2008年05月05日

月曜日の調整報告 【 masahiro エボナイト軸 ペン先交換 】

2008-05-05 01 今回は単なるペン先交換。従って通常なら【調整報告】の対象外であるが、萬年筆自体の出来が非常に良いので紹介することにした。

 萬年筆のブランドは【masahiro】。金属部分以外は全てエボナイト削り出し。非常に高精度のエボナイト研磨技術を持っている。創業当時からすばらしい出来だったが、さらに腕を上げたようじゃ。

2008-05-05 022008-05-05 03 この軸に元々付いていたのはPilot 5号ペンの【SF】。非常に良く調整されており、なんら不都合はない。というよりも、これほど書き味の良い【SF】に出会ったのは初めてじゃ!

 こんな具合の良い
ペン先を変える必要は無かろう!とだいぶ依頼者に話したのだが、【極太&ツユダク】のインクフロー以外では書けない体になってしまっているそうな・・・

 この【SF】は、まだ幼いお嬢さんが中学校に入ったときにプレゼントする事にして、最も太い【C:コース】のペン先と付け替えることにした。

2008-05-05 042008-05-05 05 こちらは、SFのペン先の画像。パイロットのペン芯に乗っているペン先ならば、ゴム板ではさんで引っ張れば、スコっと簡単に抜ける。

 ところがmasahiroのニブはきっちりと締まっていてビクともしない。首軸もペン芯も同じ職人さんが轢いているので、ペン先とペン芯を誤差ゼロで密着させている。まるで神が宿っているかのようじゃ。【神は細部に宿る

 なんとペン芯にペン先の厚さの半分程度の凹みがつけられている。いやはや、過剰品質とでも言えるほどの精度!

2008-05-05 06 インク供給方式はカートリッジ・コンバーター式。以前はインキ止め式中心で製作していたが、最近ではコンバーター式も作っている。拙者はどうしてもインキ止め式になじめないが、エボナイト製の軸は大好きなので、吸入方式のバリエーション増加というのはありがたい!

2008-05-05 08 ペン先はノックアウトブロックを使ってたたき出した。ペン先の裏を見るとエボ焼けがある。胴体もペン芯もエボナイト製なので、当然エボ焼けは出る。エボ焼けが酷くなるとインクフローに悪影響を及ぼすので、たまには裏をスリスリ拭いて上げたい。そういう時にスコッと引き抜けるような状態だと、すぐにペン先がグラグラになってしまう。

 【masahiro】のペン先が首軸に頑丈に固定されているのは、そういう事態を見越しているのかも知れない。


2008-05-05 09  左側が拙宅に到着した時点でのニブの状態。これではインクが出ないので、スリットを拡げて右のようにした。これでインクはドバドバと出るであろう。依頼者はかなりの速書き。ということは筆圧も強いはず。ポンプ運動でどんどんインクが引っ張られるので、書き出しさえインクが出ればあとは心配いらない。

2008-05-05 102008-05-05 11 こちらはコースを依頼者の筆記角度に合わせて研いだもの。速書きの人は手を捻る確率も高いので、かなりの許容範囲を持たせるような調整が必要となる。

 太字の調整で難しいのは【書き出しでインクが出るかどうか】。しかし許容範囲を持たせるほど、書き出しでインクが紙につかない確率が上がる。

 調整は【理想と現実とのせめぎ合い】なのじゃ・・・


【 今回執筆時間:3時間 】 画像準備1.5h 修理調整0.5h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
 
  


