2005年12月10日

Montblanc No.149 は 【M】 で書け5

 万年筆クラブフェンテにはいったころに興味が無かったのは【Vintage万年筆】地味な万年筆】だった。後者の代表のようなMontblanc No.149にはまったく興味が無かった。そもそもコレクターですら無く、書く為の万年筆を100本ほど持ち、それらを調整して(自分用に)書きやすくする事だけに命かけていた。まわりに万年筆好きなんて一人もいなかった。生贄も乏しいので周り中の人から使ってない万年筆をもらい、直してはお返ししていた。

 刈谷のO氏の自宅で十数人で集まった時がフェンテの仲間との初遭遇じゃった。yellowdaliしゃんはまだかわいい大学生じゃったがペンシルは既に200本以上持っていたはず。crocodile149しゃんが受付をしていたことや、名古屋から東京へ帰る新幹線の中で古山画伯や現ペリカンくらぶ会長と大騒ぎしたのが懐かしい。

 その会合の中でフェンテにNo.149の記事を何篇か投稿していたSさんという若い長髪の男性に、記事で紹介していたNo.149をみせてもらった。そのペン先の色に魅了された。金色部分が見事に飴色に変色していた!いわゆるエボ焼けというやつ。エボナイト製ペン芯と長い間密着していると金の表面が変色するという現象。後にmonolith6しゃんから、Montblancの黒インクを使っていると変色が加速するという情報を聞いた。

 この飴色のペン先が拙者をNo.149狂いへと変えた・・・

1960年代 No.149 14C-M
2005-12-09 AM Montblanc_149_60_14C_M

1980年代No.149 14C-M
2005-12-09 AM Montblanc_149_80_14C_M

1980年代 No.149 18C-M
2005-12-09 AM Montblanc_149_80_18C_M

 No.149については今後も何回かに分けて紹介する。kugel_149しゃんが涎をたらしそうなNo.149BBBなんてのもあるしな。書き味はどうってことはないんじゃが、見栄えが良い。

 過去何百本ものNo.149に出会い、そのほとんどに調整の手を加えた。当然試し書きもしたのじゃが、一番日本語を美しく表現出来るのは18C-Mかなと感じた。18C14Cとは独逸からの輸出先が違うだけで、同じ時期に作られていたはずじゃが、ニブの形状は微妙に違う。一般的に18Cの方がペン先のスロープが急じゃ。一般的にといったのは、18CでもBBBではスロープがなだらかな場合もあるから。

 極太の方が書き味が柔らかいと考えている人もいるじゃろうが、一般的にペン先が極細に近づくほど弾力が出る。イリジウムが小さくなるのでそれを支える金の部分も細くてすみ、ペン先のスロープが急になる。急になればそれだけ上に反りやすくなるというわけじゃ。一筋縄でいかないのは、ペン先先端の金部分を細くしすぎた結果、ペン先を上に変形させてしまう可能性があれば、ペン先の金の厚みで調整する場合もある。そうすると極細ではMよりも弾力が減ってしまう・・・・

 万年筆製造の世界は理屈と妥協、コレクターの世界は仮説と妄想が渦巻いていて本当に楽しい。いずれにせよ、Montblanc No.149Mで、外れを引いたことが無い。1本2本ではなく、少なくとも30本以上のMontblanc No.149【1965-1995】のM14C/18C/14K/18K】を試してみた結果じゃ。実はMにもさまざまな形があって面白いのじゃよ。

 しかし、拙者が日常筆記に使っているNo.149は無い。現在の拙者にとっては、もっと使いやすい万年筆はごまんとあるでな。また、最近多少細身が好きになっていることもある。久しぶりにNo.149を引っ張り出してみるかな・・・



