2006年07月08日

今週の調整報告 その2 【シェーファー ニュー・コノソアール】

 今週の調整報告はペン先の修理。しかもかなりの重症じゃった。万年筆はSheafferのプレステージ・コノソアール。日本で発売された当初はニュー・コノソアールと呼ばれていた。この万年筆を購入・調整して一ヵ月後くらいに金ペン堂に行ったら同じ万年筆が調整済で展示してあった。未調整の物に比べてペン先自体が1ミリほど首軸内に差し込まれていたので、それを指摘したら【良くわかったなぁ。これがわかるお客はまずいない。】といって誉められた記憶がある。金ペン堂訪問2回目のことじゃった。

2005-07-08 01 右下のイリジウム周辺のアップを見るとわかるが、ペン先が不気味な形状をしている。これは万年筆を地面に落とした時に曲がったものじゃ。スリットの途中が広くなっているのでインクが途切れてしまうし、イリジウムのエッジも段差がある。

 落下のせいではないが、ペン先を上から見て右側、写真では下側の方が金の部分の幅が広い。このままでも支障は無いが、書き味に敏感な人は違和感を覚える。それより何より美しくない!! ということで、これらを踏まえての修理に取り掛かった。

2005-07-08 02 まずは曲がったペン先を真直ぐに伸ばす作業じゃ。ありあわせの道具で出来る。隙間ゲージの0.1ミリをスリットの間に挟む。その状態で作業しやすいようにゴムのブロックにテープで貼り付ける。

 そして固い割り箸の先端を平らにしたものを先端にあて時計修理用のトンカチでコツコツとたたく。これはスリットの両側に対してやる。曲がってない方もやるのは、一種のおまじないじゃが、一方だけたたくと圧力の掛かり方が左右で違い、調整戻りが発生する可能性があるから。気のせいかも知れないが、拙者は必ず両側をたたく。

 その後、1200番の耐水ペーパーでスリットの間を磨く・・・というより削る。スリットが平らになるように曲がった方を特に入念に削る。

 そうすると、元々右側の金の部分の幅が広かったのに、さらに左側が狭くなってしまい、不恰好さが増す。そこで登場するのが新兵器。今回の調整で初めて登場。これまではルーターを使っていた。

2005-07-08 04 東急ハンズやホームセンターで売っているスチロール製の棒に320番や1200番の耐水ペーパーを巻きつけ、左右のエラの部分を削っていく。特に幅が広い右側は320番でゴリゴリ削ってから1200番で仕上げする。さらには金磨き布で丹念に磨いていく。

 この作業を施すとペン先先端の幅が細くなり、しなりが大きくなる。すなわち書き心地が多少とも柔らかくなるのじゃ。これは大半の人に取って好ましいこと。柔らかくするだけの目的なら、ルーターでシャーシャーと削れば良いのじゃが、径の小さい曲面で削るのでかなり上達しないといびつな形状になる。

 スチロールの棒にヤスリを巻きつける方式であれば、ペン先の局面に近い棒を選べば技が無くても綺麗な曲面を作ることが出来る。東急ハンズでこの棒を発見したとたん使えるなと思った。

 元々はらすとるむしゃんの【スポンジ+耐水ペーパー+クリップ】方式から発想したものじゃ。らすとるむしゃんや拙者は、どんなヤスリを使っても曲面は出せるが、初めてペン先の斜面を削って柔らかくしようとする人は、今回紹介する方式を試してみると良い。耐水ペーパーの消費量は多いが、出来上がりの品質差は少なくなるじゃろう。

2005-07-08 03 左が修理が終了したペン先の拡大写真じゃ。ただしペン先調整前。醜く曲がっていた部分がウソのように真直ぐになっているのがわかる。また左右の金部分の幅も大体同じ程度になっている。

 ペン先調整は、書き味が良いだけではダメで、見栄えも重要。綺麗なペン先で良い書き味でないと人は満足しないものじゃ。

 このあと金磨き布で表面を磨き、その後ペン先に調整を施すわけじゃ。たった今調整の終了した万年筆を使って字を書いてみる。重い軸に付いたフェザータッチのペン先は、筆圧をかけなくともインクがドクドクと出て、柔らかいタッチなのにもかかわらず細字らしい筆記音を出してくれる。やはり万年筆は音でも楽しめないと物足りない。

 来週末のWAGNERで、持ち主のもとへ帰っていく。患者が退院する時の医師の感情というよりは、カスタムカーを依頼主に渡すマニアックな修理工場のヲヤジの心境ですな。



Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(28) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
つよししゃん

