2008年03月10日

月曜日の調整報告 【 Montblanc No.32 14C-B インクが出ない・・・ 】

2008-03-10 01 今回の依頼品はMontblanc No.32。拙者は1960年代のMontblanc 二桁番の修理は得意ではない。ペン先にある金属の出っぱりが指にあたって痛いから・・・従って、よほど興味のあるモデル以外の修理はお断りしている。軸内部の吸入機構も弱く、すぐに吸入機構が死ぬ場合もある。書き味は良いが、素材的には感心できるモデルではない。

2008-03-10 02 ただし、このNo.32に関しては、ペン先内部の金属のデッパリが無いので、安心して修理できる。

 ペン先が小さいので【学童用安価モデル】と言われているが、通常の二桁番のウィングニブとは違った書き味が楽しめる。

 拙者が唯一好きな1960年代モデル。この時代はNo.149であっても、軸が割れやすいのでお奨めは出来ないのじゃ。

2008-03-10 03 症状はペン先を裏返して、ペン芯に押しつけないとインクが出てこないこと。

 こういう場合にすぐに思いつくのは、ペン先とペン芯が離れていること。ところが図のようにまったく問題はない。こうなってくると、次はエボ焼けの状況の調査に入ることになる。

2008-03-10 042008-03-10 05 ところがこちらも左画像のように、表・裏とも特に酷いエボ焼けがあるわけではない。

 そうすると次は書き出しの筆記角度と、インクを疑う事になる。

 この依頼者はMontblancブルーブラックが大好きで、数多くの萬年筆に入れている。ところが、このインクはインクフローの変化が激しい。

 紙によっては必ず書き出しで掠れる事もある。ロイヤルブルーならまったく掠れないのに、インクをブルーブラックにしたとたん、掠れたりする。ところが、その掠れるインクで相馬屋の原稿用紙に書くと、まったく掠れない!

 ようするに、紙とインクとの相性というのは大きい!ということじゃな。好きな色なのに、インクフローが悪い場合、紙を変えるだけで潤沢なインクフローが楽しめる可能性もある・・・かも?

2008-03-10 06  とりあえず、スリットは多少拡げておいた。また筆記角度に自由度が出るように、書き出しで紙にあたるポイントを若干粗めに研磨しておいた。

 これによって書き出し時にインクが表面に残っている確率が大きくなり、書き出し掠れがガクンと減るはずじゃ。

 それにしても、ほれぼれするほど美しいペン先!企業ロゴなどは奥に隠されており、【585】と金の含有率だけが表示されている。

2008-03-10 072008-03-10 08スリットを多少拡げたことによって、エッジが引っ掛かる角度も出てきたので、慎重にエッジ処理を行った。

 今回より、耐水パーパーラッピングフィルムに続く、第三の研磨素材を実験してみた。今までの研磨素材は削ることに重点が置かれていたが、今回より試行を始めた物は、表面はラッピングフィルムよりは粗いが、8の字旋回を50回やって、初めて多少削れる程度。すなわち、ほとんど削れない事が自慢の研磨素材なのじゃ。

 本当に大丈夫との確信が持てたら、このBlogで紹介しよう!しばし待たれよ!


【 今回執筆時間:3.5時間 】 画像準備1.0h 調整1.5h 執筆1.0h
画像準備
とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
               向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間

  


【これまでの調整記事】

2008-03-08 Montblanc No.256 18C-EF 仏蘭西 珍品!   
2008-03-05 Montblanc No.149 75周年記念 18K-EF 
2008-03-03 Montblanc No.342 14C-F 満身創痍 
2008-03-01 Pelikan 140 緑縞 14C-M ペン芯調整:苦闘3時間 
2008-02-27 Montblanc No.142 14C-M 壮絶なる死闘
2008-02-25 Pelikan 1931 ホワイトゴールド スイートスポット 2点 
2008-02-23 '80年代後半 Montblanc 14K-M 再鍍金    
2008-02-20 Pelikan 100N 14C-KF あやしいペンポイント 
2008-02-18 プラチナ Sterling Silver 地獄からの復活 
2008-02-16 Montblanc N0.142 14C-O はたして直るか?  
2008-02-13 Pelilam M250 バーガンディー 切り割りからドクドク  
2008-02-11 Montblanc No.149 14C-M 掠れる・・・実は大変 
2008-02-09 Pelikan M320 オレンジ 14C-M 呼吸困難 
2008-02-06 Montblanc No.144G 14C-M ペンポイント凸凹
2008-02-04 Pelikan 140 14C-M ペン先交換 → BB 
2008-02-02 Montblanc No.149 合体して開高健 
2008-01-30 Sheaffer 1000 黒縞 吸入機構完全取替 
2008-01-28 Montblanc 50年代 No.144 14C-F どん底
2008-01-26 Pelikan M320 緑 14C-M 背開き 
2008-01-23 Montblanc No.242 なんとか一人前に・・・ 
2008-01-21 Montblanc モーツァルト生誕250周年 時々切れる・・・
2008-01-19 Montblanc No.146 14K-BB 不思議とひっかかる 
2008-01-16 Montblanc チャールズ・ディケンズ 18K-M の呼吸困難
2008-01-14 Montblanc No.342緑 14C-B改造がひっかかる 
2008-01-12 Sheaffer Crest 14K-F 赤インクが接着剤    
2008-01-09 Omas Gentleman 14K-F キャップが・・・
2008-01-07 Shesffer Snorke 14K-F 吸入機構動かず 
2008-01-05 Montblanc No.149 14C-B 書き味に品がない! 
2008-01-02 丸善 ATHENA 萬年筆 14K-F 復活!
2007-12-31 Montblanc No.1464 18K-M ペン先から落下!