Posted by pelikan_1931 at 09:00│Comments(23) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
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Montblanc No.149 1970年代 14C-O3B【万年筆評価の部屋】at 2006年04月12日 20:25
 写真ではちょうどキャップに隠れていて見えないが、1960年代 Montblanc No.149を識別するもっとも大きな特徴は、尻軸のリングの片方にテーパーがかかっていることだ。またリング幅も1970年代以降と比べると、細い。 1960年代No.149はそれ以降のものと比べてインク吸入量....
病弱な1960年代 Montblanc No.149【万年筆評価の部屋】at 2006年04月12日 20:16
 写真は1970年から1980年代に販売されたMontblanc No.149。首軸先端が分離型なので軸は1980年代だが、ペン先は18Cで1970年代から80年代に販売されたものだ。 趣味の文具箱 1には、14Cのニブは18Cのニブよりも年代が古いように書かれているが、それは間違い。14Cと18Cとは同...
絶妙の書き味 1970〜80年代 Montblanc No.149【万年筆評価の部屋】at 2006年04月12日 19:53
 以前にも何回か述べたが、同じペン芯を持ったモデルの14Cと18Cの間の年代の差は無いと考えて良い。仏蘭西輸出用が18Cでその他の国用が14C。14Kと18Kでもペン芯が同じなら同一時代。 問題はペン芯がよく取り替えられている事。これがあると年代の特定は難しい....
1970年代 No.149 の 悦楽 18C-B【万年筆評価の部屋】at 2006年04月12日 19:48
この記事へのコメント
salty7しゃんのblogでNo.149が取り上げれれている。本当に不思議な万年筆じゃ。拙者には使いやすくは無いのじゃが、見かけると買ってしまうのが開高健モデルじゃな。
Posted by pelikan_1931 at 2006年01月10日 22:30
256命しゃん

既に変色してあるのをGetするのが得策じゃ。eBayにはたまに出ますぞ。送る時に掃除しないように事前に言っておかないとな。
Posted by pelikan_1931 at 2005年12月26日 05:13
エボ焼けがするというNo.149が欲しくなってきました。
蝦茶色に焼けたニブをみたことがありますが、あの美しさに変化するのなら、長い時間も我慢できそうです。
Posted by 256命 at 2005年12月25日 21:29
前の続き。

プラペン芯への移行の経緯ですが・・・なるほど理路整然で説得力がありますが。私はひねくれ者なのでしょうか、別の見方でおりました。
すなわち、理由はともあれ工業化の流れで大量生産によるコストダウンの為だと思っています。切削ではなく射出成形にすることにより熟練工の人件費削減、また将来的にも人材不足による品質低下を懸念しての大英断だと思うのです。ベストではないけれどよりべターな選択だったと思います。これは、勘繰りすぎでしょうかね?。中国製の物にプラ製切削物が多いのですが案の定製品のバラツキがひどくドイツ製の射出成形品の方が数段すぐれているように思います。
Posted by らすとるむ at 2005年12月18日 13:47
monolith6 さん。

レスが遅れてすみません。流れが速すぎて見落とししておりました。
そうですね・・・あらためて2桁のペン芯を見てみましたが・・・たいした細工では無いようです。でも地下の下水道から先端への泉の如く湧き出る仕組みには凄い発想と感心させられました。146の2段構造のペン芯も凄いと思いますが・・2桁ペン芯がこれで充分なフローを得ていることが不思議ですらあります。
プラチナのプラペン芯などスリットが細く深く・・・逆に切削では刃物の厚みの問題であの精密加工は無理ですね。しかし、残念なことに精密なプラペン芯でもなぜかフローに不満を感じてしまいます。これは時代の流れでカートリ・コンバーター対応の為ボトルネックを絞った構造から来るのかも知れません。
Posted by らすとるむ at 2005年12月18日 13:15
 らすとるむさん、

 ペン芯に関しては、職人の腕にもよりけりですが、一般にプラスティックの射出成形のものの方がエボナイトを削り出すよりもずっと複雑な構造を作り出すことができるんですよ。セーラーの大型ニブ用ペン芯なぞ、およそエボナイトで作り出すことは不可能です。

 これは聞きかじりの情報で本当かどうか分かりませんが、エボナイトのペン芯は水分(インク)を含むと僅かに膨張します。そこにインクが含まれてフローに貢献する訳ですが、乾燥状態では膨張した分が収縮するそうです。非常に極端な話で恐縮ですが、インクを含むと膨れ上がって首軸を割り、水分が抜けると痩せてニブが首軸内でグラグラ動くようになるということです。それを嫌ってメーカーはエボナイトから多孔質のプラスティックにペン芯を変えて現在に至るということだそうです。
Posted by monolith6 at 2005年12月15日 01:43
 ブルー・ブラックは金一色ニブのやけにはもってこいですが、実はバイカラーのニブに長期間に亘って使用を続けるのは要注意です。時々徹底的に洗浄してやらねばインクに含まれる酸化鉄がプラチナやロジウムのメッキを剥がしてしまう可能性が高いです。
Posted by monolith6 at 2005年12月15日 00:58
monolith6しゃん、らすとるむしゃん

