2007年04月07日

拙者ならこう売った? 【 Pilot Super 22KAGM Coarse 】

2007-04-07 01 2006年2月27日の記事【Pilot Coarse と Sailor Zoom は似ていた!】とそのコメントを読んでいたら懐かしくなって再度【Pilot Super 22KAGM】とキャップの口に彫られた万年筆を引っ張り出して見た。

 コメントを読むと、当時はまだ【萬年筆と科學】は読んでいないし、読む気も無かったようじゃ。周りに奨められて読み始めたわけじゃがペン先調整をしていないと理解出来ない部分や、渡部氏が販売店を洗脳する為に意図的に書いてあると想像される部分、商売を忘れて熱く語っている部分などが満載され、非常に面白い。また、単に読むだけではなく、Blogにまとめようとするからこそ見えてくる部分もある。

 ここで紹介するCOARSEニブ付きの個体じゃが、キャップリングに【Pilot Super 22KAGM】との刻印がある。コンバーター式なので復刻版であることは間違いない。拙者はコンバアター50を付けて使っていた。商品名はコンバター50ではなく【コンバター50】なのでお間違えなく。

2007-04-07 02 このペン先は穂先が長い。穂先というのは通常はハート穴からペンポイント先端までの切割りの長さをさす。この穂先が長いと書き味は柔らかくなるが、切割りの左右の巾が均一でないとヘボな書き味になる。この個体の書き味は絶妙でアンバランス感は無い。品質管理が出来ているからかな?

2007-04-07 03 このペンポイントの研ぎは強烈じゃ。まったくの出荷状態であり拙者は何の調整も施していない。これで上手く書こうとすれば首軸の真ん中ぐらいを持って、筆記角度70度くらいで書く必要がある。拙者の筆記角度(首軸と胴軸の切れ目より尻軸寄りを持つ)ではイリジウムの腹の角しか紙に当たらない。

 研ぎに合わせた筆記角度で書いてみると縦横同じ字巾の綺麗な線がニュルニュルと書ける。実に気持ちよい。しかし滑らかという感じではない。研磨跡が残っているからじゃ。

2007-04-07 04 これが本邦初公開のPilot SuperのCoarseの表面じゃ。図上でうっすらと横線がペンポイントに入っているのがわかるかな?

 これは研磨機でジャーっと削った際のヤスリの跡であろう。痕(あと)と読んだ方が良いかも知れぬ。これは検品漏れではない。ニブを日常的に研磨していればわかる。この線を言いかえれば【妥協線】とも呼べる。


 ペン先作りやペン先研ぎというのは、メーカーの中では生産性という指標で管理される項目であろう。いかに短時間で出荷状態の形状の研げるかが重要になってくる。

 EFなどと違って大きなペンポイントの研磨には最初に粗い砥石で研ぐ。そのほうが時間が短いからな。その次に順に目の細かい砥石で研いでいく。極太用のペンポイントには最も太く書ける削りがある。出来るだけその削りに最終研磨で持っていくようにするわけじゃ。ところが粗とぎで削りすぎてしまうと、仕上げ研ぎすると最太ポイントを超えてしまう。そういう場合、仕上げ研ぎの量を減らしてでもペンポイントの幅広さを維持しようとするのじゃ。超極太のCOARSEに取っての品質は、書き味ではなく字巾の広さ。

 極太ではイリジウムが紙に当たる接紙面積が広いので少々のペンポイントのざらつきはインクフローが吸収してくれるからな。そこで幅広と書き味の妥協が生まれるのじゃ。

 しかし・・・・この個体の調整はあまりのザラツキを残しすぎじゃ。少ししだけ研磨すれば絶妙になるのに・・・・・と考えていて思いついた・・・拙者ならこう売った!

 万年筆の売上げを伸ばすには、昔と同じように販売店で微調整が出来る事が必要。とすれば、メーカーは思い切って、もう【ひと舐め】で絶妙になる程度のざらつき状態ニブを出荷し、店頭で販売員がフィルムでつるりと磨いて絶妙にする!こうすればユーザの販売店に対する信頼は上がり、リピートオーダーが稼げるのではないか?

 最初から完璧な状態では、販売店と顧客の関係は希薄なものになる。これを濃密な関係にすることこそが万年筆という【なんとも人間臭い筆記具】の販売に必要なのではないかな。腕の良い調整人のいる店には半完成品を納品した方が喜ばれるのではないか?最近はメーカーでは逆転の発想で商売をすることがある。

 万年筆メーカーは【万年筆を売る】のではなく、販売店の【調整師の腕を売る】
のをミッションとしてはどうか? その調整師に自社の万年筆を奨めてもらえば良いわけじゃからな。万年筆メーカーのミッションチェンジ! 無責任な思い付きではあるが、フルハルターや金ペン堂に行く人は万年筆に惹かれて訪問するのではなく、スターに憧れて行くようなものなのも事実。調整師が増えれば可能性はある。

