2008年04月09日

水曜日の調整報告 【 Pelikan 100N 14K-O ペンポイントが・・・ 】

2008-04-09 01 ペリカンといえば緑縞が目に浮かぶが、実はPelikan 100には緑縞は無い。またこの100Nでも緑縞は1950年から1954年までの製造とされている。残念ながら拙者は100Nの緑縞を意識して見た事はない。本当に作られたのかな? もし持っている人がいたらぜひ見せて欲しい!

 この100Nは戦前の製品であろうが、拙者が最も好きなタイプじゃ。キャップバンドもクリップもストライプの装飾が施してある。拙者も最近同じタイプを入手したが、
軸色が変わっている。これは明日紹介しよう。ペントレの大目玉の一つじゃ。

2008-04-09 022008-04-09 03 このニブにはFとかMとかの太さを示す刻印はなく、【】のような文字が彫られている。ペンポイントの形状がオブリークなので、それを表しているのであろう。通常はOMとかOBとか彫るのだが、そういう分類が無かった時代・・・と考えたのだが、初代Pelikan Bookには、この模様のニブには単に【】だけの刻印は存在しないことになっている。不思議じゃ・・・

 ペン先は研がれているようだが、スリットがここまで詰まっているとインクが出ない。しかも依頼主は多少右傾斜で筆記することもある。そういう人が左傾斜のオブリークを使うと、書き出しで100%インクが紙につかないし、ものすごい引っ掛かり感がある。オブリークは左利きの人か、90度ペンを左に捻って書く時でないと絶頂感は味わえない。

 あるいは、普通の書き方でも書けるように研ぐか、通常のBの形状に直すかだが・・・・・

 今回はあまりに引っ掛かりが多いので、通常のBの形状に直した。【】のままで通常筆記出来るように研ぐには、ペンポイントの量が不足していたのじゃ・・・

2008-04-09 042008-04-09 05 こちらが研ぐ前のペンポイントの横顔。このペンポイントでは【オブリーク形状のまま通常筆記】に研ぐには厚みが足りない。ただし、ペンポイントが斜めに取り付けられているので、通常のBの形状になら研ぎ出せる。今回はその方向で調整することにした。


2008-04-09 062008-04-09 07 ソケットから外した状態のペン先の表側。ペンポイントがかなり強く密着しているのがわかろう。

 このままではインク量が少ない。ドバドバ好きの依頼者には物足りないであろう。スリットは拡げるが、横細縦太の字形なのでそれほどインク量は多くはならない。

2008-04-09 082008-04-09 09 こちらが調整前のペン先の裏側。ペンポイントの減りを見ると、まさに左傾斜の人の書き癖。ペンポイントの左(画像では下)側がごっそりと摩耗している。相当長期間愛用されていたようじゃ。こういうペンポイントを見ると調整するのに心が傷む・・・なんて感傷は一切感じないのが38前に【テーラーの科学的管理法】に汚染された拙者の切り割り・・・いや割り切りじゃ。さぁ、ゴリゴリ研ぐぞぅ!

2008-04-09 102008-04-09 11 こちらが通常のBに研ぎ上げた状態。拡大画像を見ると元が【】だったとは思えまい。

 スリットもこの程度開けておけば、ペン先のポンプ運動でインクをどんどん押し出してくれる。依頼者は書き出しだけ筆圧が低い。書き出しでインクが紙につけば、あとは問題ない。スリットを拡げるのは、書き出しでインクが紙につくようにするのが一番の目的なのじゃ。

2008-04-09 122008-04-09 13 こちらが横顔。ただでさえ少ないペンポイントをさらに削ったので、風前の灯火。

  しかしこの状態でも、依頼者の萬年筆ローテーションを考えれば50年は余裕でもつであろう。萬年筆はまんべんなく愛してあげれば、驚くほど長持ちするものじゃ。



【 今回執筆時間:4.5時間 】 画像準備1.5h 調整2.0h 執筆1.0h
画像準備
とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
               向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間

  

【これまでの調整記事】

2008-04-07 Montblanc No.264 14C-F ペンポイント段差   
2008-04-05 Pelikan 400NN 茶縞 14C-F ソケット交換 
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2008-03-28 Montblanc No.234 1/2G 14C-BB 賽の河原の・・・   
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2008-03-24 プラチナ #3776 赤軸・黒軸 ペン先交換
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2008-02-27 Montblanc No.142 14C-M 壮絶なる死闘
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2008-02-20 Pelikan 100N 14C-KF あやしいペンポイント 
2008-02-18 プラチナ Sterling Silver 地獄からの復活 
2008-02-16 Montblanc N0.142 14C-O はたして直るか?  
2008-02-13 Pelilam M250 バーガンディー 切り割りからドクドク  
2008-02-11 Montblanc No.149 14C-M 掠れる・・・実は大変 
2008-02-09 Pelikan M320 オレンジ 14C-M 呼吸困難 
2008-02-06 Montblanc No.144G 14C-M ペンポイント凸凹
2008-02-04 Pelikan 140 14C-M ペン先交換 → BB 
2008-02-02 Montblanc No.149 合体して開高健 
2008-01-30 Sheaffer 1000 黒縞 吸入機構完全取替 
2008-01-28 Montblanc 50年代 No.144 14C-F どん底
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2007-12-01   Montblanc '50年代 No.146 14C-M 死地からの復帰
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2007-11-21   Montblanc No.254 14C-EF ペン先曲がりと・・・
2007-11-19   Parker 75 14K-63 女王様の憂鬱
2007-11-17   Montblanc No.146 14C-OBB 筆記角度30度の世界
2007-11-14   Aurora エウロパ 18K-F 持久力向上 
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2007-11-10   Pelikan 400NN 緑縞 14C-OM カモノハシ化 
2007-11-07   Stipula ピノキオ 赤軸 18K-M インク切れ解消
2007-11-05   Montblanc No.146 18C-F 書き味品位向上

Posted by pelikan_1931 at 08:00│Comments(3) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
師匠、
この「○」が何であるか、新しい研究テーマになりそうです。まずはデータ、資料の収集ですね。
Posted by venezia 2007 at 2008年04月10日 22:56
venezia 2007 しゃん

oはオブリークのOとしては小さすぎるでの、刻印用の位置決め印では?という説もある。ようわからんのじゃ・・・
Posted by pelikan_1931 at 2008年04月10日 21:44
師匠、
このオブリークから通常のBへの調整は私には魔法をかけて頂いたとしか言いようの無いものです。有難うございます。また、ペン先の刻印の「○」がオブリークを意味しているのは初めて理解しました。というのも50年代の400で同じく「○」のマークがついているペン先があるのですが、どう見てもオブリークには思えなかったんで、この「○」はオブリークの意味ではなく、何か別の意味があるとずっと思っていました。分解のし易さという設計面、かわいいデザイン、書き味、総合して私にとっては100NがペリカンのBestです。
Posted by venezia 2007 at 2008年04月10日 21:28