アラン・ロブ=グリエの定義する消しゴムとは:女性名詞。程度の差はあるが多かれ少なかれ弾性に富んだゴムの小片。鉛筆やペンの跡・・・・・・そして時間を消すのに使用される(三輪秀彦氏訳)とある。
鉛筆が記憶を記すものだとすれば、消しゴムはたしかに記憶を消す・・・すなわち過去を消してしまうと言ってよいかもしれない。
この当時の消しゴムにはまだまだゴムっぽいものが多い。それにしても懐かしい。1983年に万年筆を使うようになると、GANGYのインク消しや、ペリカンの砂字消しのお世話になる機会が増えた。ただ当時はPelikanというロゴに何の価値も見出せていなかった。もしその当時に戻れるならばPelikanの消しゴムを買いまくっていたかもしれない。ステッドラーやカステルの消しゴムというのも本場の匂いがしてなかなか良さそうじゃな。
拙者が凝った消しゴムは電動字消し。これは当時日本で入手出来た全てのモデルを使ったはず。電動字消しと字消版があれば、どんな細かい所でも部分的に消す事が出来る。
普通の消しゴムと字消版でも問題なく使えるのだが、生産性が悪すぎる。電動字消しを使えば一瞬! ソフトウェアの設計には非常に重宝したものじゃ。
電動字消しの弱点は、カスが飛び散る事。この対策として56番、57番にあるブラシや羽根箒を利用した。豚毛ブラシの方がはるかに効率的なのだが、羽根箒の方が製図をしているようでかっこいいので、会社では羽根箒を使っていた。ほぼ全員が電動消しゴムを使っていたので、部屋中いつもガーガー音がしていた。たまに静寂が訪れるとかえってリズムが出なくて困ったものじゃ。
就職して最初に住んだアパートは国道246沿いにあった。夜間であってもゴーゴーとトラックが走り、途絶えることは無い。最初の3日間くらいはうるさくて熟睡出来なかったが、すぐに慣れた。帰省してあまりに静かだとかえって寝つけないほど・・・人間の順応力には恐れ入った。
ここには掲載されていないが、タイプミスした文字を消すのにはスノペイクという修正液を使っていた。外資系企業だったせいもあるが、清書は全てタイプ。従ってスノペイクもお徳用があった。そしてその液を薄めて使うためのシンナーの大きな缶もセットで事務用品置き場にあった。
万年筆の首軸にテープの跡や、修正液が付いた時には、このシンナーで拭いた。そうすると首軸がサーっとくすんでくるものもあった。代表がSheafferの首軸で、シンナーにはからっきし対応力が無かった。
このシンナーは鉛筆で汚れた事務机の清掃にも非常に便利。ティッシュにシンナーをつけて机の上を擦るとあっというまに綺麗になる。問題は臭くてラリってしまいそうになった事。さすがに社会人はシンナー遊びはしないと考えていたのだろう。
同じシンナーが伊東屋で売られているのを見てびっくりした記憶がある。考えようによってはシンナー遊びの材料を売っていたのに等しい・・・・・ 今ではもちろんシンナーなどは売っていない。スノペイクも売ってないじゃろうな。ほとんど全てがペン型の修正液になっているはずじゃ。それにタイプ自体も無くなってPC印刷だからな。
消しゴムはどんどん消えていっても、この言葉だけは残しておきたい。25番の大消しゴムに印刷された言葉をな。
【You Can't erase true love】
さてそろそろ出発せねば。岡山に帰省して、明日(2日)はいよいよ松江の万年筆店めぐりじゃ!こちらは消えない思い出となるじゃろう。
【過去の記事】
2007-04-24 暮しの設計 No.117 1977年【世界の文房具】vs【趣味の文具箱 Vol.7】
2007-04-17 暮しの設計 No.117 1977年【世界の文房具】その1