2008年05月21日

水曜日の調整報告 【 Waterman セレニテ・ドラゴン 18C-M インク漏れ 】

2008-05-21 01 今回の患者はセレニテ・ドラゴン。120本限定らしい。こういう工芸品的な物は死蔵されることが多く、あまりペンクリなどには出てこない。従って、拙者が目にする機会も少ない。蒔絵では模様系はすきだが、生き物系は好きではない。が、辰年生まれだけに、ドラゴン物は好き!

2008-05-21 02 元々ウォーターマンには【スネーク】というモデルが100年ほど前にあった。軸に蛇が巻き付いていて、クリップが蛇の顔というもの。

 第一回のペントレの時に、お宝探偵団が入ったが、その際の正解がWatermanのスネークだった。出題者のすなみまさみち氏が、蛇年とからめて出題したのだが、見事その意図を読み取ったcrocodile149しゃんは正解した!

2008-05-21 03 この図柄は一時流行したらしく、パーカーにも存在したし、モンブランも作ったことがある。後者を模したのが限定品の【アガサ・クリスティー】らしい。オリジナルはセイフティ・フィラー物ではなかったかな?

2008-05-21 04 セレニテはおもしろい形状をしていて、内部は真っ直ぐであるが、外形は曲がっている。

 コンバーターを入れるので内部が曲がっているはずはないのだが、目の錯覚で内部も曲がっているに違いないと考えてしまう。尻軸先端とキャップのデザインのせじゃろうな・・・

2008-05-21 05 症状はインクが漏れるということだったが、これはコンバーターの押し込み方が足りなかっただけ。まったく問題はなかった。

 昨今はコンバーターもねじ込み式が増えてきたが、ウォーターマンはまだその対応をしていない。モンブランがいの一番に取り組んだと記憶しているが、さすがの見識!

 インク漏れに長年苦しんできたメーカーだけに対応は早かったな!こういうところを見ると、モンブランのファッションブランド化を見くびってはいけない。ブランドはそれなりの品質を要求する!それが結果として製品に良い影響を与えているのじゃ。

 ペン先を見ると例によってスリットが詰まりすぎている。この状態だとインクがあまり出ないので、自然と筆圧が高くなり、書き味をそこねてしまう。そこでスリットをひろげるわけだが、こういうプラチナ鍍金がペン先全体にかかっている物は難しい。

 スキマゲージを入れて無造作に左右に捻ったらスリットから金が盛り上がってしまう。金一色ニブなら金磨き布の上でゴシゴシこすれば跡形も無くなるが、バイカラーやプラチナ鍍金ニブでは・・・鍍金が跡形もなくなってしまう・・・

 拙者がプラチナ鍍金ニブを、最近快く思わなくなってきているのはこのためじゃな・・・(バイカラーは昔から嫌い!)

2008-05-21 062008-05-21 07 その形状から、ラウンド・ニブと勘違いする人もいるが、左のようにちゃんとしたオープン・ニブの形状をしている。ラウンド・ニブとはSheaffer Snorkelの高級ラインや、デュポンのモンパルナスに見られるような筒型ニブのこと。

 ペン先とペン芯との密着度合いはさすがWaterman!しっかりしている。昔からここだけは世界一ではないかなぁ・・・ あるいは、この事をねらってラウンド・ニブもどきの設計をしたのかもしれない。


2008-05-21 082008-05-21 09 こちらがスリット調整後のペン先ユニット。ちゃんとスリットは開いているが、金の盛り上がりは無いのがわかるかな?微妙な力加減の【神業】だが、あまり何度もはやりたくはない作業。

 よく見ると、ハート穴は空いていない。単に切り割りの目印の為にポッチを押しただけのようにも見える。しかも多少ずれてるし・・・

 ということは、このモデルでは空気はハート穴からではなく、ペン芯のサイドから入っていることになる。どうもサイド取り込み方式の方が、インクフローは安定しているような気がする・・・気のせいかも知れないがな。


