2007年05月29日

暮しの設計 No.117 1977年 【世界の文房具】 その7

2007-05-29 01 5月26日に開催されたWAGNER裏定例会において、幻の逸品を目にした。

 今から10年以上前、アメ横のフレンド商会のオバチャンが【店頭には置いてないけど、すごいのがあるよ。見せるだけ見せてあげようか?】といって押し付けるようにして見せてくれたのが、デュポン・クラシック万年筆で、純銀軸に漆を塗ったもの。

 【純銀軸へ漆を塗るのは非常に難しいのよ】と自慢された。おねだりすれば売ってくれたかもしれないが、当時はクラシックではなく、ポルトプリュームにしか興味が無かったので見せてもらうだけで満足していた。

 それと同じものが、ひょっこりと裏定例会に持ち込まれた。拙者が過去に紹介した記事を読んでいた方が見つけて購入したとか。拙者は最初気付かなかった。以下2人のやり取りに、途中からkugel_149しゃんが参戦して知識を披露した件じゃ。

 【pelikan_1931さんが好きそうな物を手に入れました。見てください。】

 《ほう、Dupontの青漆ですか。ペン先はPelikanが作っていたころのクラシックですな。これには隠れた名品として、純銀に漆を塗ったものがあったのですぞ。》

 【実は、これこそがその純銀軸に漆を施したモデルです。軸に925の刻印があります。pelikan_1931さんの記事を見て入手しました。】

 《えぇ!あ、本当だ!925の刻印がある!しかも漆が剥がれていない。これすごく剥がれやすいから気をつけてね。》

 【軸に都彭という名前が彫られているのですが、漆職人の銘ですかね?】

 《純銀にオレンジの漆を塗り、その上にブルーの漆を塗って、銘のところを削ってオレンジ文字を出しているようですな。Parkerだと漆モデルは製造初年度だけ銘のようなものを入れていたが・・・kugel_149しゃん、知ってる?》

 彼はおもむろにティファニーのルーペを取り出して刻印を見て・・・

 『都彭ていうのはDupontのことです。私も持ってました。純銀軸に漆をかけた万年筆も!』

 《【ええ!都彭ってDupontのことだったんだ!】》

 といって納得したのじゃが、昭和52年に発売された世界の文房具に掲載されていた。写真の10番の物には都彭との銘が入っていると解説されてる。それがDupontを意味することは知らないようじゃ。

 しかも10番のモデルは真鍮に漆を塗ったモデルではないかな?純銀に漆のモデルはそれより古いのではないかとも思う。が、この当時はまったく万年筆に興味が無かったので、時代を共有していない・・・残念じゃ。

 いずれにせよ、Montblanc No.149が2.8万円、No.146が2万円の時代に8万円!今のNo.149の定価から想定すれば、ファーバーカステルの琥珀のような存在かな?


2007-05-29 02 当時の最先端文房具はタイプライターだったのか、相当たくさん紹介されている。コンピューターは非常に高価で80MBの磁気ディスク装置が何千万円もした時代。

 この当時、拙者は外資系に勤めていたので、経営会議などの資料は英文タイプだった。幸いにして身の回りにキーパンチャーがたくさんいたので、彼女らにタイ焼きと交換でタイプしてもらっていた。

 外国との文書のやり取りが多い部署ではIBMのボール式電動タイプライターを使っていたが、その他の部署では安いオリベッティーの標準型タイプライターを使っていた。文字数を数えてピッチを計算し、単語の変なところで改行されないようにするのが技だった・・・らしい。拙者はいつも【タイ焼きでおねだり】を繰り返していたので仕上がりは早かったが、いまだにブラインドタッチが出来ないままじゃ。まるで蟻とキリギリスみたい。

 オリベッティはイタリアのメーカーだが、タイプライターも実にカラフル、かつデザインも洗練されている。ヘルメスとかトライアンフというのもあり、なかなかしゃれている。まるで駆逐艦みたい。それに対して左下のコクヨの和文タイプは戦艦大和のように重厚。海外にはタイプライターコレクターがたくさんいると聞くが納得させられる。彼らにとって和文タイプライターは蒔絵万年筆のようなもの?