2桁シリーズのニブがエボとすれば、あのインクフローの良さも
納得できます。わかってればもう少しやさしく扱ってたのに・・
思い込みとは恐ろしい! 慎まねば・・・
といいつつ、押入れをひっくり返すのが面倒でまだ確認していない・・・
Posted by pelikan_1931 at 2005年12月14日 19:21
monolith6 さん。
2桁シリーズのエボ情報を有り難う御座いました。
ブルー・ブラックの方がエボ焼け促進には有利だそうですね。
良いことを伺いました。
機会が御座いましたら149のエボ焼けコンテストなんぞやりたいですね!!。
Posted by らすとるむ at 2005年12月14日 08:34
monolith6しゃん

ひさしぶりのフェンテ投稿ですな。期待しております。楽しみ!
プラスティックに乗っていてもエボ焼け?とは・・・
単なる変色ですかな。おもしろそうどす。
Posted by pelikan_1931 at 2005年12月14日 06:37
 二桁シリーズのペン芯はエボナイトです。149に関しましては、外側だけ金色をしているタイプのニブが結構やけます。黒インクでもやけますが、もっと凄いのはブルー・ブラックです。一方、プラスティックのペン芯に乗っているニブでもやけが出るのも多いです。ペリカンの14Cや18C、パーカーの75なんかもそう。フエンテの37号にこの辺をちょっとかすめた投稿をお送りしているのでお楽しみに。
Posted by monolith6 at 2005年12月14日 01:17
らすとるむしゃん

今度ゆっくり見てみます。押入れの奥の方にあるでな・・・
Posted by pelikan_1931 at 2005年12月13日 23:18
いや〜。擦ったりライターで炙ったりして確認してませんが・・・・てっきりあの時代の物はエボだと思い込んでいました。手の込んだ立体的なあのペン芯はプラスチックの射出成形では出来ない物と思います。光沢のない物切削仕上げの物はみんなエボだと思っていました。エボに似た多孔質の樹脂なのでしょうか?。
Posted by らすとるむ at 2005年12月12日 13:00
2桁シリーズのペン芯はエボじゃったかな? 忘れてもうたが。
Posted by pelikan_1931 at 2005年12月12日 08:15
エボ焼けの件ですが・・・少し訂正。
実は2桁シリーズはエボ焼けしないのではと申しましたが・・・25年は放置されたと見られる幻のモンブランNo23のニブを良く見ると赤っぽく変色しておりました。149の14C中白に比べれば些細なものですが少し汚らしくまだらに変色しているようです。でも、よく考えると普通の金製品でも変色しますのでこれはエボ焼けではないのかもしれません。今度師匠や詳しい方に見てもらいたいです。
Posted by らすとるむ at 2005年12月11日 23:29
引っ張り出してみたが、やはり太くてコントロールが難しいな、BBBは。
Posted by pelikan_1931 at 2005年12月11日 20:11
なるほど、凄い話です。
個人的には、149は苦手な部類なのですが、Mニブが良いというのはプルーストしかり。線のピントが合いやすいニブのような気がします。
Posted by stand_talker at 2005年12月11日 00:03
外が金、中が全て銀色の構成のペン先がエボ焼けしやすいようです。
Posted by pelikan_1931 at 2005年12月10日 22:38
いや〜不思議ですね!!。
同じエボペン芯でも2桁シリーズなどもエボ焼けしませんね。
どうしてだろうか??。149ニブのバイカラーに限って発現するのでしょうか?。
残念なことに以前エボ焼けを知らずにピカピカに磨いてしまったような記憶が有る様な無いような・・・自分の18Cのペン先はエボ焼けしていません。モンブランの黒インクを試して見たいです。それに149はMニブが良いようですね、これは貴重な情報です。
Posted by らすとるむ at 2005年12月10日 21:48
256命しゃん

合金の素材によって焼けやすいのと焼けにくいのがあるので一様ではない。焼けやすいのを必死に捜したのが懐かしい。
Posted by pelikan_1931 at 2005年12月10日 18:09
はやく嫁入り先を捜さねばな。
オリジナル化するプロセスが一番楽しいのは事実。
Posted by pelikan_1931 at 2005年12月10日 11:58
今回も管理人さんの意外な過去を垣間見ることが出来て、収穫でした。その意外とは当初149に興味が無かったということ。最近何度かお願いしていたマイ149ですが、オリジナルの60年代製の軸&ペン芯を入手し、付け替えが完了しました。ペン先は18CのOBをM〜Bくらいにしましたが、今のところ良好です。しかし、オリジナルに戻すという作業を終えて、管理人さんと同じく、飽きました。
Posted by フリッツ at 2005年12月10日 11:35
師匠、私が持っているNo.256もエボナイト製ペン芯ですが、エボ焼けの症状がありません。No.149と材質が違うのでしょうか (-_-)
Posted by 256命 at 2005年12月10日 09:38