2006年07月01日

今週の調整報告 その1 【アウロラ 88】

 今週から毎週土曜日には【今週の調整報告】として、当週に調整した万年筆のうちで一本だけを紹介する。修理中心のこともあるが、最終的には必ずペン先調整は行うので修理も含める。

 この記事の目的は・・・
自分で調整をはじめようとしている人への警鐘に
これから調整のプロを目指す人へのヒントに
【真似て失敗し新しい万年筆を買う人】を増やし、万年筆業界の売上貢献に
ということじゃ。どんどん真似していただいてけっこうですぞ。

2006-07-01 88 01 これはAURORA 88 の現行品。第一回目の投稿用に昨日ユーロボックスで購入した。当初のペン先は14金のBがついていた。それを調整しても良かったのじゃが、別のペン先を使うことにした。最終目的が【横極細縦太スタブ】なので、出来るだけ削りが少なくてすむ物を選びたかったのでな。

 調整のやり方としては【長原幸夫式超極細調整】の一部を採用させてもらった。長原幸夫氏は米国での【キャサリンとの死闘】を経へ、現在では超極細調整の第一人者。特に縦も横も細い本格的極細調整ではおそらくは日本一じゃろう。

 プロの技術というものは【生産性】で図られるべき。長時間かけて研げば、ひょっとすると長原幸夫よりも上手く超極細を研げる人がいるかもしれない。しかしそれは【プロの研ぎ師の技】とではない。プロは短時間に完成させてこそじゃ。そのためには得意分野を日夜鍛錬し、生産性や精度を上げている。

 世の中にペン先調整師は(プロアマ合わせれば)かなりいるが、画一した検定制度があるわけではないので夫々技法は違う。いわば異種格闘技のようなもの。K-1選手がプロレスルールで戦ったらあっというまに負けてしまう(パンチで反則負け!)

 夫々が得意分野を持っているからこそ面白い。長原幸夫氏の得意分野の一つが超極細調整で、これはすごい。本物を見れば研ぎ方はわかる。わかれば真似は出来る。しかし生産性ではとても太刀打ちできない。しかもこうすれば細くなるという理論を【キャサリンとの死闘】の真剣勝負の中で、相手の一本しかないペンとの勝負の中で確立したというのは【すごい!】というしかない。

 おそらくは営業マンとして何度も得意先の前で窮地に立たされ、それを乗り越えてきた精神力がベースとなっているのじゃろう。【技術者なら根を上げるか開き直る場面でファイトが沸く!】というバイタリティーを長原幸夫氏から感じてしまう。

 長原幸夫氏の超極細調整は非常にユニークじゃ。ぜひ一本は手に入れて楽しんで欲しい。ロディアの5亰造亡磴良ければ10文字書けるらしい。拙者も貸して貰ってトライしたが【カランダッシュ】と7文字書くのが限度じゃった・・・老眼かいな・・・ _||

 幸夫技法のひとつが、ペン先を薄くするためにペン先の上(背中)の方からペンポイントを斜めに削ること。コンコルドのペン先は極細文字が書けるので有名じゃが、それをペン先を曲げないでイリジウムの削りだけで実現したものじゃ。

2006-07-01 88 022006-07-01 88 03 左側の写真は拙者が今回研いだもの。イリジウム先端が光っているが、これはイリジウムだけではなく、金の部分から斜めに研磨したから。それによって紙にあたる部分はカミソリの刃の様に細くする事が出来る。

 拙者の場合、極細文字ではなくイタリック文字が望みだったので、そこからイリジウムの腹の部分を丸めていった。表で書くときは強筆圧、裏で買うときは弱筆圧で書くと気持ち良いように調整した。

 材料となったペン先はAURORAの18金のスタブニブ。ずいぶん前に削りすぎてほとんどイリジウムが無くなった物を友人からもらった。今回はそれを再利用してみた。後期のAURORA 88のニブらしく、穂先が短いので調整は楽じゃったが・・・・4時間もかかってしまった。生産性とは程遠いなぁ・・・



Posted by pelikan_1931 at 10:00│Comments(29) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
ぴよぴよしゃん

じっくりと静養なされつつ、Blogもよろしく。
調整日記は毎週書きますので。
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月08日 09:08
師匠
Blogは過去に2年ぐらい続けましたが、
色んなしがらみを断ち切るために全て抹消してしまいました。
創造のための破壊?