 今回、万年筆とタイプライターを取り上げたのは・・・当時最先端文房具だったタイプライターは姿を消し、ワープロ、PCに取って代わられた。機能で売るものは上回る機能を持つものにリプレースされる。

 一方で万年筆は現在まで生き残り、ブーム復活が感じられるようになった。機能や性能が受けているのではなく、また、ノスタルジーが受けているのでもなく、【愛でる道具、愛玩具】と評価されているのかもしれない。

 昔、田舎では犬猫は家畜じゃった。番犬とかネズミ捕りを期待されていた。現代の都会における犬猫はどうか?彼らに期待するのは、家畜としての役割ではなく、癒してくれるパートナーじゃろう。

 拙者にとっては万年筆は、猫と同じ存在なのかもしれない。気が付けば、拙者と同じ体型の【チビブー(猫の名)】が拙者の足の指を舐めている。どうやらおなかがすいているようじゃ。チビブーにとっては拙者は、何でも言うことを聞く家畜なのかもしれない。


【過去の記事】

2007-05-22 暮しの設計 No.117 1977年【世界の文房具】その6 
2007-05-15 暮しの設計 No.117 1977年【世界の文房具】その5 
2007-05-08 暮しの設計 No.117 1977年【世界の文房具】その4 
2007-05-01 暮しの設計 No.117 1977年【世界の文房具】その3 
2007-04-24 暮しの設計 No.117 1977年【世界の文房具】vs【趣味の文具箱 Vol.7】 
2007-04-17 暮しの設計 No.117 1977年【世界の文房具】その1 


Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(24) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 周辺Goods 
この記事へのコメント
怠猫しゃん

その分野での同士は、萬年筆仲間より難しかろうて・・・
Posted by pelikan_1931 at 2008年04月13日 07:09
>刑事コロンボ
いいですねぇ〜

>タイプライター
チャンドラーとかハメットはタイプライターだったような...(謎)

映像なら、刑事コロンボとセブン。
小説なら、“長いお別れ”と“夢果つる街”が畢竟です。

至高は“マルタの鷹”と“カサブランカ”。

同志を探すのが大変です。
Posted by 怠猫 at 2008年04月13日 00:04
怠猫 しゃん

IBMタイプライターは刑事コロンボにも出ていた・・・
Posted by pelikan_1931 at 2008年04月12日 03:31
おおっ?

我が母猫は元タイピスト。
その所為かパソコンのメンブレンキーボードが使えません。
就職祝いにUNICOMP製のIBM88キーボードをあげたら、狂喜乱舞。
家族の顰蹙を買いながら使っているそうです。
Posted by 怠猫 at 2008年04月11日 21:58
二右衛門半しゃん

おお、たしかにレバーにはついておったな!
Posted by pelikan_1931 at 2007年06月01日 03:14
すいません、訂正です。

正確には、レバー式のレバーやクリップに地球マークがあります。
胴軸にあるものもありますが、タマ数は少ないと思います。
Posted by 二右衛門半 at 2007年06月01日 00:31
Kugel_149 さん、さりげなく誤りを正して頂き、まことにありがとうございます。パーカーの「パー」は「派」が正しい字と思います。手書き風の文字ゆえに、見間違えました。
Posted by monolith6 at 2007年05月31日 01:51
二右衛門半しゃん

VintageのWatermanには胴体に刻印があったんですな。
それをペン先に移したのがル・マン100の後期モデルというわけですか。
ありがとしゃん。
Posted by pelikan_1931 at 2007年05月31日 01:33
kugel_149しゃん