Posted by pelikan_1931 at 08:00│Comments(12) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Blog紹介 
この記事へのコメント
22KAGMが22金鍍金の意味であることは確かだが、AGMの意味は不明じゃ。
Posted by pelikan_1931 at 2007年04月08日 02:19
すいません、他の方のお話とはまったく違うトンデモナイ質問で恐縮なんですがAGMってどういう意味なのでしょう?Sailorのペンにはたまにこの刻印があるのですが何の略なのかわかりません・・・。
Posted by 二右衛門半 at 2007年04月08日 00:38
ぱいたんしゃん

最初は良い状態で出荷し、ファンが増えたらカスタマイズの余地を残すのじゃ。
その間に職人を養成する。資格といっしょで、それで儲かるとなればドカっと参加者が増える。

かなり体力が居る仕事なので目がよく体が柔らかいうちに始めて、からだにワザを叩き込んでおけば年取っても楽じゃろう。
Posted by pelikan_1931 at 2007年04月07日 22:47
らすとるむしゃん

仕上げをしていない状態じゃが、ぬらぬらとインクは出る。ただしふわふわではない。かなり厚いニブじゃ。ただ、筆圧を掛ければかなり開く。徹底的に字の太さにこだわったようじゃな。
Posted by pelikan_1931 at 2007年04月07日 22:43
298しゃん

そうかAMG方式か! ただ・・・書き癖にあわせるので、まずはその分類が必要じゃな。

金ペン堂さんは試し書きをさせないということは、書き癖を分類し、その発生頻度に合わせて事前準備していることになる。

ということは、分類は可能じゃ。
Posted by pelikan_1931 at 2007年04月07日 22:41
>一本一本をすばらしい状態で出荷すれば...

そうすると、店頭での調整もラクなので、店員さんも
【超絶技巧】とまでは必要になりませんものね(^^)/
Posted by ぱいたん at 2007年04月07日 20:55
こんばんは。師匠。

この復刻版のコース・ニブは切り割りが驚くほど長いですね!
オリジナルのコースは知りませんが太字は硬いニブが基本と承知していましたので意外でした。お堅いパイロットがいったいどうした事でしょうか?
書き味はどうでしょうか?。今どきのマニア好みのフワフワ・ヌラヌラ?のはずは無いと思いますが。



Posted by らすとるむ at 2007年04月07日 18:51
ベンツやBMWにはチューニング専門の会社がたしかありましたね。 AMGやALPINE??でしたっけ 誇らしげにロゴも変えてます。 まあロゴを変えるのは次のステップとして、フルハルターチューン 長原(父)チューン の証明書を発行するというのはどうでしょう? チェキのクローズアップがとれるのがあるとニブやチューン箇所の写真を添付して、日付、調整内容とサインなんて・・(笑)  外国には調整師により高値がつくというのあるのでは??   
Posted by 298 at 2007年04月07日 18:23
Soneetistしゃん

大先生の付加価値がつくのは面白いな。
まるでサインボールみたいじゃ。

調整した人が刻印を残す・・・
5人くらいの刻印の入った万年筆ってのもおもしろいかも・・・
Posted by pelikan_1931 at 2007年04月07日 14:31
ぱいたんしゃん

そのためには、万年筆を売ると儲かる状態にする必要がある。すなわちマーケットに規模を100倍にせねば。

そう難しいことではない。一本一本をすばらしい状態で出荷すればよいのじゃ。全ての会社がな。

我々の例を見るまでも無く、良い万年筆を手に入れれば、もう一本欲しくなる・・・100倍の市場拡大はすぐじゃ。

出荷調整に手を抜くから市場がヘタるのじゃ。

全社が足並みをそろえるのじゃ。
Posted by pelikan_1931 at 2007年04月07日 14:28
pelikan_1931さんのおっしゃる販売店のペン先調整の余地を
残すに万年筆の深淵を感じたものとしては同感ですが。
これから万年筆を購入しようかと思う人は、おそらくインタ
ーネット検索し、どんなブランドがあるの?定価の○○%off
が相場なの?が最初の情報かと(別にネットで買っても書け
て当たり前)。
が、万年筆という商品はお店の調整込みで定価販売できる商
品ではないでしょうかと。

金ペン堂の例もありますが、私の住んでいる千葉ではJFL-2に
いくとお店の方の調整済みの表示が国産品で幾つかあり、い
いなと思いましたが、調整表示のある商品と同じ値段。その横
にはセーラー品の長原大先生調整済は+アルファの値段でした。
Posted by Sonnetist at 2007年04月07日 10:46
>販売店の【調整師の腕を売る】 ...

このアイデア、すてきだと思います(^^)/

どのお店でも店頭で最適化してくれるなら、
地元のお店に足しげく通うようになると思います。
どのお店でも店頭で最適化してくれるなら、
「ちょっと冒険かも...」と思う万年筆でも
気安く買ってしまいそうな気がします。
長い目で見ると、技術をもった方が常駐している
のはお店にとってもものすごい財産だと思うんですけど。

それはさておき。
パイロットOBさんのお話によると、‘スーパー’の
ニブ&ペン芯には4つ(5つ?)も種類があるそうで
「三日月が真ん中じゃない」タイプを一度この目で
見てみたいですぅ!
Posted by ぱいたん at 2007年04月07日 09:15