まだ本調子ではないので、毎日書けるかわかりませんが、
好きな写真や音楽、本、それに万年筆など、私を取り巻く日常の物事を
ぼちぼちと綴ってみたいと思います。
ライブドアのblogは他と操作とか違い、いまいちわかりませんので、
きちんと定住できましたらリンクお願い致します。

ミュージックニブの軸の上物は中屋万年筆さんで作って貰えたんですね。orz
でも私は3776のプラ軸と共に歩みます。
Posted by ぴよぴよ at 2006年07月07日 23:14
ぴよぴよしゃん
#3776のミュージックとともに、Blogも始められたようじゃな。
一ヶ月続けばLinkをつけますぞ。
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月07日 22:35
ぴよぴよです。
大安吉日の七夕の日に、3776ミュージックをおろしました。
太字好きな私には最高の一本の一つで早く連続して書くときや
サインをするときには、腰のある硬めのペン先が威力を発揮してくれそうです。
地味なプラ軸も私に似合うかも。でも、ブライヤー軸にしてあげたくなりました。

コルクはワインの栓が使えないかと思ってましたが、ペンが悪酔いしそうですね。此処は無理せずに、ユーロボックスさんにお世話になろうと思います。
Posted by ぴよぴよ at 2006年07月07日 22:20
東急ハンズなどで売っているコルクを削っても満足な結果にならない。コルク自体の素材が違う。
拙者は以前、独逸のコルク交換が得意な販売店に送って直してもらっておった。今ならユーロボックスで直してもらえる。
交換は自分でも出来るが、コルクが手に入らない・・・
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月06日 06:52
136は今のところ良い塩梅なので、暫く様子を見てみます。
ペン芯の分解は経験がないので、かなりビビリながらする事になるかも知れません。
近い内に134のピストンコルクを交換しないといけないので、その時に書き具合を見ながらチャレンジしてみます。
そう言えば、皆さんはコルクの入手はどうされて居られるのでしょうか?
交換はプロに任せた方が良いのかしら?
耐酸性の高いゴム系か樹脂で作ることができれば、吸入漏れの不安が減るのですが。

#3776ミュージックは、吉日に下ろしてみますが、コンバーターだと頻繁にインクを吸入することになりそうです。
(136ですら二日に一回位の吸入頻度ですから)
もう一本のプラチナはウィングニブ風の幅狭のペン先で、写真で見る限り軸は革シボ風の仕上げでキャップにMUSICと箔押しがして有りました。
今太平洋を渡っている最中だと思いますが、こちらも届きましたらご報告いたします。

Posted by ぴよぴよ at 2006年07月05日 00:33
ぴよぴよしゃん

現物を見んとなんとも言えんが、ペン芯との密着度を上げるには、いったんペン芯だけお湯に入れて反らす。その上にペン先を乗せて首軸に押し込む。ペン先先端は逆ハの字に開いている。
そのままお湯に入れる。ペン先が反りから戻ろうとする力で押されてペン芯の反りが戻る。ちょうど良いところで冷水に入れて進行を止める。

この方法だといい塩梅にペン芯とペン先が密着する。
もっとも素材によりけりじゃがな。フラットフィーダーの50年代Montblancにはぴったりじゃよ。

それと#3776のミュージックは普段使いに最適のペン先。Goodじゃよ。
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月04日 23:32
今日、ミュージックペン3本のうち、プラチナ3776のミュージックが届きました。
想像していたのよりニブは硬めのような気がしますが、まだ下ろしていないので何とも言えません。
日を見て佳き日に下ろしてみます。
でも、コンバーター式なのがちょっと不満。やはり吸入式でないとインクの量が足りない気がして。

それと、書き出しが渋かったMB136のペン先を少し弄りました。
ペン先の背中側から押して、閉じ気味だった切り割りを気持ち開き
同時にペン芯との密着度を少し上げるようにしてみました。
イリジウムまでインクが届くように経路を確保し、切り割りへのインク供給が途切れないようにと念じながら・・・(およそ1時間ぐらい)
調整後、晩飯食べたりなんやかんやで4時間ほど経っていますが、
今のところ、ペンの自重のみでスルスル・ヌルヌルに成ってます。
明朝に戻っていないことを祈りつつ・・・
Posted by ぴよぴよ at 2006年07月04日 23:16
丸刈太しゃん

