2008年05月08日

解説【萬年筆と科學】 その78 ConwayとMentmoreの萬年筆工場 

2008-05-08 01スワンオノトを上級萬年筆とするならば、今回訪問したコンウエーステワート(原文に忠実に表現)やメントモアの萬年筆は中流萬年筆との位置づけ。

 同じ中流萬年筆といっても渡部氏の評価は大きく異なっている。コンウエーステワートに批判的であり、メントモアにはずいぶんと好意的じゃ。

 当時のロンドン市内を歩いていると、いたるところの小売店にコンウエーステワート社製の萬年筆を陳列してあった。そして同じ会社の萬年筆でありながら、数多くの商品ラインナップを持っていたらしい。

1:Conway Stewart 萬年筆(高価品)・・・10シリング6ペンス〜25シリング
2:Duro萬年筆・・・・・・・・・・・・・ 5シリング6ペンス〜21シリング
3:Dandy萬年筆 ・・・・・・・・・・・・ 7シリング6ペンス〜10シリング6ペンス
4:Conway萬年筆・・・・・・・・・・・・ 5シリング6ペンス〜8シリング6ペンス
5:Dinkie萬年筆・・・・・・・・・・・・ 5シリング6ペンス〜7シリング6ペンス
6:Universal萬年筆 ・・・・・・・・・・ 5シリング6ペンス
7:International萬年筆 ・・・・・・・・  4シリング
8:Scribe萬年筆・・・・・・・・・・・・ 2シリング9ペンス〜3シリング3ペンス

 それにしても中途半端な価格・・・1シリングは12ペンスだったかな?

 それほど規模の大きくない会社で、なんと8種類もの製品ラインを持っていた!


 渡部氏の表現を借りれば

 【・・・といった風に勝手放題な名をつけて出しており、販売上の節操だとか確たる方針なんかあったものではありません・・・

 だとか、

 【以上の如く実に複雑多様な商品を作っており、それらが雑然とウィンドーに並べてある店を英国の各都市でよく見かけました。私どもにさえ何が何だかわかりかねるくらいで、これで製造元が1つだとはあきれるほかはありません

 【こうしたやり口では新聞広告にしろその他の宣伝にしろ、不利不便この上ないわけですが、そんなこと一向に無頓着のようです。英国外では見られぬことです

 と、半ばあきれ気味!

 工場の大きさは、四階建てで、総延坪数は840坪もあるが、3割ほどだけを自社で使用し残りはは貸工場にしていたらしい。

 生産能力は萬年筆が38,000本/月、ペンシルが4,000本/月というところであったとか・・・

 1937年の配当は13%ということで、相当優秀な成績であったと感心している。


2008-05-08 02 メントモアは中流萬年筆としてコンウエーステワートに次ぐ存在であったらしい。この会社はコンウエーステワートと違って、1つの確たる営業方針を堅持しており、その主義主張で押し通していた。この点を渡部氏は非常に評価している。

 その方針とは・・・

 【元来ペンを使う人の90%は、スタブ型の鉄ペンを好む物である。その他の鉄ペンは特別な用途と特殊な趣味性を満足されるにすぎない

 【鉄ペンのスタブ型とは金ペンにおけるリリーフ型のことである。当社製の萬年筆をリリーフと名付け、リリーフ型の金ペンに主力を注ぐ

 というもの。これに対して渡部氏は【この主張には一理も二理もある
】と賛同している。

 渡部氏は米国のホテルに常備してある鉄ペンを見て、それらが全てスタブ型だったことを記憶しており、ロンドンでも鉄ペンといえばほとんどがスタブ型である事を知って、彼らに同調していたのじゃ。

 ペン先は細字、中字、太字があったが全てスタブ!徹底している。ただし渡部氏の評価によれば、軸の格好は実に不格好とのこと・・・拙者はこの時代のMentmoreは大好きなので、ちっとも不格好とは思わないが、この時代の流行ではなかったのであろうな。

 この章の収穫は、Platignum【プラチグナム】というのが、メントモアの安物ブランドだとわかったこと。海外オークションでプラチナの萬年筆を捜していた時、この名前を発見して、いかなる理由で【g】が入ったのかと疑問に思っていたのじゃ・・・まさか【グー!】ではあるまいしな・・・。ああ、すっきりした!

 メントモアの工場は三階建て、延坪675坪であった。貸している部分も一部あるらしい。生産力は萬年筆25,000本/月、ペンシルは3000本/月

 このMentmore萬年筆のペン先には非常に柔らかい物がある。大好きで一時買いまくっていたことがあるが、軸が貧弱でどうしても愛着が持てず、いつのまにか一本も無くなってしまった。また入手しようかな・・・安いので。



過去の【萬年筆と科學】に関する解説

解説【萬年筆と科學】 その78  
解説【萬年筆と科學】 その77                  
解説【萬年筆と科學】 その76  
解説【萬年筆と科學】 その75  
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解説【萬年筆と科學】 その73   
解説【萬年筆と科學】 その72   
解説【萬年筆と科學】 その67  
解説【萬年筆と科學】 その58    

解説【萬年筆と科學】 その56 
解説【萬年筆と科學】 その54−3 
解説【萬年筆と科學】 その54−2 
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解説【萬年筆と科學】 その48 
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Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(7) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 文献研究 
この記事へのコメント
 いやいや、引き合いに出されたものはメーカーが同じでレーベルが違うというものですが、Platignum は瓶が同じような形状をしているのみで、インクの中身もヤード・オ・レッドとは別物でした。

 ま、ヤード・オ・レッドのインクにしても大したことはない訳ですが...。
Posted by monolith6 at 2008年05月14日 13:37
monolith6しゃん

ペリカン、ファーバーカステル、クロスの瓶の形状が同一というのと同じですか・・・
Posted by pelikan_1931 at 2008年05月12日 19:55
 瓶の形は、現在ヤード・オ・レッドが出している、何の変哲もない形と全く同じです。ですから、瓶としても味気ないもの、と言えるでしょう。
Posted by monolith6 at 2008年05月12日 12:42
monolith6しゃん

Platignum ブランドのインクは生き残っていたんですな!性能がわるければ仕方ありませんが、瓶には興味があります。
Posted by pelikan_1931 at 2008年05月10日 11:46
 倫敦で生活していた頃(1998 - 2002)、Platignum のインクはまだ生産されていました。英国版「政府刊行物センター」で黒と青のインク瓶を買い求めたことを懐かしく思い出します。しかしインクそのものの品質には感心しませんでした。これが高品質のインクだったなら、大穴ものだったですね。
Posted by monolith6 at 2008年05月09日 18:55
二右衛門半しゃん

拙者にとっての七つの疑問の1つだったので、少しすっきりした!
Posted by pelikan_1931 at 2008年05月08日 19:58
Platignum、たまにオークションで見かけますがそういうことだったのですね。
ふーむ。
Posted by 二右衛門半 at 2008年05月08日 07:51