2008年03月03日

月曜日の調整報告 【 Montblanc No.342 14C-F 満身創痍 】

2008-03-03 01 これは生贄!物はMontblanc No.342 14C-Fだが満身創痍で直る保証はない。Vintage品は外観からでは、その危なさはわからない。従ってオークションでGetするなら、それなりの修理の技を身につけるか、修理の上手い友人なり、店なりを見つけておくことが重要。でないと、歯ぎしりしながらゴミ箱に捨てる事になるかもしれない・・・

2008-03-03 02 症状はインクがピストンの後から漏れるということ。ペン先を拡大してみると、曲がっているような気がする。目の錯覚かな?

 いずれにせよスリットはピッタリと詰まっているので、満足なインクフローは期待出来ない・・・

2008-03-03 03 ペン先を横から見ると、変なお辞儀のしかたをしている。インクフローが悪いので、ペン先とペン芯をくっつけようとして【やっちまった・・・】と思われる。ペン先をひっくり返して、ペン先先端部分ををグイと押さえたとしか考えられない。

 しかも力のかけ方が均一にならず、左右の曲がり方に差が出てしまった・・・

2008-03-03 04 それがこちらの拡大画像を見ればよくわかる。奥のペンポイント(上から見て左側)の方が、お辞儀が大きくなっている。

 コレでは書き出しで、ペンを右に大きく傾ける人でないとインクが紙につかない!それにしてもこのような大きな段差は珍しい。

2008-03-03 05 前から見た画像では、ペンポイントの半分くらいズレている。いくら柔らかいニブでもこれでは満足な筆記は出来ない。

 ペン芯の上で、左右がアンバランスにずれているわけではない。片方がお辞儀しすぎているのが原因。こりゃ、相当強く曲げてあるなぁ・・・

2008-03-03 06 こちらがペン先の裏表じゃ。汚れはすぐに落ちそうだが、真上から見て左方向に曲がっている。しかも綺麗なカーブを描いて曲がっている・・・落下や衝突では無さそう・・・

 やはり意識して力ずくで曲げたのであろうな・・・

2008-03-03 072008-03-03 08 こちらはピストン部分の拡大画像。弁の表面がギザギザで隙間が出来ている。これは・・・寿命じゃな。

 回転吸入式の萬年筆では、ペンポイントが摩耗する前に、ピストン弁が摩耗する・・・。特に常用するインクと相性が悪い樹脂の場合は劣化が激しい。また粒子の粗いインクの場合も弁の劣化は・・・

 今回は弁の表面を滑らかにすることによって、症状を改善することにした。それだけでも、かなりの延命にはなる。


2008-03-03 102008-03-03 11 ペン先を清掃した後、スキマゲージで曲がりを直し、スリット調整&段差調整したのが左画像じゃ。

 相当惨く曲がっていたが、とりあえずはここまで復帰できた。これで筆記には支障ないはず。

 今回の患者は、回転吸入式で最も重要な弁に難点があった。あとどれくらい使えるかは弁の寿命にかかっている・・・せつない話じゃ。

 なんとか各種の弁が自作出来れば、回転吸入式萬年筆の寿命は飛躍的に延びるであろう。現代の萬年筆の利用頻度から考えれば、素人調整で失敗しない限り、ペンポイントが摩耗するより、弁が摩耗するほうがはるかに速いからな・・・


【 今回執筆時間:8.0時間 】 画像準備2.0h 調整4.5h 執筆1.5h
画像準備
とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
               向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間 

 
 

【これまでの調整記事】

2008-03-01 Pelikan 140 緑縞 14C-M ペン芯調整:苦闘3時間 
2008-02-27 Montblanc No.142 14C-M 壮絶なる死闘
2008-02-25 Pelikan 1931 ホワイトゴールド スイートスポット 2点 
2008-02-23 '80年代後半 Montblanc 14K-M 再鍍金    
2008-02-20 Pelikan 100N 14C-KF あやしいペンポイント 
2008-02-18 プラチナ Sterling Silver 地獄からの復活 
2008-02-16 Montblanc N0.142 14C-O はたして直るか?  
2008-02-13 Pelilam M250 バーガンディー 切り割りからドクドク  
2008-02-11 Montblanc No.149 14C-M 掠れる・・・実は大変 
2008-02-09 Pelikan M320 オレンジ 14C-M 呼吸困難 
2008-02-06 Montblanc No.144G 14C-M ペンポイント凸凹
2008-02-04 Pelikan 140 14C-M ペン先交換 → BB 
2008-02-02 Montblanc No.149 合体して開高健 
2008-01-30 Sheaffer 1000 黒縞 吸入機構完全取替 
2008-01-28 Montblanc 50年代 No.144 14C-F どん底
2008-01-26 Pelikan M320 緑 14C-M 背開き 
2008-01-23 Montblanc No.242 なんとか一人前に・・・ 
2008-01-21 Montblanc モーツァルト生誕250周年 時々切れる・・・
2008-01-19 Montblanc No.146 14K-BB 不思議とひっかかる 
2008-01-16 Montblanc チャールズ・ディケンズ 18K-M の呼吸困難
2008-01-14 Montblanc No.342緑 14C-B改造がひっかかる 
2008-01-12 Sheaffer Crest 14K-F 赤インクが接着剤    
2008-01-09 Omas Gentleman 14K-F キャップが・・・
2008-01-07 Shesffer Snorke 14K-F 吸入機構動かず 
2008-01-05 Montblanc No.149 14C-B 書き味に品がない! 
2008-01-02 丸善 ATHENA 萬年筆 14K-F 復活!
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2007-12-29 Montblanc No.342 14C-M ペン芯を太らせる 
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2007-12-15   Nagasawa 125周年記念 14K-MF カリカリ直して!  
2007-12-12   Montblanc '80年代 No.146 14K-F ペン先ズレ
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2007-12-01   Montblanc '50年代 No.146 14C-M 死地からの復帰
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2007-11-05   Montblanc No.146 18C-F 書き味品位向上
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2007-10-29   Pelikan 400NN 緑縞 14C-M ピストン/フロー改善
2007-10-24   Stipula ピノキオ 青軸 14K-M 字幅改善
2007-10-22   Montblanc No.252 14C-F フロー改善
2007-10-20   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF ヌラヌラ化
2007-10-17   Osmia 64 → Matador Click ペン先移植
2007-10-15   Matador 996 ピストン修理に松脂利用実験
2007-10-13   Montblanc No.34 14C-M グレー軸   
2007-10-10   Pelikan 140 赤軸 & Gel Medium 
2007-10-08   Montblanc モンテローザ ピストン交換 
2007-10-06   Parker バキューマティック ペン先曲がり 
2007-10-03   Montblanc No.1466 14K-M いぶし銀
2007-10-01   Parker 75 赤ラッカー軸 14C-XF→F 交換 


Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(1) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
 ピストン弁の平滑化(研磨?)には、何を使うのがよいでしょうか?パイロット65周年と同じ嵌め殺しの吸入機構が付いたカスタムを持っているのですが、ピストン裏にインクが回っていて、分解してみたらこのNO.342と同じ症状でした。
Posted by しまみゅーら at 2008年03月05日 10:13