【 今回執筆時間:4.5時間 】 画像準備1.5h 修理調整1.5h 記事執筆1.5h
画像準備
とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間

 


【これまでの調整記事】

2008-05-19 Sheaffer Snorkel 14C-XF 内臓はボロボロ? 
2008-05-17 Montblanc No.149 14C-B 上品な書き味へ・・・   

2008-05-14 Pelikan M400 茶縞 生贄:やりたい放題  
2008-05-12 セーラー・プロフィット・・・女王からの宿題 その2 
2008-05-10 Montblanc No.252 14C-F インクフロー改善    
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2008-05-05 masahiro エボナイト軸 ペン先交換   
2008-05-03 女王陛下のプラチナ・ミュージック   
2008-04-30 Pelikan M700 18C-F → BB ペン先交換 
2008-04-28 Pelikan M800 18C-3B ペン先交換              
2008-04-26 Montblanc No.644 14C-B ピストントラブル  
2008-04-23 Pelikan 400 茶縞 14C-BB 秀逸なペン先  
2008-04-21 ROLEX Pen 14C-M インク吸入せず! 
2008-04-19 Omas ミロード 青軸 18K-M 生贄               
2008-04-16 Waterman Gentleman かなりボロボロ!
2008-04-09 Pelikan 100N 14K-O ペンポイントが・・・   
2008-04-07 Montblanc No.264 14C-F ペンポイント段差 
2008-04-05 Pelikan 400NN 茶縞 14C-F ソケット交換 
2008-04-02 Montblanc No.254 14C-BB インク切れ 
2008-03-30 Pelikan M800 螺鈿 18C-M 未使用 & おまかせ 
2008-03-28 Montblanc No.234 1/2G 14C-BB 賽の河原の・・・
2008-03-26 Pelikan 140 緑縞 14C-B ソケット交換
2008-03-24 プラチナ #3776 赤軸・黒軸 ペン先交換
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2008-03-19 Waterman ラプソディ Green 18K-F 胴軸痩せ?
    
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2008-03-15 Pilot New エラボー 14K-SF スイートスポット形成
2008-03-12 Parker Duofold センテニアル 18K-F 生贄
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2008-03-08 Montblanc No.256 18C-EF 仏蘭西 珍品!   
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2008-03-01 Pelikan 140 緑縞 14C-M ペン芯調整:苦闘3時間 
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2008-01-26 Pelikan M320 緑 14C-M 背開き 
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2008-01-21 Montblanc モーツァルト生誕250周年 時々切れる・・・
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2008-01-16 Montblanc チャールズ・ディケンズ 18K-M の呼吸困難
2008-01-14 Montblanc No.342緑 14C-B改造がひっかかる 
2008-01-12 Sheaffer Crest 14K-F 赤インクが接着剤    
2008-01-09 Omas Gentleman 14K-F キャップが・・・
2008-01-07 Shesffer Snorke 14K-F 吸入機構動かず 
2008-01-05 Montblanc No.149 14C-B 書き味に品がない! 
2008-01-02 丸善 ATHENA 萬年筆 14K-F 復活!

Posted by pelikan_1931 at 07:45│Comments(2) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
二右衛門半しゃん

それだけあれば、十分増えたといえるのではないかな!
Posted by pelikan_1931 at 2008年05月22日 07:34
>昨今はコンバーターもねじ込み式が増えてきたが

モンブランがねじ込み式になったのは知っていますが、他のメーカーもねじ込み式があるのですか?
マーレン、モンテグラッパ。カラン・ダッシュ以外、どこがあるのでしょう?

ねじ込み式が増えたら、パイロットの万年筆にセーラーのカートリッジを差し込むような無茶をする人は減るかなぁ・・・・減ると良いなぁ。。
Posted by 二右衛門半 at 2008年05月22日 07:14