
M800は輸入萬年筆の定番品の中では、最も好ましい重心位置を持っている。(拙者にとってはという注釈は必要だが)
二番目はNo.146・・・で間違いあるまい。出荷時のペン先の調整度合いを評価に入れればM800のランクは落ちるが、それでも5位は下らない。

拙者もM800のニブとしては、最近は3Bしか購入しない。依頼主も同じような趣味の持主なので、嬉々として3B付きを購入したのであろう。
以前の【p.f.】ニブと違ってメタボな形状をしているが、インクフローに問題はない。ただ、紙に乗せたときの感触は明らかに硬くなっている。従って長時間筆記をする人にとっては都合が良くなってきている。
タッチが柔らかいペン先は長時間筆記すると疲れてしまう。人工芝のグラウンドでは疲労が蓄積しやすいのに似ているかも・・・?


ところが依頼者はデパートで新規購入したばかりで、ペン先など分解していない・・・
ということは、出荷時、あるいは販売店での事故と考えられる。こういうのは消費者にショックを与えるなぁ・・・これは販売側が検品で落とすべき事項。少なくとも萬年筆専門店ではあり得ない検品ミスと言えよう。萬年筆に愛情を持っていない人が検品するとこういう事態が発生する。

Pelikanのニブは捻って交換したり洗浄したり出来る・・・とあちこちで紹介されている。拙者も過去にそういう内容をあちこちの萬年筆関係のHPに投稿した記憶がある。
しかし、現行のニブに関しては、指でつまんで捻ったら100%位置ズレを起こす。従って固定した後で爪で位置修正をする技術が無ければ外すのは止めた方がよい。まずは正しい位置を覚えねばならない。

左のようになった場合、裏返して左手の爪で少し右側に押せば直るはず。ペン芯の中央がスリットの位置にあっても上下の段差がある場合は別の2つの原因のどちらか・・・この場合は素人治療は止めておくのが得策。ちゃんとした道具が必要となる。
いずれにせよ、購入するにあたってインターネットを利用するなら、ちゃんとした調整が出来る店にお願いし、到着してからは一切ペン先を捻ったりしないのが得策じゃ。【p.f.】ニブのあたりまでは捻っても問題無かったのだが・・・やはり設計が変わったのであろう。

下のニブは、拙者が完全分解し、エラをツボ押し棒で拡げ、ウェスト部分を指で絞ったものじゃ。上の状態のニブの隆起は直すのに莫大な時間がかかるのと、それほど楽しい作業ではないので、チェンジニアリングとした。すなわち、入れ替えじゃ。



自分では形状変更の不具合に気付かず、十分満足していても、仲間に発見されて不愉快な思いをする事がある。人の萬年筆の不具合は、所有者が言い出さない限り指摘しないのが【慈悲】じゃ。
プロほど無慈悲!自慢の萬年筆は決してプロの店に持ち込まないようにな・・・プロに自慢しても意味がない。相手は挑んできていると考え、真剣に欠点を探しますぞ・・・


【 今回執筆時間:3.5時間 】 画像準備1.5h 調整0.5h 執筆1.5h
画像準備とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間