今回から3回にわたって毎週日曜日にMontblancカタログシリーズ第二弾を掲載する。前回掲載したものよりは若干時代が現在に近くなっているはずじゃ。製品のラインナップの差や、カタログの形状を比べると面白い。先日紹介したPelikanのカタログと同じく、独逸で印刷した文字無しカタログに日本で文字を加えたものかもしれない。
前回紹介したカタログはコレじゃ! その1 その2 その3
今回紹介するカタログは面積が約2倍。当然中の説明文は長くなる。ところが肝心の【Montblanc社とは・・・】という企業の歴史にあたる部分は製品の歴史に置き換わっている。大げさに言えば【Montblancを持つことのすばらしさ】を訴えかけることから、【商品ラインナップの紹介】に重点が移っているようじゃ。
これは悪いことではない。第一弾でブランドの浸透をはかり、第二弾で商品の紹介をするのは常套手段。ただ拙者にとっては、第一弾の最初が印象深い。【モンブランの白い星(ホワイトスター)が昇り始めたころ・・・】まさに名コピーじゃ!
表紙はNo.94のWG。Pelikanのように売れ筋(売りたいもの)を表紙に持ってくるのではなく、フラッグシップを表紙にしている。このあたりのそれぞれのマーケティング戦略の違いもおもしろい。本国の意図で作られたカタログであるからこその妙味じゃな。
2頁目の絵と解説を読むと。このカタログが1967年以降に印刷された事が解かる。それにしてもコレクター心をくすぐるようなイラストじゃ。この2頁目を見てVintage Montblancに嵌った人も数多くいたであろう。
1950年代のNo.144/146が1948年製と書かれているので、ちと調べてみた。ランブロー本には142,144,146は1948年発売、No.149は1952年発売と書かれている。Montblanc StarsにはNo.142は1950年、No.144とNo.146は1949年、No.149は1952年に発売されたと書いてある。それぞれの本を誰が書いたかを考えると、このカタログの情報やランブロー本の情報の方が正しいじゃろう。たかだか50年ほど前の情報でも不確かというのも面白い。
4頁目の説明にはウィングニブが独逸連邦特許DBP-970516であると記載されている。相当の自信を持って投入したと思われる。では何故70年代になってウィングニブを捨てたのか?全てはコストが掛かりすぎたからじゃろう。人件費が安く、一本当たりの出荷価格と原価との差が大きな時代なら可能だった製品も、欧州一の人件費上昇率?を抱える一方で、万年筆の相対価格(他の物価の上昇と比べると価格上昇率が低い)が低下し、職人が離れていく状態の打破の為には、よりマスプロダクションに向いた70年代製品へシフトせざるを得なかったのであろう。
おお、前回のカタログには掲載されていたNo.94の18金無垢モデルが記載されていない・・・
現在の万年筆ブームが続けば、ひょっとするとウィングニブが復活するかもしれない。ボエムの後くらいに・・・・それに期待したいものじゃな。
このカタログの5頁目は拙者にとっては衝撃じゃった。No.149は14Cと18Cは同じ時代につくられ、18Cは仏蘭西向け、14Cはその他の国向けと教わっていたのじゃが、日本向けに18金ペン先付が正式に販売されていたとは驚き。ただイラストを心眼で見るとどうみても14Cという刻印に見える。金の含有量の多いほど良い万年筆という評価をしがちな日本市場向けに特別に仏蘭西向けモデルを横流ししたか、仏蘭西から日本向けに輸出したかじゃろうな。当時のフランスは米国に負けないくらいの金保有量を誇っていたはずじゃから金は相対的に安かったかもしれん。
買ってしまった本物の万年筆にはげんなりさせられることが多いが、カタログは夢を広げてくれる。万年筆そのものよりもカタログの方が時代を映す鏡であるのはたしか。カタログを凌駕した万年筆というのは、Montblancでは(不幸にして)フィッツジェラルドしか知らない。利用者の期待を満足さえるだけでは、凌駕したとは言えない。利用者を驚愕させるこだわりがなくてはな。