おたのしみに! オリジナルよりも綺麗になったはずじゃよ。
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月16日 02:00
すみません!!!休暇を取っている間に・・・こんなに綺麗に治してもらってしまい腰を抜かしてしまいました。また、治すテクニックにもビックリしてしまいました。うーん、ケースに入れて飾って毎日拝まなければ・・・。
本当に有難うございました。
Posted by つよし at 2006年07月16日 01:22
鞄の中でペンの向きがあっちゃこっちゃに為らないように、
ブック型のしっかりしたケースが必要と痛感しました。
外出先で、吸入量の半分も漏れ出てきたら悲劇ですから。
Posted by ぴよぴよ at 2006年07月14日 22:57
ぴよぴよしゃん

Vintage物はペン先を下にして放置するとキャップにインクがたまるものが多い。必ずしもコルクとは以遠が、可能性は高いですな。
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月13日 22:05
ぴよぴよです。
先ほど見たところ、キャップの奥底にインクが溜まっておりました。
コルクシールの劣化の疑いが濃厚のようです。
インク窓の軸との境目などを爪で撫でて見ましたが、特段気になる引っかかりもないようです。念のために、コルク交換時に見て貰うようにします。
Posted by ぴよぴよ at 2006年07月13日 08:37
ぴよぴよしゃん

コルクが大丈夫な場合・・・最悪のケースは・・・インク窓のクラック。
このケースもスコーンとインクが抜ける。
これも修理方法はあるでな。
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月13日 07:00
師匠 
お返事有り難うございます。
持ち歩いた時の姿勢ですが、特定できません。
おそらく横になっている状態が一番多かったと思います。
まずコルクを疑い、一晩ペン先を下にして放置して見ます。
インクが漏れるようでしたら、143と共にコルク交換をしてみます。

Posted by ぴよぴよ at 2006年07月12日 23:39
まず疑うべきは、コルクです。コルクと壁との間に空気が通る隙間が何かの加減で出てしまうと、スコーンとインクが出てしまいます。

もし、ずっと上向きで持ち歩いていたとすれば、ありえない状況ですが、その点はいかがでしょう?

空気が入らない限るインクは出ませんから、尻軸側から空気がピストンの隙間からはいったか、ペン芯の空気通路から入ったかです。

前者の可能性が高いです。
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月12日 23:20
師匠 
本筋から外れた質問で恐縮ですが、下記の症状についてアドバイスを賜りたく、
お時間が許すようでしたら、お返事御願いいただけませんか?

機種:モンブラン146 50年代物
症状:キャップを外したところ、インクがドボッと大量にこぼれてきた。
(被害甚大:涙)
備考:尻軸からの漏れ無し。

インク満タンで今日一日持ち歩き、夕方帰宅時に書き物をしようとキャップを外したところ、インクが・・・
漏れ出たインクの量は吸入量のおよそ半分ほど。
途中146は使用していないので、何時の時点で漏れ出たのかは不明です。

症状よりニブ・ペン芯まわりから漏れたと思って居ますが、
このような場合、まず何処を疑うべきでしょうか?
ちなみに、同様の条件で持ち歩いた他のモデルは正常でした。

気温差、振動、ペン芯と首軸のゆるみ?wooom
Posted by ぴよぴよ at 2006年07月12日 23:00
ぴよぴよしゃん

スチロール棒への耐水ペーパーの貼付じゃよ。
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月09日 23:23
師匠、そのお値段はお買い得ですね。量産効果でコストダウンが進んだのかな?
して、その用途は何でしょうか?

キャップレスは、金ペン太軸の黒です。
今気がつきましたが、12年ぶりに店頭で買った新品の万年筆でした。
(それ以外のほとんどは、オークションやネット通販のヴィンテージです。)
Posted by ぴよぴよ at 2006年07月09日 22:54
ぴよぴよしゃん

小口で2僉10メートルが1400円強じゃた。(通販)

キャップレスは細軸ですかな?
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月09日 22:31
VHBはハンズで買えます。
長期保存性に欠ける(粘着力が落ちてしまう)ので、
量を使わない方は小口で買うのが良いと思います。
昔、業務用途で仕入れたら9千円強/平米でした。

それはそうと、今日、パイロットのキャップレス(FM)を手帳用にと理由をこじつけて衝動買いしてしまいました。
ばらして中を見ていましたが、何とは無しにオリンパスのPEN−Fが思い浮かびました。
良いカメラだったなぁ。
Posted by ぴよぴよ at 2006年07月09日 19:59
ぴよぴよしゃん、らすとるむしゃん

