2007年10月17日

水曜日の調整報告 【 Osmia 64 → Matador Click ペン先移植 】

2007-10-17 01 今回の依頼品はOsmia 64の珍しい模様の軸。ペン先にはOsmiaとしか刻印がないが、聖書によれば1938年ごろのOsmia/Faber-Castellのモデルと似ている。拙者も大好きで同じ物を過去に購入したことがある。

 依頼内容は、ピストンが固くて動かないので直して欲しいというもの。確かに硬い・・・毎日ピストンを捻っていたら、半年で腕回りがボート選手のように太くなりそう!

 これでは萬年筆ではなく、筋トレマシン・・・

 分解してみたのが左上の画像。既にコルクは外してある。残念ながら大きさの合うコルクはなく、そもそもコルクを挟むネジも回らない。これでは修理は出来ない。

2007-10-17 02 ただし、Osmiaのペン先は非常に出来がよいのでこれを生かし、軸を新に用意することにした。

 Osmiaからペン先移植するとすれば、同じ時代の独逸マイナーブランドしかあるまいということで選んだのが・・・

2007-10-17 03 このブルーのデモンストレーター軸。見る人が見れば一目でわかるが、MatadorClickじゃ。

 【ピキッ】という音を立ててキャップが締まる・・・いわゆる嵌合式の特許を取得したとされる【Matador Click】にペン先を移植する。

 【Matador Click】にはスチール製のニブがついていたので、これをOsmia14金ペン先にグレードアップするのじゃ。

2007-10-17 04 それにしても美しい軸。まるでPelikan イカロスのような透き通ったブルー。

 拙者はもったいなくてインクを入れられなかったが、依頼者はデモンストレーターに威嚇されない男なので大丈夫じゃ。

2007-10-17 05 これが移植後の全体像。オリジナルのペン先よりも一回り大きいはずなのだがまったく違和感なく収まっている。このあたりがメーカーは違っても、生まれと時代が近しいメーカーの萬年筆じゃ・・・・なんてのは大嘘で、時代はかなり違う。Clickは1949年以降の発売なので戦前/戦後という大きな差がある。

2007-10-17 06 ペン先の拡大図を見ると、オブリークではないのに、ペンポイントは左側の方が長い。こういうおおざっぱさが実に良い。作りは独逸職人ぽいが、仕上げはイタリア的。

 仕組みは緻密だが、仕上げはおおらか・・・ 当時の日本製品は仕組みも仕上げもおおらかだったので批判は全く出来ない・・・・

 拙者は仕組みはおおらかで、仕上げが緻密なのが好きじゃな。仕組みが緻密なのは故障したときに直すのが困難。Montblancのテレスコープ吸入機構のごとし・・・

2007-10-17 07 ペン芯はOsmiaの物ではなく、Matadorの物をつかった。ソケットがねじ込み式なので、ペン先とペン芯の相性よりも、ペン芯とソケットとの相性を重視した。

 さて、結果は・・・?

 Mattadorの美しい軸に、Osmiaの実に繊細な柔らかさのペン先が装着された。これは偶然が作り出した奇跡かもしれない・・・

 依頼者はどんなインクを入れて使っているのかな? まさか当時の軸が簡単に冒されてしまう、Vintageのターコイズブルーなんて使ってないよなぁ・・・


今回執筆時間:5時間 】 画像準備1.5h 調整2.5h 執筆1h
画像準備
とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
               向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間
 


【これまでの調整記事】

2007-10-15   Matador 996 ピストン修理に松脂利用実験
2007-10-13   Montblanc No.34 14C-M グレー軸   
2007-10-10   Pelikan 140 赤軸 & Gel Medium 
2007-10-08   Montblanc モンテローザ ピストン交換 
2007-10-06   Parker バキューマティック ペン先曲がり 
2007-10-03   Montblanc No.1466 14K-M いぶし銀
2007-10-01   Parker 75 赤ラッカー軸 14C-XF→F 交換 
2007-09-29   吸い込まれるような透明軸 Chronoswiss
2007-09-26   Montblanc 80年代 No.146 14K-EF 胴軸交換
2007-09-24   20年間酷使した Pelikan M800の復活 
2007-09-22   女王からの依頼 : ペン先の無いセルロイド軸 
2007-09-19   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF キャップ交換