2007-12-29 Montblanc No.342 14C-M ペン芯を太らせる 
2007-12-26 Pelikan 500NN 暗緑縞 14C-EF ペン先グラグラ!
2007-12-24 Montblanc Monte Rosa 14C-M ペン芯めくれ!   
2007-12-22 Montblanc '50年代 No.144G 14K-M ボロボロ 
2007-12-19   Montblanc No.146 14K-F 細字スタブに・・・ 
2007-12-15   Nagasawa 125周年記念 14K-MF カリカリ直して!  
2007-12-12   Montblanc '80年代 No.146 14K-F ペン先ズレ
2007-12-10   Sheaffer Imperial Silver 14K-F ペン先曲がり
2007-12-05   Montblanc '70年代 No.149 14C-M がさつな書き味
2007-12-03   Montblanc L139G 14C-KM 健康診断
2007-12-01   Montblanc '50年代 No.146 14C-M 死地からの復帰
2007-11-28   Montblanc No.142 14C-F 相対評価の果てに・・・
2007-11-26   Montblanc No.147 14K-OM 羊の皮をかぶった山羊
2007-11-24   WAGNER 2007 18C-B 王子からの依頼
2007-11-21   Montblanc No.254 14C-EF ペン先曲がりと・・・
2007-11-19   Parker 75 14K-63 女王様の憂鬱
2007-11-17   Montblanc No.146 14C-OBB 筆記角度30度の世界
2007-11-14   Aurora エウロパ 18K-F 持久力向上 
2007-11-12   Montblanc No.342 G 14C-KF インクが出ない! 
2007-11-10   Pelikan 400NN 緑縞 14C-OM カモノハシ化 
2007-11-07   Stipula ピノキオ 赤軸 18K-M インク切れ解消
2007-11-05   Montblanc No.146 18C-F 書き味品位向上
2007-10-31   Waterman セレニテ 18C-M ペン先曲がり
   
2007-10-29   Pelikan 400NN 緑縞 14C-M ピストン/フロー改善
2007-10-24   Stipula ピノキオ 青軸 14K-M 字幅改善
2007-10-22   Montblanc No.252 14C-F フロー改善
2007-10-20   Montblanc 50年代 No.146 14C-KF ヌラヌラ化
2007-10-17   Osmia 64 → Matador Click ペン先移植
2007-10-15   Matador 996 ピストン修理に松脂利用実験
2007-10-13   Montblanc No.34 14C-M グレー軸   
2007-10-10   Pelikan 140 赤軸 & Gel Medium 
2007-10-08   Montblanc モンテローザ ピストン交換 
2007-10-06   Parker バキューマティック ペン先曲がり 
2007-10-03   Montblanc No.1466 14K-M いぶし銀
2007-10-01   Parker 75 赤ラッカー軸 14C-XF→F 交換 


Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(3) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
5
何と新素材使用第1号でしたか!
それはありがたいことです。

現在手紙書きで使用してますが、スタブで書くと独特の文字になりますね。
これ良いものです、確かに。

インクに関しては、モンブランのBBが良い色だと個人的には思うのですけどねえ。
いたしかたないですね。

で、ライフのヴィンセントノートでは問題なくなりましたが、今度は同じライフの便せんでウォーターマンが弾かれる事が出てきました。

インクと紙の相性は奥が深いです〜((+_+))
Posted by 榊 主水 at 2008年03月11日 22:33
monolith6しゃん

ニブの裏側の平面はメーカーがニブの厚さを揃えるために削ったものです。

スイートスポットは肉眼では、まずわからないように仕込みますので・・・
Posted by pelikan_1931 at 2008年03月11日 21:52
 ブルー・ブラックのインクは非常にトリッキーなインクであると思います。ご指摘のとおり、基本的に全ての万年筆との関係でフローが渋くなりがちであり、紙の質によって、大きくフローが変化します。吸入したては抜群のフローであるかも知れませんが1日、2日と経つうちに徐々にフローが悪くなる...使用者泣かせのインクであることは間違いありません。

 私個人の経験ですがペリカンのBBインクは純正組み合わせでは余り感心しないフローである場合が多いのですが、パイロットのチップフィル・ペン芯のモデルに吸入したところ、驚異的なフローの良さでした。でも、その感激もせいぜい2日で終わり。それ以降はごく普通のフローになってガッカリ。

 ところでスキャナのせいかもしれませんが、ニブの裏側の画像では、スィート・スポットらしき丸いものが紙に当たる部分よりも大分後ろ側になっていますね。
Posted by monolith6 at 2008年03月11日 17:51