ほほう、カスタム67でペン鳴りがするか・・・・
そういう経験は無いなぁ。面白そう!やってみようっと。
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月04日 00:55
こんばんわ。
ペン鳴りをさせる調整ですか。うーんなんだか難しそうです・・・。
手持ちのパイロットカスタム67はニブポイントを荒らすとすぐに鳴ります。
特に左下から右上に「えぐり込むように打つべし」で線を引くとすごい振動を起こします。
赤いインクを入れると飛沫でノートの上が殺人現場のようになります。
ニブをツルピカにするとインク切れがしますし、そのアンバイがなんとも微妙で。
Posted by 丸刈太 at 2006年07月03日 23:29
みーにゃしゃん

ペン先の形状(OBかBな)ではなく、紙への筆記角度とイリジウムの研磨の問題じゃ。ある程度修正は可能じゃよ。
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月03日 05:39
先日、一日違いで某所に伺ったところ、話題になっていましたよ♪

「ペン鳴り」っていう現象で、はっとしました。
私のペリカンM320のOB。書くとキュッキュ鳴るんです。
それを聞くと歯が抜けそうな音に感じて、うう〜、と苦しくなります。

修理に出したところ、直ったようですが、鳴る時とならない時があります。
私は「OB」が合わないんだなぁと思っていたのですが、そういう問題ではないのかしら?
Posted by みーにゃ at 2006年07月02日 22:42
丸刈太しゃん

拙者などわざわざペン鳴りを出そうとして調整に手を加えているのに、ペン鳴り殺しですか・・・もったいない!

ペン鳴りはイリジウム表面を細かいラッピングフィルムで擦れば取れますな。左右のペン先が紙に引っかかったバラバラに振動することで発生するので、滑らかに調整すれば直る。
しかし、柔らかいペン、特にPelikanに集中して発生する。拙者はペン鳴りがする状態の書き味が好きじゃ。早く書かないので音も楽しんでおるよ。
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月02日 10:35
こんにちは。今後が楽しみな企画です。いつもありがとうございます。

「ペン鳴り」ですが、筆記時の摩擦によって生じる振動が、ペン先の固有
周波数と一致する(共鳴する)ことによって、「キイイーン」という金属音
が発生する現象、のことでしょうか。同時に左右のペン先が高周波でぶつか
りあうので、スリット部分や先端から激しくインクが飛ぶこともあります。
私はこれが大嫌いなので撲滅します。対策は、ペン先の摩擦係数を変えたり
固有周波数を変えたり・・・要するに形を変えて何とか抑え込む、です。
ペン先が音叉になるのを防ぐということでもありますが。
はてこういうことでいいのかしら?
Posted by 丸刈太 at 2006年07月02日 09:52
らすとるむしゃん

ご明察。コンコルドのように、ペン先先端をほんの少しだけお辞儀させる。例のツボ押し棒にて。
た出し、ペン芯がそのままだと先端が開くので、熱湯につけてちょいと下に曲げるようにすれば、簡単に曲面になる。こういうところがエボナイト製ペン芯のメリットじゃ。
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月01日 23:13
らすとるむさん 初めまして。ぴよぴよです。
感性や感応と理屈・理論の接点にある物事が好きでしたが、金釘流故に筆記具はあえて避けてきました。
処があることを機に、自分の想いを書き記す事や、脳と手帳の間にある思考の触媒たる筆記具を見直そうと、気が付いたら古い物を中心に20本ほどになっていました。
今は太字のペンに染料系インクを詰め、文字の中の微妙なグラデーションを愉しみながら書く事に喜びを見いだして居ます。
そして、古い万年筆の「このように使って」との声に耳を傾けながら、ペンに寄り添うように私が合わせ、書き物を愉しんでいる状態です。
調整とは別の路だと思いますが、万年筆の声に耳を傾けると言う点では同じかと思っています。
まだまだ判らないことだらけです。
らすとるむさん、みなさま、今後ともよろしくお願いいたします。
長文失礼いたしました。
Posted by ぴよぴよ at 2006年07月01日 22:04
らすとるむさん

先日はありがとうございました!
見ていただいた2本とっても好調です!!
実はペリカンの方は書くとキュッキュッと「ペン鳴き」もしてたのですが
(私はあまり好きになれなくて)現状治まってます。

これに懲りずまた是非面倒見てください。
よろしくお願い致します。


Posted by オブリーク2104 at 2006年07月01日 21:24
オブリーク2104 さん。

先日は当方の経験不足でまともな調整が出来ず失礼しました。
師匠の仰るように調整は書き手の書き癖をまねて、再現できないと良い調整が出来ないようです。左手で字を書いたことが無いものですから・・・しちゃかめっちゃかになってしまいました。修行が全然足りていませんでした。
Posted by らすとるむ at 2006年07月01日 21:00
ぴよぴよさん。

