
物はMontblanc No.644の金張りキャップ。金属製のキャップはクリップの部分が横に振れる時に、キャップに傷を付けてしまうので、拙者は好んでは使わない。この金張り軸では目立たないが、銀色キャップの場合は、傷が酷く目立つ。見映え第一主義の拙者には耐えられない・・・


それにしても美しい形をしたペン先じゃ!クーゲルのペン先は、どれもぽっちゃりとして垢抜けないが、このBは美しい。贅肉のないすばらしい形状をしている。今までに見たMontblancの中では、【開高健モデルの先端の平たいM】の次に美しいペン先だと思う!


しかし、それがこの萬年筆の問題ではない・・・


途中で引っ掛かっているような感じがする。Montblancの50年代モデルは、ピストンを一番下まで下げた状態でコルクを変えるので、このままではコルク交換が出来ない。今の内に直しておく必要がある。

また後ろから引き抜いた時に、コルクが胴体軸にピストン機構をねじ込む部分で抉れて色が変わっている。こうなるとピストンは空気がスカスカ通り、ピストンとしての役割を果たさなくなる。
すなわちコルクが生きている状態で後ろから引っ張れば、コルクを殺すということになる。そうならないための新兵器を準備して望んだのが今回の修理じゃ。
引っ掛かっていたピストン機構は、内部にシリコンスプレーを噴霧し、ある程度引っ掛かりそうな部分をダイヤモンドヤスリで擦って丸めたところ、どうにかこうにか力を入れれば、引っ掛かりが外れるようになった。すなわち、ピストンは首軸部分まで下げる事が出来た!


これで修理は完了した。あとは多少インクフローを良くしてあげれば万々歳だろう。
ついでに、少しだけスイートスポットも入れておいてみよう。書き味はぐっと良くなるはずじゃ。


1950年代の萬年筆は色々弱いところが多く、拙者はとても使う気にはならない。
しかし、このニブであれば弄んでみたいという欲求はある。そういう意味で今回は大いに楽しめた調整であった。
【 今回執筆時間:8.0時間 】 画像準備3.0h 調整3.5h 執筆1.5h
画像準備とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間