆にもメンテが必要。面倒がらずに楽しんでやって欲しい!

 


2005-09-11 AM



Posted by pelikan_1931 at 18:00│Comments(4) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 | 万年筆
この記事へのコメント
写真の万年筆はLevenger限定のSheafferのスケルトンモデル。
面白いのはペン先が14K-585ではなき、14K-580である点。書き味に変化は無い。かなり柔いペンなので変形に注意。書き味が柔らかいのではなく、素材が柔いのじゃ。
Posted by pelikan_1931 at 2006年01月31日 20:16
インクフローの調整は、最も重要な部分。このズレは上下のイリジウムのズレには適用できない。
上下のズレはペン先をペン芯からはずしてから実施すること。質問はコメントからどうぞ。
Posted by pelikan_1931 at 2006年01月31日 20:14
拙者 pf マークのついていないPelikan M800のニブは一個しか持っていない。元祖 pf 信者だ。実際 pf 付きの時代のニブの方がインクフローが良く、インク切れも少ない。

んがぁ! 最近の pf 無しのペン先も M は非常に良い事を発見。硬いんだが、その硬さとインクフローのバランスを取れば絶妙のペン先になりそうな予感!

あとは天冠のプリントさえ改善されれば、、、

M800のペン芯は非常に良いんだが、欠点は調整もどりの確率が高いことかな。
Posted by pelikan_1931 at 2005年09月14日 06:02
pelikan_1931さんによって、初めて「調整戻り」ということを知った。
「調整戻り」があることを念頭においておかないで、
さっさと「こんな万年筆好きになれねぇ」と見切りをつけてしまう人も中にはいるかもしれない。

ペリカントレドには何度も落胆したもので…。
Posted by M's Dad at 2005年09月14日 02:59