
依頼内容は、どことなく引っ掛かるというもの。依頼者は【京のダメ出し王子】と呼ばれる拙者と同い年のおじさん。【ダメ出しの女王】のように居丈高に欠点を指摘したりはしないが、【すんませんが・・・お願いしま〜す】という調子で、あちこちのペンクリに出没しているらしい。


首軸先端の金属が酸に冒されやすく、ボロボロになってしまうのが一つ目の大きな欠点。これを防ぐ為に、お粗末な金鍍金板を巻いたりしたが、あまりに不評だったようで、最終モデルではこの形状になった。これは実用上まったく問題はなく良い出来だと考えていた。ただグリップ部の模様があまりに貧弱になったのが残念!


研ぎも実に綺麗。上から見た画像を見ると、ペンポイントの背中が真っ平らに成形されていることがわかる。この丁寧さはほかでは見たこと無い。こういうこだわりが好きじゃ!

そして首軸の樹脂がフィンに残ったインクのせいか、べこべこに痩せて、キャップがきっちりと締まらなくなった個体を頻繁に見かける。おかげでParker 75は、本体よりも【完品首軸】の方が高値で取引される事もあった。

その為には雑音があってはならぬ。深夜、窓を閉め切り、一切の空調装置も切って作業する必要がある。従って、初夏に預かった調整依頼は、10月になるまでそのまま放置せざるを得ない。都心では、冷房無ければ即死するからな・・・
今回の調整はほんの少しスリットを拡げたこと。そしてエッジを数回5000番の耐水ペーパーで擦ったあとで、秘密の紙で仕上げをしただけ。少しずつ、この紙の使い方に慣れてきた。
太字の仕上げに15000番のラッピングフィルムを使うなどはもってのほか。
同じ書き味なら、粒度の粗いペーパーで仕上げた方がスキップが少ないのじゃ。これは個々人の感度がからむので、どうしても対面調整でないとむつかしいがな・・・
【 今回執筆時間:4時間 】 画像準備1h 修理調整1h 記事執筆2h
画像準備とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間