さっそく通販で申し込みました。ありがとしゃん。
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月09日 18:46
超強力な両面テープですが・・・白色の物が黒色の物より粘着力が強いとおもいます。各社性能差はあまり無いと思われますがぴよぴよさんが仰るようにスコッチ(住友3M)がよろしいかと思います。ただし、スチロール棒に巻きつけるのなら薄手の物を選んだほうが良いかと思います。
Posted by らすとるむ at 2006年07月09日 14:49
ぴよぴよしゃん

それそれ! 使った事はあるのじゃが、市販しているのかどうかわからなかったのじゃ!
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月09日 13:40
超強力な両面テープと言うと、住友3MのVHBが思い浮かびます。
これは、工業用/建築用で基本的には一度固定したら
剥がさない(剥がれない)ことを前提としたテープですが・・・
Posted by ぴよぴよ at 2006年07月09日 12:12
らすとるむしゃん

超強力な両面テープが有効なことがわかったが、手元に無い・・・
何かみつけたら教えて欲しい。
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月09日 04:07
No.74の細字はインクフロー渋めの方がおもしろいじゃろうな。
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月09日 04:05
298しゃん

細字なら、紙の上に盛り上がるようにインクが乗る・・・とでべそさんは表現されました。
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月09日 03:59
師匠。

ゴムのブロックはカチカチなんですか・・・判りました。
それで修正(矯正)出来るわけですね!!。

Posted by らすとるむ at 2006年07月09日 01:06
口元が緩むフロー 
まさに指先の快感、ティスティングですね。
私も仮説と実践を繰り返し、この境地に何時かは辿り着きたい。
(希望は大きく)

私は今週はモンブラン74のFを弄っていました。
弄りすぎて締まりが悪くなったので、ちょっと戻したら、少し渋い。。。
手帳に早書きすると自然と筆圧が高まるので、これぐらいで様子を見るつもりです。

Posted by ぴよぴよ at 2006年07月09日 00:40
ふーむ!! 昔の剣の達人に奥義を授かる気分ですが今の私には受けきれないのが悩みのたねです。 でも・・なんとなくわかる気もしてきました!!!   これは日々精進ですね!!
Posted by 298 at 2006年07月08日 21:33
らすちるむしゃん

ゴムブロックはカチカチですし、0.1ミリのゲージはけっこう丈夫。しかも金は柔らかいのですぐ曲がります。
金の斜面落としはルーターよりも【らすとるむ方式】の方が丁寧に出来ますな。
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月08日 21:21
298しゃん、ぴよぴよしゃん

良いインクフローの定義も、いい書き味の定義と同じくらいある。
拙者は書いたとき、口元がゆるむ状態を良いインクフローと定義しておる。
Posted by pelikan_1931 at 2006年07月08日 21:14
こんばんは。

さらに実践的なリペアですね!。大変興味深く拝見致しました。
修理の終了したペン先の拡大画像を見ると完璧なりペアで痕跡すらありません。さらに、スリットの左右の幅まで調整していて落とす前の状態よりも美しくまた書き味をも良くしてしまうところが凄いです。
きっと修理を依頼された方も大喜びのことと思います。
一つ想像がつかなかったのは割り箸の先端を修理箇所に当ててトンカチで叩くというところなんです。隙間ゲージが薄く土台がゴム製のブロックの為叩いてもポヨンポヨンしてしまって矯正できないものと思いました。何か特別な技が有るようにも・・・・そのへんを今度よく教えてください。
わたしは隙間ゲージを持っていませんので早くそろえたいと思いました。
Posted by らすとるむ at 2006年07月08日 21:11
298さん 師匠、
私は、普段使いの紙+いつものインク(MBのブルーブラック)を用いて、
ペンの自重だけ&様々な角度でペン先を紙に接して線を引き、
書き出しからかすれないことを目標にしています。
(F以下はフローを若干渋めにしています)
なぜMBのブルーブラックかというと、好きで愛用しているのと、
今のところこのインクが一番、流れが悪いように感じているので。。。
極黒やカーボンブラックでも試してみたいのですが、
さて、どのインクが一番フローが悪いのでしょうね。
Posted by ぴよぴよ at 2006年07月08日 14:45
ペン先の整形のことと直接関係ないのですが教えてください。 
インクフローの良し悪しってどのように判断するのでしょう? 以前の『万年筆は刃物』で調整方法は紹介されているのですが・・ 素人ができる方法ってどうやればよいのでしょう??  ティッシュにペン先当ててにじみの広がりで見るのも大雑把ではありますが、ある程度違いはわかりそうな気もしますが・・
Posted by 298 at 2006年07月08日 10:46