2008年04月30日

水曜日の調整報告 【 Pelikan M700 18C-F → BB ペン先交換 】

2008-04-30 01 今回の依頼品はトレド。依頼者が困っているのはインクフローとピストンの硬さ。さらには書き味がやや下品なこと。カリカリガリガリという筆記音をまき散らしながら紙の上を走る。

 重量バランスは実に良いのだが、この筆記感では長期間愛情をつなぎ止めることは出来ないだろうな
。1980年代後半のトレドは実に柔らかいペン先だったが、最近では硬い。ただ硬くてもツユダクのインクフローであれば耐えられる・・・・

2008-04-30 022008-04-30 03 ペン先の拡大図を見ると、いかにもインクフローが悪そう。ここまでスリットが詰まっていて、なおかつペン先が硬いと、かなり筆圧をかけないとインクは出ない。

 分解してスリットを拡げる作業は最
低限必要になる。復活トレドとしては、このペン先は二代目になる。最初はヘロヘロの18金一色のペン先で、これは当時の#600と同じだった。その後#600は14金バイカラーペン先になり、その次が今回のトレドと同じ18金バイカラーのペン先になった。

2008-04-30 042008-04-30 05 このペン先は決して柔らかいペン先ではない。硬さとしては現行M400のペン先よりも硬いかも知れない。

 ただペンの模様がいかにも昔風なのが良い。拙者はこのペン先が付いた#600を見つける度に買っている。なを#600というのは、現行モデルになる以前の、M400と同じ大きさだった頃のM600の事を指している。正式かどうかはわからないが・・・

 ペンポイントの拡大図を横から見るとなかなか大きい。上から見て小さく、横から
見て大きなペンポイントというのは、書いているうちに横線が太くなっていく。スタブ気味の書き味が好きな人にとっては致命傷!研ぎ直そうかとも思ったのだが・・・

2008-04-30 06

 自宅にBB付きの未使用#600が二本あった。模様をトレドの物と比べてみたが、まったく同じ。これなら交換しても違和感は無い。BB二本よりは、BBとFの方が楽しめそうなので、依頼者の了解をいただいて交換することにした。

 どちらにも【p.f.】の刻印
がある。M800と違い、この刻印があったとて、特に柔らかいわけではない。いまだに解き明かされていない【p.f.】の秘密!だれか噂でも良いので知っていたら教えて下され!


2008-04-30 072008-04-30 08 こちらがBBの拡大画像。もちろん拙者の#600についていたのでスリットは調整済。従ってインクフローには問題はない。それにしても太いな・・・これほどアグリーなペン先はMontblancにはデザイン出来まい!

 この鋳造むき出しのようなゴツゴツ感がPelikanの魅力。よく考えればトレドの胴体なんて鋳物に近い仕上げ。このペン先の方がマッチしているかも知れない。次回このトレドをいじる時には、天冠も昔の彫りの物に変えたいものじゃな。


2008-04-30 09 こちはら調整前と調整後の比較。上が調整前。スイートスポットの入れ方がわかるかな?自分の萬年筆に対するスイートスポットは簡単に作れる。特に拙者は筆記時に手首を全く捻らないので、耐水ペーパーで削ったままでも使える。

 今回の依頼者は、多少手首を捻って書くうえ、最近では多少右傾斜も出てきているらしい。従って左右方向の丸めを多少強めにいれておいた。下の方がペンポイントのピントが甘いように見えるのは、丸めのせいなのじゃ。

 また前後方向の研磨は簡単。横書きがほとんどなので、筆記角度は変化しない。従って筆記角度に合わせて耐水ペーパーで研磨して、前後のエッジを多少落とすだけでよい。

 仕上げは最近、金磨き布のかわりに使い出した研磨材を塗り込んだ和紙。これだと仕上げした直後でもインクをはじかない。研磨効果は同じような物。どちらもバフがけ程度にしか削れないのが実に良い!


【 今回執筆時間:4.5時間 】 画像準備2.0h 調整1.0h 執筆1.5h
画像準備
とは分解し機構系の修理や仕上作業、及び画像をスキャナーでPCに取り込み、
               向きや色を調整して、Blogに貼り付ける作業の合計時間
調整とはペンポイントの調整をしている時間
執筆とは記事を書いている時間

    


【これまでの調整記事】

2008-04-28 Pelikan M800 18C-3B ペン先交換              
2008-04-26 Montblanc No.644 14C-B ピストントラブル  
2008-04-23 Pelikan 400 茶縞 14C-BB 秀逸なペン先  
2008-04-21 ROLEX Pen 14C-M インク吸入せず! 
2008-04-19 Omas ミロード 青軸 18K-M 生贄               
2008-04-16 Waterman Gentleman かなりボロボロ!
2008-04-09 Pelikan 100N 14K-O ペンポイントが・・・   
2008-04-07 Montblanc No.264 14C-F ペンポイント段差 
2008-04-05 Pelikan 400NN 茶縞 14C-F ソケット交換 
2008-04-02 Montblanc No.254 14C-BB インク切れ 
2008-03-30 Pelikan M800 螺鈿 18C-M 未使用 & おまかせ 
2008-03-28 Montblanc No.234 1/2G 14C-BB 賽の河原の・・・
2008-03-26 Pelikan 140 緑縞 14C-B ソケット交換
2008-03-24 プラチナ #3776 赤軸・黒軸 ペン先交換
2008-03-22 Montblanc No.254 14C-M ぬるぬるに・・・  
2008-03-19 Waterman ラプソディ Green 18K-F 胴軸痩せ?
    
