パイロット会社案内 その14

前回の【伺い状】と【アフターサービス】がエンドユーザ用の施策とするならば、本日紹介するのは販売店向けの施策じゃ。
【憂喜和(うきわ)会】という名称の販売店会は、互助保険、経営指導、技術指導という3つの機能があった。
火災と風水雪害の互助会は、その運営費用をパイロットが出し、保険金は会員が相互に出し合う。要するに相互保険だが、保険会社の取り分が無い上に、パイロットが一部寄付金を供出することによって、会員の取り分は増えることが売り文句だったのかな?
しかし、保険会社は集めた資金を運用して配当金にしている為、好景気の時には、ただ単に貯めておくよりも利率が良い。といって製造業であるパイロットが各方面に資金投資するほど投資ノウハウがあったとは思われない。あくまでも会員相互の結びつきを強くするのが第一目的だったのじゃろう。それと災害の際の審査も甘かったのかも?
経営研究会とは、万年筆販売店の店主に対して、マーケティングやアカウンティングのやりかたを教える経営指導。こういう制度は面白い。当時はメーカーから販売店に直接万年筆を卸していたので、販売店の経営状態がパイロットの経営に大きな影響を与えていた。
販売店の経営がかたむくと回収不能の売掛金が発生してしまう。従って如何に販売店に儲けていただくかがパイロットにとって大きな意味があったのじゃ。店舗の清掃、照明、対応の仕方で売上げは大きく変わってしまう。この部分は繰り返し教育を各地で行っていたらしい。卸価格と製造原価との間にかなりの利ざやが無いと出来ない技。万年筆は当時最も注目される産業だったのでこういうことが出来た。早い話が儲かっていた・・・!
修理講習会というのは、当時始まったばかりの制度だったと思われる。講習を受けた人がたった1500人しかいない。もっとも平塚工場に集まってもらっての講習では地方の万年筆店の店主には金銭的、時間的負担が大きく、とても参加出来なかったであろう。
その部分のフォローは巡回修理講習班が全国を回っていたということじゃが、実際には販売店を回る営業マンでもほとんどの修理技術は持っており、販売店主に教育していたらしい。
【お客様は神様です】とか【顧客志向】とかいうが、株式会社にとって重要なのは株主、社員、販売店、顧客の順。パイロットはその事を良くわかっていたからこそ、販売店を顧客よりも大事にしたのじゃろうな。
パイロット会社案内【その1】 パイロット会社案内【その2】 パイロット会社案内【その3】
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パイロット会社案内【その13】
Posted by pelikan_1931 at 07:00│
Comments(13)│
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周辺Goods
298しゃん
毎月20人ずつ!というのがすごい。25日のうち、10日間は教育していたわけじゃな。修理も実習つきのようじゃ。それなら時間かかるじゃろう。
10日間 万年筆の原理から実践的な修理 販売経営 ・・ なんとも凄い!! (笑)
なんと一人10日間の講習じゃった。以下のメールをいただいた。ありがとしゃん。
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昭和初期は、滝野川の社員寮に泊まり、大塚の工場で講習を10日間。
交通費と食費は参加者。宿泊費と教材はパイロット。万年筆の原理から実践的な修理はもちろん販売経営までみっちり。日本全国から毎月20−30人集めて。一人10日間です。
戦後は平塚工場で講習。三鼎閣に宿泊。戦後も一人10日間です。
昭和40年位まで続いたようです。
298しゃん
一回は10日間じゃが、一店舗あたりの講習は1日程度ではないかな。
10日というのはあくまでも主催者側の数え方で、参加者は1日と考えれば良いのでは?
丸刈太しゃん
家電業界では、系列販売店を通じて販売する手法が中心の間は成立していた手法ですね。たしかにパイロットと似てます。
現在では量販店が出来て、電気屋と消費者の信頼関係が希薄になったのも事実・・・
らすとるむしゃん
栃木の万年筆病院を訪問した際、店主はセーラーにお世話になったとおっしゃっていたが、修理道具はプラチナ用が多かったのじゃ。
各社の修理が出来るとおっしゃっていた。
研修も各社で受けたと思われるな・・・
並木良輔しゃん
技術はライバルが多いからこそ磨かれる。
稀少な技術となってしまった宮大工なども職人が多かった昔の方が腕の良い人が多かったはず。
万年筆でもエボの加工、テレスコープ機構など今では作れないものも多い。ただし、現在では記録する技術は発達しているので、将来のために残しておこう。いつか役に立つはずじゃ。
このBlogもそういう目的もあって立ち上げた。
10日間の修理講習会って・・・?? WAGNERの皆さんなら10日へっちゃらですねきっと!! (笑) たぶん講師が根を上げますね
家電メーカーも類似のことをやっていましたね。どちらが先やら。
師匠
セーラーとかプラチナも互助会を作っていたのでしょうか?。
そうなると・・・憂喜和(うきわ)会というより憂和喜(うわき)会のようですね。もっともパイロット一筋、パイロット万年筆しか置いていません・・・なんて気骨のある販売店があったら面白かったんですが。昔は今にくらべてブランド志向がやや希薄であったと思われますので、やはり無理なのでしょうね。
修理が販売店で出来る事によってお客様が固定客化するという発想はただしいと思います。
残念なのは、万年筆自体の市場が狭まって、修理技術を発揮させる機会が減り、技術は捨てても良いやとなったことです。
今こそそれが発揮される時なのに。
らすとるむしゃん
販売店も各社のを扱っていると、3つくらいの互助会にはいっていたかも?
こんにちは。
【憂喜和(うきわ)会】ですか・・・パイロットのシンボルマークの”浮き輪”に引っ掛けてあるのだと思います。互助会制度も有ったなんて驚きですね!。
これなら、販売店でも積極的にパイロットの製品を売るようになりますね!。