【これまでの調整記事】

2008-05-03 女王陛下のプラチナ・ミュージック   
2008-04-30 Pelikan M700 18C-F → BB ペン先交換 
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2008-04-26 Montblanc No.644 14C-B ピストントラブル  
2008-04-23 Pelikan 400 茶縞 14C-BB 秀逸なペン先  
2008-04-21 ROLEX Pen 14C-M インク吸入せず! 
2008-04-19 Omas ミロード 青軸 18K-M 生贄               
2008-04-16 Waterman Gentleman かなりボロボロ!
2008-04-09 Pelikan 100N 14K-O ペンポイントが・・・   
2008-04-07 Montblanc No.264 14C-F ペンポイント段差 
2008-04-05 Pelikan 400NN 茶縞 14C-F ソケット交換 
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2008-03-26 Pelikan 140 緑縞 14C-B ソケット交換
2008-03-24 プラチナ #3776 赤軸・黒軸 ペン先交換
2008-03-22 Montblanc No.254 14C-M ぬるぬるに・・・  
2008-03-19 Waterman ラプソディ Green 18K-F 胴軸痩せ?
    
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2008-03-12 Parker Duofold センテニアル 18K-F 生贄
2008-03-10 Montblanc No.32 14C-B インクが出ない・・・ 
2008-03-08 Montblanc No.256 18C-EF 仏蘭西 珍品!   
2008-03-05 Montblanc No.149 75周年記念 18K-EF 
2008-03-03 Montblanc No.342 14C-F 満身創痍 
2008-03-01 Pelikan 140 緑縞 14C-M ペン芯調整:苦闘3時間 
2008-02-27 Montblanc No.142 14C-M 壮絶なる死闘
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2008-02-23 '80年代後半 Montblanc 14K-M 再鍍金    
2008-02-20 Pelikan 100N 14C-KF あやしいペンポイント 
2008-02-18 プラチナ Sterling Silver 地獄からの復活 
2008-02-16 Montblanc N0.142 14C-O はたして直るか?  
2008-02-13 Pelilam M250 バーガンディー 切り割りからドクドク  
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2008-01-28 Montblanc 50年代 No.144 14C-F どん底
2008-01-26 Pelikan M320 緑 14C-M 背開き 
2008-01-23 Montblanc No.242 なんとか一人前に・・・ 
2008-01-21 Montblanc モーツァルト生誕250周年 時々切れる・・・
2008-01-19 Montblanc No.146 14K-BB 不思議とひっかかる 
2008-01-16 Montblanc チャールズ・ディケンズ 18K-M の呼吸困難
2008-01-14 Montblanc No.342緑 14C-B改造がひっかかる 
2008-01-12 Sheaffer Crest 14K-F 赤インクが接着剤    
2008-01-09 Omas Gentleman 14K-F キャップが・・・
2008-01-07 Shesffer Snorke 14K-F 吸入機構動かず 
2008-01-05 Montblanc No.149 14C-B 書き味に品がない! 
2008-01-02 丸善 ATHENA 萬年筆 14K-F 復活!

Posted by pelikan_1931 at 08:00│Comments(13) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
まずはシリコングリースを調達しなくてはなりません(^^;ゞ

そもそも製造時のグリースが残っているのが原因という説も
見かけたので、いきなり試すより先に使い込んで直るものか
見てみることにします。
いい結果がでたら報告に上がります。
Posted by CaskStrength at 2008年05月08日 22:01
CaskStrengthしゃん

ぜひ研究結果を報告下され!
Posted by pelikan_1931 at 2008年05月08日 19:59
棚釣りの下りが削除されたようで少し残念です。

僕もパイロットのCON-70での棚釣りに閉口している口ですが、特に
極黒は粘度が高いのか、少し揺すったくらいでは落ちてくれません。

誘導液を塗ってもダメとのことでしたが、たとえば別の記事にある
シリコングリースを塗ったりしても同じでしょうか。
目的は違うものだとは承知していますが、コンバータの素材を
覆ってくれないかなあと…。
Posted by CaskStrength at 2008年05月08日 00:35
monolith6しゃん


失礼、写真が間違っていましたな・・・
棚吊りは、インクがコンバーターのピストン付近に停滞して下に落ちてこな現象でしたな。
Posted by pelikan_1931 at 2008年05月07日 21:03
>セーラーのコンバーターには絶対発生しない棚吊りが

