2008年03月17日

月曜日の調整報告 【 Parker 75 18K-M 自然コンコルド 魑魅魍魎 】

2008-03-17 01 今回の品は【魑魅魍魎:ちみもうりょう】じゃ。いろんな時代のパーツを組み合わせて作り上げた一本で。

 拙者はこういうの嫌いではない。むしろ、こういうものにこそ惹かれる。自分で使っている萬年筆には、この手のアセンブル物がけっこう多い。部品はなかなか捨てられないので、修復できる可能性があれば、なんとか一本の万年筆に仕立てあげる。そうすると愛着がわいて、そればかり使ってしまう・・・

2008-03-17 02 胴体の端はフラットなのに、キャップはディンプル。しかも社用バッジを取り付けられそうな形状をしている。以前にもどこかで紹介した。

 それにしても、胴軸とキャップの端がそろっていないのは初めて見た・・・こういうのが市場に流れると歴史が歪められる可能性がある。軸が滅びるまで個人で使って欲しいものじゃな。

2008-03-17 03 首軸先端は金一色。はて、Parker 75にこういう首軸の時代があったかな?

 プリミアには存在したのは覚えているが、Parker 75では?

2008-03-17 04 ペン先は、この方向から見ればスリットが詰まっている事以外には問題がないように見えるが・・・ ありゃりゃ!ペン先は18金製じゃ。

 これで首軸毎、プリミアから移植した物だとの確信が得られた。


2008-03-17 05 ペン先は、このようにくの字に曲がっている。絨毯の上に落としたということが、それだけではこんなに曲がらない。

 おそらくは、急いで拾い上げようとして、椅子のキャスターで碾いたのであろう。

 それにしても見事なまでの【コンコルド】状態。このままでもスリットを拡げれば書けるのだが、あまりに見映えが悪いので、通常ニブに交換した上で、このペン先も可能な限り調整してみることにした。

2008-03-17 06 右端が調整前の【コンコルド】君。左端が交換予定のペン先じゃ。【コンコルド】状にするとインクフローは絞られる。従ってもう一個のペン先は少しでもインクフローが良い物の方が、違いがはっきりとわかっておもしろかろうと考えた。

 いずれにせよ、二個ともインクフローの改善は必要。特に左端の物は、ペン先のスリットが詰まりすぎている。そこでスリットをごくわずかに開けてインクの初動を軽くした。

2008-03-17 072008-03-17 08 こちらが調整後の【新ペン先】。それほど大きなペンポイントではないが、筆記角度に合わせて、出来るだけ接紙面積を広くするように調整した。

 パーカー75は、基本的には筆圧をかけてインクを押し出す設計になっているので、書き出しに筆圧ゼロでもインクが紙につく・・・というような調整は邪道!

 しかし今回は、そもそもが部品を集めて作った一本!なので良しとしよう。

2008-03-17 092008-03-17 102008-03-17 11 こちらは、曲がったペン先のスリットを拡げ、紙に当たる部分にスイートスポットもどきを作ったもの。

 一番難しいのはスリットを拡げること。ペン先をペン芯ユニットから外せば簡単なのだが、そうするとニブやペン芯に細かな傷がつく可能性が高い。細部にこだわる拙者にはそれが不憫に感じてな・・・

 やむなくペン芯を外さないままでスリットを拡げた!そして紙に当たる部分(ほとんどペンポイントの頂点)の引っ掛かりがないように調整した。

 どちらも、なかなかの書き味になった。さて、依頼者はどちらを使っているのであろうか?


【 今回執筆時間:6.5時間 】 画像準備2.0h 調整3.0h 執筆1.5h
画像準備
とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
               向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間
  
     


【これまでの調整記事】

2008-03-15 Pilot New エラボー 14K-SF スイートスポット形成
2008-03-12 Parker Duofold センテニアル 18K-F 生贄
2008-03-10 Montblanc No.32 14C-B インクが出ない・・・ 
2008-03-08 Montblanc No.256 18C-EF 仏蘭西 珍品!   
2008-03-05 Montblanc No.149 75周年記念 18K-EF 
2008-03-03 Montblanc No.342 14C-F 満身創痍 
2008-03-01 Pelikan 140 緑縞 14C-M ペン芯調整:苦闘3時間 
2008-02-27 Montblanc No.142 14C-M 壮絶なる死闘
2008-02-25 Pelikan 1931 ホワイトゴールド スイートスポット 2点 
2008-02-23 '80年代後半 Montblanc 14K-M 再鍍金    
2008-02-20 Pelikan 100N 14C-KF あやしいペンポイント 
2008-02-18 プラチナ Sterling Silver 地獄からの復活 
2008-02-16 Montblanc N0.142 14C-O はたして直るか?  
2008-02-13 Pelilam M250 バーガンディー 切り割りからドクドク  
2008-02-11 Montblanc No.149 14C-M 掠れる・・・実は大変 
2008-02-09 Pelikan M320 オレンジ 14C-M 呼吸困難 
2008-02-06 Montblanc No.144G 14C-M ペンポイント凸凹
2008-02-04 Pelikan 140 14C-M ペン先交換 → BB 
2008-02-02 Montblanc No.149 合体して開高健 
2008-01-30 Sheaffer 1000 黒縞 吸入機構完全取替 
2008-01-28 Montblanc 50年代 No.144 14C-F どん底
2008-01-26 Pelikan M320 緑 14C-M 背開き 
2008-01-23 Montblanc No.242 なんとか一人前に・・・ 
2008-01-21 Montblanc モーツァルト生誕250周年 時々切れる・・・
2008-01-19 Montblanc No.146 14K-BB 不思議とひっかかる 
2008-01-16 Montblanc チャールズ・ディケンズ 18K-M の呼吸困難
2008-01-14 Montblanc No.342緑 14C-B改造がひっかかる 
2008-01-12 Sheaffer Crest 14K-F 赤インクが接着剤    
2008-01-09 Omas Gentleman 14K-F キャップが・・・
2008-01-07 Shesffer Snorke 14K-F 吸入機構動かず 
2008-01-05 Montblanc No.149 14C-B 書き味に品がない! 
2008-01-02 丸善 ATHENA 萬年筆 14K-F 復活!
2007-12-31 Montblanc No.1464 18K-M ペン先から落下!

