ティファニーがPelikanに製造委託したATRASという万年筆がある。ティファニーは過去にもMontblancのNo.149やNo.146のクリップにTIFFANYと刻印しただけのOEM品を発売したことはあるが、デザインにも手を入れたのは久しぶりではないかな?
M800用の14C-O3Bを数個入手したので取り付ける軸を捜したが、適当なのが見つからないのでATRASに装着してみた。Pelikan M800がベースだけにそれほど不似合いでもないが、胴体に銀色部分が無いので、ニブを金一色に鍍金したほうが良いかもしれない。
実はオリジナルのニブには、社名が刻印されている。それをルーペで見ていて気付いた。元々WAGNER仲間で【伊太利亜刻印】では?との噂も流れた刻印が【M】の左側にあるのは知っていた。これは全てのATRASニブにあるわけではないらしく、うらやましがる人もいたが・・・【18C-750】ではなく【18KT-750】にこそティファニーのこだわりを感じるなぁ。
ソケットを外してみると、根元付近の右側にもう一つの刻印がある。最初はDINTかと思ったがソケット内部にDINTが出来るわけも無い。といってインクのしみでもない。
ルーペで拡大してみると【P.F】ではないか!しかも通常はペン先の内部から外側に向かって刻印してあるが、これは外側から内側に向けて刻印してある。
実はATRASのニブはめちゃくちゃ硬い。現行のニブと同じくらい硬い上、刻印が深いのでさらに動きが制約され、ますます硬くなっている。弾力ではなくインクフローで書くニブじゃ。当然【P.F】マーク無しの時代に作られたと考えていたのじゃが・・・・
現在では【P.F】マークは製造委託先の印ではないか?との説も出てきている。現在のニブはマーク無しで、自社生産と言われているので、まんざらガセではないかもしれない。ということは【E.N】マーク付のニブはまた別のOEM先なのか?なかなか楽しませてくれる刻印じゃ。
ちなみにマーク無しのO3Bニブの根元には刻印は無い。14Cのニブは地金が薄く、刻印が浅いので柔らかい弾力になっている。ただし素材は硬い・・・
18C-PFニブは地金が厚く、刻印も深いが、形状と素材そのものの組成で柔らかさを演出している。どうやらこうして工夫した柔らかさが市場クレームになったのか、最近ではガチガチのニブが市場に出回っている。こちらの書き味もなかなか良いが、やはり刻印が無いとニブが殺風景じゃ。なにか我々を煙に巻くような刻印を入れてもらいたいな・・・・いやいや、そんなことに無駄なコストを使うよりは、天冠の彫りを戻してもらった方が良いな。