2007-09-17   万年筆博士 水牛軸 14K-HM 曲げ戻し 
2007-09-15   Senator President 14C-B 交換後 

2007-09-12   Montblanc 50年代No.146 14C-M Thin 
2007-09-10   Pelikan ナイアガラ 18C-B 交換後  
2007-09-08   Montblanc 50年代No.146 14C-M Thick
2007-09-05   Montblanc 50年代No.144 14C-B 
2007-09-03   Montblanc 80年代No.146 14K-EF ペン先曲がり 
2007-09-01   Montblanc No.342 14C-KM 

2007-08-29   Montblanc No.23246 ヘマタイト 18K-F 
2007-08-27   DELTA 20周年記念 18K-F
2007-08-25   Montblanc No.342 + No.252 そしてペン先曲がり
2007-08-22   Pelikan M1000 2.2B for 書家 
2007-08-20   Montblanc 60年代No.149 18C-M 尻軸不良
2007-08-18   Sheaffer Snorkel 金張 14K-EF
2007-08-15   Montblanc 60年代No.149 18C-OB  ハプニング! 
2007-08-13   Montblanc 70年代No.149 14C-EF → B
2007-08-11   Montblanc 70年代No.146 14C-EF from 岡山
2007-08-08   Montblanc 80年代No.146 14K-OB お好きに!
2007-08-06   Montblanc 50年代No.144-G 14C-EF
2007-08-04   Montblanc 50年代No.146 14C-M

2007-07-28   Platinum #3776 金魚 14K-太 
2007-07-25   Montblanc 70年代 No.146 18C-EF ペン先交換
2007-07-23   Pelikan 100 14C-F 2本から一本を作る! 
2007-07-20   Pelikan M800用 14C O3B → 3B  & 鍍金
2007-07-18   Pelikan #520NN 14C-M
2007-07-16   コルクが劣化したMontblanc 50年代No.144 14C-M
2007-07-13   ペン先のひん曲がったPelikan M700 トレド 18C-BB
2007-07-11   ペン芯の折れたMontblanc 80年代 No.146 14C-EF
2007-07-09   Montblanc No.74 14C-F
2007-07-06   Pelikan 400 緑縞 14K-M
2007-07-04   Pelikan #500 茶縞 14C-BB 
2007-07-01   Pelikan 400 茶縞 14K-EF
2007-06-29   Pilot Capless Ice Blue 18K-B 
2007-06-27   Pelikan 1935 Blue 18K-B
2007-06-25   Montblanc No.742 14C-M
2007-06-22   Montblanc 60年代 No.149 18C-F
2007-06-20   Pelikan 500N 茶縞 14C-EF
2007-06-18   Pelikan 400NN 茶縞 14C-OF  
2007-06-15   Pelikan 400 茶縞 14C-HBB
2007-06-13   Pelikan #350 マーブルブルー 12C-HF
2007-06-11   Montblanc 50年代 No.142 14C-F
2007-06-08   シェーファー コノソアール 赤軸 18K-F
2007-06-06   OMAS 360 Demonstrator 18K-B
2007-06-04   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF 
2007-06-01   シェーファー ニュー・コノソアール 18K-B

Posted by pelikan_1931 at 06:00│Comments(4) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
当代のフランケンシュタイン伯爵?
Posted by pelikan_1931 at 2007年10月17日 22:25
ペントレに出されていた軸ですよね?
やはり、美しい。ゲットすべきだったなぁ。
この軸の良さは、握ってみるともっとよく分かると思います。実に握りやすく、バランスも良い。
Osmiaのニブとの相性もいいですね。
Posted by めだか at 2007年10月17日 09:41
偶然が作り出した奇跡。。。師匠は当代一流の名化学者ですね。
Posted by venezia 2007 at 2007年10月17日 08:26
うう・・実に美しい。。

実物が見てみたい!
Posted by 二右衛門半 at 2007年10月17日 07:41