2008-03-17 Parker 75 18K-M 自然コンコルド 魑魅魍魎  
2008-03-15 Pilot New エラボー 14K-SF スイートスポット形成
2008-03-12 Parker Duofold センテニアル 18K-F 生贄
2008-03-10 Montblanc No.32 14C-B インクが出ない・・・ 
2008-03-08 Montblanc No.256 18C-EF 仏蘭西 珍品!   
2008-03-05 Montblanc No.149 75周年記念 18K-EF 
2008-03-03 Montblanc No.342 14C-F 満身創痍 
2008-03-01 Pelikan 140 緑縞 14C-M ペン芯調整:苦闘3時間 
2008-02-27 Montblanc No.142 14C-M 壮絶なる死闘
2008-02-25 Pelikan 1931 ホワイトゴールド スイートスポット 2点 
2008-02-23 '80年代後半 Montblanc 14K-M 再鍍金    
2008-02-20 Pelikan 100N 14C-KF あやしいペンポイント 
2008-02-18 プラチナ Sterling Silver 地獄からの復活 
2008-02-16 Montblanc N0.142 14C-O はたして直るか?  
2008-02-13 Pelilam M250 バーガンディー 切り割りからドクドク  
2008-02-11 Montblanc No.149 14C-M 掠れる・・・実は大変 
2008-02-09 Pelikan M320 オレンジ 14C-M 呼吸困難 
2008-02-06 Montblanc No.144G 14C-M ペンポイント凸凹
2008-02-04 Pelikan 140 14C-M ペン先交換 → BB 
2008-02-02 Montblanc No.149 合体して開高健 
2008-01-30 Sheaffer 1000 黒縞 吸入機構完全取替 
2008-01-28 Montblanc 50年代 No.144 14C-F どん底
2008-01-26 Pelikan M320 緑 14C-M 背開き 
2008-01-23 Montblanc No.242 なんとか一人前に・・・ 
2008-01-21 Montblanc モーツァルト生誕250周年 時々切れる・・・
2008-01-19 Montblanc No.146 14K-BB 不思議とひっかかる 
2008-01-16 Montblanc チャールズ・ディケンズ 18K-M の呼吸困難
2008-01-14 Montblanc No.342緑 14C-B改造がひっかかる 
2008-01-12 Sheaffer Crest 14K-F 赤インクが接着剤    
2008-01-09 Omas Gentleman 14K-F キャップが・・・
2008-01-07 Shesffer Snorke 14K-F 吸入機構動かず 
2008-01-05 Montblanc No.149 14C-B 書き味に品がない! 
2008-01-02 丸善 ATHENA 萬年筆 14K-F 復活!

Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(6) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
怠猫しゃん

最近の館(やかた)は接客スピードが向上したようですな!
Posted by pelikan_1931 at 2008年05月01日 23:01
>こういうのにうっとりする会員

あ、心当たりが...

>この鋳造むき出しのようなゴツゴツ感
凛々しいですぅ。


>肩が張っている形状のBBや3B
とある方は、うちのO3Bを見て“刷毛”とか“ヘラ”とかおっしゃっておりました。
ちび猫は、ルーペでのぞきながら恍惚となりますが...

>牛丼の吉野屋言葉
館で“イリジウム大盛り、インクつゆだく”と何気なく言ったら、
時々館主様が、「“イリジウム大盛り”入りました〜♪」と言って、
沼へ誘います。気がつくと前足で握ってます。

>カーボンインクは【つゆ】というより【汁】!
うんうん♪
烏賊の黒造り(塩辛にイカ墨を混ぜたもの)に似てます。
(学生時代に凝りまして...翁趣味ですねぇ)
でも時々黒蜜に見えます。
Posted by 怠猫 at 2008年04月30日 22:55
orichan しゃん

汁だく! 新語ですな。たしかに、カーボンインクは【つゆ】というより【汁】!

ツユダク!は牛丼の吉野屋言葉だと思いますが・・・
Posted by pelikan_1931 at 2008年04月30日 21:50
monolith6しゃん

最近、こういうのにうっとりする会員が増えました。さらに傾斜しているよもっと萌えたりして・・・
Posted by pelikan_1931 at 2008年04月30日 21:47
師匠、ありがとうございました。
ペン先を交換していただいたおかげで、あの下品極まりなかったペンが、汁だくのニュルニュルした筆記感に変わり幸せを噛みしめております。
Posted by orichan at 2008年04月30日 20:32
 私がここに取り上げられたような、肩が張っている形状のBBや3Bばかりが大好きであるのを見て、以前でべそさんが「マイナスドライバー・ニブ」と評したことがあります。私にはうっとりする形状に見えます。
Posted by monolith6 at 2008年04月30日 18:01