昨日、Bliss【ブリス】について説明したら、曇ると小汚くなってしまう万年筆が気にかかってしまい急遽確認してみた。その中で最も酷い状態だったのが、今回のParker 75 マシーフじゃ。これについては2006年7月25日のカタログの中で紹介されている。価格表ではマシーフシルバーではなくバーメイルの方。純銀軸にライン模様を入れ、バーメイルの部分と純銀の部分を互い違いにして、ストライプ模様を演出している。非常に凝った装飾じゃ。
カタログでは45,000円となっているが、拙者は80,000円で入手した。1980年代の終わりなので、プレミアムが付いていたのであろう。
キャップには【ARGENT MASSIF】と刻印されている。これは仏蘭西語であり、英語に訳せば【Solid Silver】。単に純銀という刻印に過ぎないのだが、これが日本での商品名になったらしい。
米国では模様の名前で呼ばれていたようじゃ。バイブルの207頁に出ている。【Florence Vermeil】と呼ぶのかな?バイブルのモデルにはキャップトップのオニキスがついていないがな・・・・
上の画像の横には鼻くそみたいな刻印が2個並んでいる。2個も打つ必要があるのかな?それとも2個つながったように見える一個の刻印なのかな?
それにしても細分拘った萬年筆じゃ。全体を眺めると印象の薄い、小汚い?イメージの万年筆でしかなかった。
【銀のお風呂】に入浴させ、綿棒でゴシゴシ擦って磨き上げてもぼんやりとした印象しかない。
ところが細部をルーペで拡大してみると、その繊細な細工に驚嘆することになる。
線の一本一本にまったく破綻が無い。この加工技術は万年筆屋のそれではない。宝石屋の技術に間違いない。どこかの宝石商とのコラボの結果生まれたものと考えて間違いあるまい。
その後継続して作られなかったことから考えて、量産に適した万年筆ではなかったのであろう。
こちらは、胴軸と首軸の境界部分。この模様のエッジの立ち方から考えて機械彫りと考えられる。人手ではここまで安定したラインは到底引けない。
当時はコンピュータ制御の工作機械なんて無かったはずなので、どうやって彫ったのじゃろう?
実はルーペで見てもここまでの美しさは感じられなかった。スキャナーで拡大してみて初めて体験することが出来た。
こちらがペン先。当時日本に入ってきていたニブの殆どがXFと言われている。ご多分に漏れずこいつについているのもXF。XFとはExtra Fineから取ったようじゃ。米国ではSheafferもEFと呼ばず、XFという表記を使っていたが理由があるのかな?
よく見るとスロープのカーブが途中で盛り上がってからスコンとペンポイントまで急に狭まっているようにも見える。こういう曲線は手溶接のによくある形状。確認してみたいものじゃ。
一番左がこのマシーフのペン先。右二個はパーカー 75の別のモデルやプリミア用のペン先。それぞれ刻印の位置が違っているのも面白い。
マシーフのペン先には左に【750M】という刻印が入っている。このMというのは何の意味じゃろう?
ちなみに真ん中のペン先にはMのマークはあるがアンダーバーが無い。一番右のモデルには750の刻印でMもMも無い。
まさに【神は細部に宿る】じゃ!