はじめまして。
貴殿の調整に対して積極的で前向きな姿勢に感動です!!。
メーカー不詳の5番サイズが付いた金属胴ピストン吸入式・・・
ブログへのアップを楽しみにしております。
今後とも宜しくお願いします。

Posted by らすとるむ at 2006年07月01日 20:49
師匠。

いよいよ実践的な修理調整講座が始まりましたね!!。
調整マニアには堪らない内容ですので有り難いことです。
早速ですが・・・「ペン芯を寝かせる調整」とは・・・・にわかには想像できませんでした。ペン芯自体を暖めてお辞儀させるのでしょうか?。なにやら良い手法のようで興味をそそられています。
Posted by らすとるむ at 2006年07月01日 20:35
ちと調整を変えてみた。ペン芯を寝かせて、ペン先のスリットが密着している状態にした。
ヌードラーズのGreenを入れて書いてみると、表では今まで以上にヌラヌラかける。背中ではインクが出なくなった。

うっかり忘れてキャップを開けたまま放置し40分間TVを見て、机に戻ってそのまま紙にあてると、ヌラヌラとインクが出る。(表)

とんでもなくすばらしい調整になったかもしれない。
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月01日 20:05
オブリーク2104しゃん

御主の場合、左利きじゃからな。
通常のペンと逆の動き。非常に調整しがいがあって面白い!
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月01日 19:52
師匠こんばんは、
「調整報告」楽しみにしてます。
「真似て失敗し新しい万年筆を買う」“理由”ができて良いかなって。。

書き味を表現する難しさ前回の定例会で実感いたしました。

らすとるむさんにもペン先の調整をしていただいたのですが、
「これで良いと思って渡すとダメと言い、ダメと思って渡すと良いと言う」って笑われました。。。
ソムリエの域までいかないまでももっと語彙があればな〜って思いました。

Posted by オブリーク2104 at 2006年07月01日 19:12
298しゃん

小さい時にはインクフローが渋いのが良いのは事実じゃ。
細字万年筆は必ずインクフローを絞ってある。
長原幸夫式超極細はインクフローが悪くないのに超極細というのがすごい!
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月01日 18:27
ぴよぴよしゃん

ミュージックに関してはプラチナ製が卓越しておるからな。いい買い物じゃ。
書き味を言葉で表現するのには、かなり文学的素養がいるな。
kugel_149しゃんが上手い。
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月01日 18:24
長原幸夫氏の極細万年筆でびっくりしたのは、私が万年筆のストレステストとでも言いましょうか・・・ ツバメフールス紙のノートでほんの少しインクの出がしぶいくらいが丁度よいのではないか? との仮説をたててるのですが。 かの超極細万年筆ツバメフールスで問題なく極小の連続8の字??を書いてくれました。 やっぱすんごい!! 細字のテストにはフールスけっこういいのでは? と思いますよー 
Posted by 298 at 2006年07月01日 17:14
ミュージックはプラチナのが2種類と、メーカー不詳の5番サイズが付いた金属胴ピストン吸入式が1本です。
無事届いたら、休眠中のブログにアップしてみようと思います。

質問コーナーは号外でpelikan_1931さんのよろしいようにして頂けたらと思います。

書き味を表現する言葉があると思うのですが、それとペン先の調整状態との
関連が目下の関心事なのです。
が、これは自分でとことん弄って、人に書いて評価して貰わないと
理解不能/体得不可かも知れませんね。
Posted by ぴよぴよ at 2006年07月01日 16:56
ぴよぴよしゃん

ミュージック3本とはうらやましい!

質問は随時受け付けておる。記事のテーマと関係なくてもな。
しかし書きにくいかもしれないので、【号外】で質問コーナーを設けるかな・・・水曜日くらいにどうじゃろう?
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月01日 14:11
こんにちは。
今日の、午前中にミュージックペンを3本立て続けに買ってしまったぴよぴよです。

細く長く険しい道ですが、途中でかすれて途切れないよう精進したく思います。
これからもたくさんのヒントを頂ければと思います。

希望ですが、何でも質問講座のような物を時々開催いただければと思います。
私が、今わからないのは「ペン鳴り」為る言葉の意味で、
これはいったい何なのでしょうか?

ペンが「走る」事はあっても「鳴る」のは、聴いたことがないような気がしています。

インクを仲人にニブと紙がこすれて出す音のことなのでしょうか?
それとも、ペン先の切り割りの処で、パチパチ鳴る音のことでしょうか・・・(-_-;

Posted by ぴYぴよ at 2006年07月01日 13:36