これはおなじみのPelikan M300じゃ。これまで何度か取り上げてきたが、非常に柔らかい書き味の逸品!ただこれまでこの内部構造が紹介されたことはなかった。本で紹介されるのはPelikan 100や100NやM400のみ。比較的簡単に分解できるM800やM1000もたまに紹介されている程度。
M300はあまりに小さいのと、決してメジャーな万年筆ではない為、分解されて紹介された事はない。基本的にはM400と同じじゃが、分解図を紹介してみよう。
ちなみに専用工具があるわけではなく、自分で作らねばならない。この分解自体が非常に危険なので工具は紹介しないが、破壊覚悟で実験されたい方は自分で工夫してみること。訓練無しでやれば約70%の確率で軸を再生不能にする。拙者がPelikanの部品を妙にたくさん持っているのは実験失敗の成果じゃ。
キャップを除いて部品レベルまで分解してみた。これがユニット単位でアセンブルされたのが下の図になる。どうやってアセンブルするかは、文字で表現すると面白くない。そういう場面に行き当たれば、すぐに理解出きるじゃろう。
一つだけ紹介する。ピストンユニットじゃ。まず真ん中の部品を尻軸の中に挿しこむ。その状態で一番上の部品に途中までねじ込む。ユニットの下(図では右)からピストンを挿し込んで尻軸を右に回して止める。ピストンの余りが長ければねじ込む位置を変えて試行錯誤すればよい。約2回で最適ポイントにたどり着けよう。
左の図で左から2番目のピストンユニットのアセンブルじゃが、うまくすると吸入量を若干増やすことが出来る。今回のアセンブル作業によって、このM300では0.7ccのインクが吸入出来るようになった。M800が1.2cc程度であるから、体積の割には吸入量は多い。従ってBやBBのニブを使ってもそれなりにインクは長持ちする。
繰り返すが、この分解は良い子は絶対に真似をしないように。M800やM1000と違ってピストンユニットは胴体に差し込んであるだけ。しかも400NNのころのように軸と接する部分が長いわけではなく、ほんの数ミリじゃ。従って一度はずしてしまうと差込んでもピストンを下げるのに力を入れすぎるとピストンユニット自体が外れてしまう。これが馬鹿にならないようにはずすのには相当のテクニックと経験が必要じゃ。拙者はこの部分だけで20本以上のPelikanを潰してマスターした。ペリスケは一回で馬鹿になる。M400で2回が限度じゃ。くれぐれも真似しないようにな。吸入量は増やせても0.1cc程度じゃ。大勢に影響は無いよ。