“オゥルラ”ですか・・・アウロラと呼んだり、オーロラと呼んだりするのは日中共通かもしれませんな。

それにしても完璧な表音文字!
Posted by pelikan_1931 at 2007年05月31日 01:31
京都和文化研究所しゃん

当時のデュポンの漆塗りは、彼らは【チャイニーズ・ラック】と読んでいた。ラッカーといえば、ジャパニーズ・ラックを意味する時代で、あえてチャイニーズ・・・としたのは、エキゾチックさを強調したかったのかもしrませんな。
Posted by pelikan_1931 at 2007年05月31日 01:27
ペン先じゃなく胴軸の刻印からではないかと・・。
ビンテージの解説本でしたので。
Posted by 二右衛門半 at 2007年05月31日 00:23
師匠
 「欧若拉」を調べてみました。
 呉音で、「欧」は<ou>、「若」は<ruo>、「拉」は<la>となってます。
 正確に綴るのは難しいのですが、あえて記すと“オゥルラ”のような感じで発音するのではないでしょうか。
Posted by kugel_149 at 2007年05月30日 23:19
5
参考になりました。
でもどうして 中国語?
(グローバルに考えると やっぱり中国か ふ〜。)
でも <<拙者は、何でも言うことを聞く家畜なのかもしれない。
この吉祥天結の 結は いい。 お釈迦さまの手の内が ひしひしと伝わります。  
Posted by 京都和文化研究所 at 2007年05月30日 21:19
二右衛門半しゃん

ウォーターマンは地球牌・・・

ペン先の地球のマークと関係あるのかな?
Posted by pelikan_1931 at 2007年05月30日 19:58
kugel_149しゃん

アウロラ:欧若拉

やはり正しくはオーロラと発音するのでしょうな。
Posted by pelikan_1931 at 2007年05月30日 19:57
ウォーターマンは地球牌とやる場合もありますね。
蒂芙尼:ティファニー
登喜路:ダンヒル
并木厂(并木だけでいい?):ナミキ
百利勤でペリカンとあるのも見かけます。
Posted by 二右衛門半 at 2007年05月30日 08:08
あぁ、やっぱり、モンブランの3文字目が表示されなかったなぁ。
参考までに、次のアドレスを…
http://www.penshop.com.cn/class.asp?lx=big&anid=49
Posted by kugel_149 at 2007年05月30日 07:16
ちなみに…
 パーカー:派克
 ペリカン:百利金
 モンブラン:万宝龙
 ウォーターマン:威迪文
 アウロラ:欧若拉
 
となります。
Posted by kugel_149 at 2007年05月30日 07:13
monolith6しゃん

おお、あれもブランド名でしたか! 一本持っていたような気がするので今度確かめてみます。ありがとしゃん。
Posted by pelikan_1931 at 2007年05月30日 04:30
二右衛門半しゃん

そうか、あの中国本にはそういう楽しみ方があったな。
無視していたが、急に欲しくなった・・・
Posted by pelikan_1931 at 2007年05月30日 04:24
らすとるむ しゃん

チャイニーズラッカーであることを示しているんじゃろうな。
そrにしても、それほど綺麗な字ではなく、まるで西洋人がまねして書いた漢字のようじゃな。
Posted by pelikan_1931 at 2007年05月30日 04:19
 パーカー75のラック・シリーズの初期のものには、キャップのクリップとは反対側下部に、「○(○はさんずいに辰)克」という二文字が入っていますが、これもデュポンと同様に、パーカーと読むんです。マンダリンなのか、広東語なのか、福建語なのかは不明ですが...
Posted by monolith6 at 2007年05月30日 02:15
中国の万年筆本でブランド名の中にこれがありましたがまったく見当がつきませんでした・・・。
勉強になります。
Posted by 二右衛門半 at 2007年05月30日 01:04
たしか・・・ライターでもこの「都彭」という文字を見たことがあります。
持ち主の名前か漆職人の銘だとばかり思っていました。
Dupontの漢字名だったとは・・・勉強になりました。
Posted by らすとるむ at 2007年05月29日 21:31