 私は日常的にセーラー・コンヴァータで棚吊りを体験しており、どんなインクを吸入するにせよ、ほぼ結果は同じだったと記憶しています。これを避けるには、気泡が入るのを防げば良いかと思い、吸入時にピストン・ノブをセカセカ回さず、そろーりそろーりと超スローに回したりしましたが、吸入量が増えただけで棚吊りに対しては好結果とはなりませんでした。
Posted by monolith6 at 2008年05月07日 18:51
玉鋼しゃん

拙者の知る限りでは、エボナイトの磨きは世界一ですな。
Posted by pelikan_1931 at 2008年05月06日 07:50
玉しゃん

拙者はmasahiroのペン芯能力には言及していない。あくまでもきっちりと首軸に入っていてぐらつかないという点を評価している。

逆に言えば、ペン芯をスコっと抜いてペン芯を洗ったりするのは、ノックアウトブロックが無いと無理なので、危険なインクは使えないと言うことになる。
Posted by pelikan_1931 at 2008年05月06日 07:30
きくぞうしゃん

インク自体の問題というより、雑菌が混ざるのではないかな?

昨日のペンクリでは、いろんな不具合点を聞いた。自分で体験していないことはBlogには書かないが・・・皆さんが実体験した事は、どんどん書き込んでいただきたい。伝聞はだめじゃよ。

ペンクリをやる人間にとっては、終わった後でインクが洗い流せないというのは最悪じゃ。プロではないのでな・・・

Posted by pelikan_1931 at 2008年05月06日 07:25
茶しゃん

記憶が正しければ拙者はmasahiroの第一号ユーザじゃ。
Posted by pelikan_1931 at 2008年05月06日 07:20
お久しぶりです。5日には参加するつもりだったのですが、用事が重なり、結局行けずじまい…残念です。とりあえず継続参加の表明だけさせていただこうと思い、コメントさせていただきます。


しかしmasahiro万年筆、自信満々であるだけのことはあって素晴らしい仕上がりなのですねぇ…

先日内野さんお勧めのボーテックスをmasahiro万年筆で購入してみました。他のボーテックスと比較していないのでなんとも言えませんが、細字なのに滑らかな書き味で気に入っております。(そもそもパイロット製品は優秀なのだという話も聞きますが…)

masahiro万年筆の調整(?)が気に入ったのでステラも購入し、フライング母の日で母に贈ったところ、随分書きやすかったようです。

いつかは記事の総エボナイトのものを購入してみたいものです…
Posted by 玉鋼 at 2008年05月06日 01:19
はじめまして。
パイロットのソフト調より柔らかいペン先を持つ丸善オノトモデルは
キャップをはずす度にお漏らしします。(:_;)
この万年筆を当時企画された、現ペリカンの山本さんに解消策をお尋ね
したところ、ペン芯に問題があり解決出来ないそうです。
パイロットには不具合是正にも力を入れて貰いたいですね。

masahiro エボナイト軸万年筆。
何時かは購入したいなぁ〜、と思っていましたが、
今回の記事を見てますます欲しくなってしまいました。
Posted by 玉 at 2008年05月05日 13:32
露草を愛用しております。
ペリカンのブルーブラックから、赤味が抜けた涼しげな色合いで気に入っておりましたが、手に付いた色が落ちにくいのですか。あまり気にしていませんでした。
ただ、ジェントルインクと混じった可能性は捨て切れませんが、開封後二ヶ月ほどして、インクを吸わせていたところ、ドロッとした固まりが涙滴状になってペン先にぶら下がっていた事がありました。取り除いてからは特に問題はないようですが、、、

Posted by きくぞう at 2008年05月05日 10:20
こんにちは。私もこの方の作られた万年筆を使っています。
ぜひ、ねじの部分を拡大して見てください
あの工作は素晴らしいですよ
Posted by 茶 at 2008年05月05日 08:39