2008年05月10日

土曜日の調整報告 【 Montblanc No.252 14C-F インクフロー改善 】

2008-05-10 01 今回の患者はMontblanc No.252。かわいらしくて書き味も良い。

 書き味と言っても、それぞれに個性がある。No.25Xシリーズのイカペンは、1960年代の二桁番台とはまったく違う!

 後者はこぢんまりとした字を書くのに向いているが、No.25Xは絵を描くような感覚で字を書く際に極めて気持ちがよい・・・と個人的には感じている。

 早い話がNo.25Xの方がはるかに好き!ペンシルならNo.76が好きだが・・・

 さて患者の症状と対策だが・・・

 1:インクフローが悪い → エボ焼けの清掃とスリット調整が必要
 2:ピストンが極めて硬い →
ピストン表面の研磨とシリコングリースを塗る必要がありそう
 3:たまに筆記中にインクが切れる →
ペン芯とペン先の隙間調整
 4:筆記中にある方向だけ引っ掛かる → ペン先段差チェック & 調整
 5:ペン先根元が傷だらけでかわいそう → 金磨き布で研磨

 と仮定した。症状がわかれば、過去の経験から対処方法はわかる。あとはそれを着実にこなしていけばよい。

 重要なのは、なんとなく経験則で判断している対処方法を【巻物】にすることじゃ。メーカー各社もそれをやって欲しいな。萬年筆界のKnowledge Managementが業界を再活性化するキーじゃ!

2008-05-10 02 こちらが調整前のペン先。予想どおりスリットは詰まっている。またハート穴から後が酷く傷ついている。通常では考えられない傷・・・机の角などで擦れば首軸先端も摩耗するはず。

 おそらくは別の萬年筆からペン先を移植したのであろう。そして移植元の萬年筆は首軸先端がガリガリに摩耗していたのではないかな?

2008-05-10 032008-05-10 04 横顔を見るとペン芯とペン先の先端部分が密着していない。これも症状から予想したとおり。

 1950年代のMontblancは出荷時に微調整を実施していたはずで、ペン芯とペン先の密着度合いにはすばらしいものがあった。従ってこういう具合に隙間があるものはほとんど無い。おすらくは別の個体から持ってきたペン先とオリジナルのペン芯を合わせたのでこういう状態になったのであろう・・・と推察した。

 
もしそうであれば、ペン先の裏のエボ焼けは取り除かれているはず・・・と考えてペン先の裏を確認したら、やはりエボ焼けがほとんど無い磨き上げられた物だった。

 アセンブルして出荷する際に愛情を込めて裏を磨いたのかも知れない・・・なら表面も磨けよ!と言いたくなるが、価値観の違いかも知れない。海外では売主も買主も外見に無頓着な人も多いので・・・

2008-05-10 05 左はソケットから外して一通り金磨き布で磨いた状態。右はスリットを開いた上で、徹底的にペン先の表面を金磨き布で擦った状態。

 この際、10兒擁のゴムブロックを東急ハンズで買ってきて、そのコーナーに二重にした金磨き布を左手で強く押しつけ、その上にペン先を右手で持ってゴシゴシと押しつけて素早
く動かすのが一番効果的じゃ。

2008-05-10 06 ピストンユニットは、尻軸部分を80度くらいのお湯に入れて1分ほど入れてかき混ぜ、胴軸が膨張した頃を見計らってゴム板で尻軸のギザギザ部分だけを強くつまむようにしてに回せば外れる。

 そこからピストン部分を600番程度のラッピングフィルムで擦ってから、プラスティック磨き布でケバケバを取りのぞき、シリコングリースを少し塗りつける。これを再度胴軸にねじ込めば、ピストンは驚くほどスムーズに動く!


2008-05-10 072008-05-10 08 こちらが首軸にペン先ユニットをねじ込んだ状態。ペン先と首軸先端の位置関係は、これくらいが一番好きじゃ。ペン先の根元の真っ直ぐの部分が首軸から見えているようなのは大嫌い

 スリットは右側画像程度で十分。細字の場合、スリットを開きすぎると書き味に品が無くなる。ごくわずか開く程度でよい。これでも紙の上にインクが盛り上がるような感じになる・・・インクフローの良いインクを使えばな!

2008-05-10 092008-05-10 10 こちらが横顔。ペン芯とペン先の密着感を上げるために、ペン先側はツボ押し棒でややおお辞儀させ、ペン芯は90度程度の熱湯に入れて上に反らせた。それを合わせてソケットに装着し、再度熱湯に入れる。ペン先のスリットがちょうど良い状態になったところで、素早く冷水に入れて位置関係の変化を止めるのじゃ。

 印画紙を現像液から引っ張りだして、停止液に入れるがごとし・・・



【 今回執筆時間:3.5時間 】 画像準備1h 修理調整1h 記事執筆1.5h
画像準備
とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間

   

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Posted by pelikan_1931 at 11:11│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整