2007-12-29 Montblanc No.342 14C-M ペン芯を太らせる 
2007-12-26 Pelikan 500NN 暗緑縞 14C-EF ペン先グラグラ!
2007-12-24 Montblanc Monte Rosa 14C-M ペン芯めくれ!   
2007-12-22 Montblanc '50年代 No.144G 14K-M ボロボロ 
2007-12-19   Montblanc No.146 14K-F 細字スタブに・・・ 
2007-12-15   Nagasawa 125周年記念 14K-MF カリカリ直して!  
2007-12-12   Montblanc '80年代 No.146 14K-F ペン先ズレ
2007-12-10   Sheaffer Imperial Silver 14K-F ペン先曲がり
2007-12-05   Montblanc '70年代 No.149 14C-M がさつな書き味
2007-12-03   Montblanc L139G 14C-KM 健康診断
2007-12-01   Montblanc '50年代 No.146 14C-M 死地からの復帰
2007-11-28   Montblanc No.142 14C-F 相対評価の果てに・・・
2007-11-26   Montblanc No.147 14K-OM 羊の皮をかぶった山羊
2007-11-24   WAGNER 2007 18C-B 王子からの依頼
2007-11-21   Montblanc No.254 14C-EF ペン先曲がりと・・・
2007-11-19   Parker 75 14K-63 女王様の憂鬱
2007-11-17   Montblanc No.146 14C-OBB 筆記角度30度の世界
2007-11-14   Aurora エウロパ 18K-F 持久力向上 
2007-11-12   Montblanc No.342 G 14C-KF インクが出ない! 
2007-11-10   Pelikan 400NN 緑縞 14C-OM カモノハシ化 
2007-11-07   Stipula ピノキオ 赤軸 18K-M インク切れ解消
2007-11-05   Montblanc No.146 18C-F 書き味品位向上

Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(3) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 万年筆 
この記事へのコメント
 「Parker75の胴軸とキャップの端(天冠:tassies)がそろっていないのは初めて見た・・・」
 この件に関して、一言。
 Parker75は製造期間が長く、この間にモデルのマイナーチェンジあります。変わってきてるのは、首軸のリング、ペン芯、キャップデザイン、天冠、コンバーターなどです。天冠の形状については、古い順から、フラット→皿状→ディンプルとなっています。私の80本ほどのParker75のうち20本ほどスターリングシルバーがあります。これらの天冠の形状の様子から時代順に並べて見ますと、天冠が切り替わるときのものに、キャップの天冠と胴軸天冠が異なるものがあります。これは、製造されたものを無駄なく製品にしているからであると推察できます。
 しかし、今回貴殿が調整されたのは、天冠が途中に変わっている段階を飛び越えております。その間は10年ほどとなります。従って製造段階でこうした商品が作られ、販売されたとは考えられません。異なった時代のキャップと胴軸をくつけたと考えるのが妥当ではないでしょうか。
 「Parker 75は首軸先端もさることながら、首軸自体が収縮するのも大問題」
 この点については、Parker75の縮は少ないですが、Parker45、Parker61等は大きいようです。特に金属キャップの場合、外から熱を受けると首軸の縮が起こりやすいです。陽の当たるところや、暖房器具の近くには置かないように心がけることも大事なようです。


Posted by Kajita Kenshow at 2009年04月20日 08:06
monolith6 しゃん

情報、あいがとしゃん!

Parker 75は首軸先端もさることながら、首軸自体が収縮するのも大問題!

拙者が保存しているParker 75は、今後いっさいインクを入れないつもり・・収縮sっひては次世代に伝えられないのでな・・・
Posted by pelikan_1931 at 2008年03月19日 07:39
>胴軸とキャップの端がそろっていないのは初めて見た・・・こういうのが市場に流れると歴史が歪められる可能性がある。軸が滅びるまで個人で使って欲しいものじゃな。

 残念ながら多数出回っております。ま、それで良いと思う人もまた多いということなのでしょう。私は嫌ですが。特に米国製キャップと仏国製胴軸では、黒ずみ方に差が出るんです。

>プリミアには存在したのは覚えているが、Parker 75では?

 75にもこの首軸が使われた時期がありました。85年頃から89年末までの間です。因みに、これは金色ですが、トリムが銀色のものには、首軸先端部のメッキがクロームであるものが使い分けられました。但し、両者とも酸に弱く、直ぐに朽ちてしまうので要注意です。
Posted by monolith6 at 2008年03月17日 18:56