2008年06月07日

土曜日の調整報告 【 Montblanc 50年代No.146 14C-OB 斜面調整 】

2008-06-07 01 今回の依頼品は驚くほど状態の良い1950年代No.146。Vintageの中ではNo.256と並んで、最も艶めかしい萬年筆じゃ。

 この時代のMontblancは枯れていないセルロイドを使っているせいか、かなり収縮する。後世の人がブランドに対する先入観を持たずに萬年筆を診断すれば、製造技術としてはかなり【】にランク付けするかもしれない。

 しかし、出来の悪い生徒ほど印象に残るとか、悪い女ほど魅力的とか・・・そういう観点では、Vintage No.146 & No.256は、やはり双璧じゃ。Pelikan 100や100Nは普通に出来た生徒、Soennecken 111がとびきりの優等生というところかな?


2008-06-07 022008-06-07 03 依頼主は最近多少右に傾けて書くこともある。それに対してOBのニブは、右に傾けることを許さない形状となっている。これを普通に書けるようにして欲しいというのが要望事項じゃ。

 昔ならペンポイントを平行に研いでBの形状に変えてしまっていた。しかし、それでは大幅整形になってしまう。

 後世に伝えることが可能な状態の萬年筆に関しては、大幅整形を施して、後世の人々に誤解を与えたくないと考えている。従って程度の良い萬年筆に対しては、プチ整形しか施さない。

 今回の依頼品に関しては、右に倒しても書けるが、形状はオブリークのままにする・・・という手段を取ることにした。それほど【状態の良い萬年筆】ということじゃ。

 まずは、多少スリットを開く必要がある。いったん書き出してしまえば、ペン先はインクが出やすいように段差が自動調整される。これが柔らかいペン先の特徴!しかし書き出しでインクが紙に付かなければ何も始まらない。それほど書き出しは重要。特に筆記角度と真反対に設計されているペン先の調整は微妙で難しい・・・すなわち面白い!


2008-06-07 042008-06-07 05 横顔を見ると段差がある。上から見て左側のペンポイントが下がっている。これでは書くに際してガリガリガリガリと大きな音を立ててしまう。また依頼者はかなり寝かせて文字を書くので、スイートスポットを作り込まないと、かなりガサツというか下品な書き味になってしまう。

 依頼者の筆記角度では、ペンポイントの一番不味いところが常に紙にあたっている・・・これは悲惨じゃ。

2008-06-07 06 尻軸には、まだ番号部分に色が残っている。これは金色クレヨンを塗り込んで、使っているうちに一部が剥離したのではないかな?最初からある色とは多少異なっているし、粒子も粗いようじゃ。

 Vintageの見映えを良くするのにクレヨンを使うのは一般的。手軽に出来るので、もし金色クレヨンを持っている方はお試しあれ! 拙者も欲しいなぁ・・・

2008-06-07 072008-06-07 08 こちらが微調整後のペンポイント。1950年代のNo.146の調整時に、ペン先を外さなかったことはない。今回も多少ペン芯の位置を後退させた。

 後期の厚いペン芯の場合は、前から引っ張ってもペン芯が歪んだり折れたりしないので簡単!薄いペン芯の場合は首軸を胴体から外してペン芯をたたき出さないと危険。ところが首軸が外れないケースも多々ある。

 修理する立場から言えば、1950年代のNo.14Xは非常にリスクが高い。慣れたところへ修理依頼しないと大変な事になりますぞ!

 拙者はMontblancへ1950年代No.149を2本
修理に出して大変な目にあったことがある。ずいぶん前だが【どうなっても文句言いません・・・】みたいな誓約書を書かされたので文句も言えなかった。

 Vintageを修理するなら、ユーロボックスのような慣れた店に頼むのが一番じゃよ。それと修理には数ヶ月かかることを覚悟すること。長い待ち行列がある。みなさん、それほどVintageを大切に使っているということじゃ!

2008-06-07 092008-06-07 10 こちらが横顔。今回はペンポイントの腹がかなり研磨されているのがわかろう。

 上から見た形状を変えないで、オブリープを右傾斜で書けるようにするにはでは調整できない。依頼者の筆記角度でサンドペーパーの上で書いてみる。どの部分に傷がついているか確認し、そこをスイートスポットとして、研磨・調整を進めていくのじゃ。

 このオブリーク調整は、最も高度な微調整なので、調整師を志す人は、一度はチャレンジしてみなされ。軸製作では【四山ネジ切り】が最後に教わるものとされていたようじゃが、調整ではこのオブリーク逆調整かな?オブリークの形状を残したまま右に倒して書けるようにする・・・面白いですぞ



【 今回執筆時間:3時間 】 画像準備1h 修理調整1h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
        
  


【これまでの調整記事】

2008-06-04 Sheaffer PFM 掘 部品そろえ!    
2008-06-02 性懲りもなく、ドボドボイジャー排斥への挑戦 
2008-05-31 Parker 75 赤ラッカー 18K-B 西の・・・・     
2008-05-28 Pelikan 旧M800 18C-F EN+刻印  
2008-05-26 Platinum 純銀軸 18C・WG-Music 段差修正  
2008-05-24 Pelikan M250 緑マーブル 14C-M カビと段差        
2008-05-21 Waterman セレニテ・ドラゴン 18C-M インク漏れ   
2008-05-19 Sheaffer Snorkel 14C-XF 内臓はボロボロ? 
2008-05-17 Montblanc No.149 14C-B 上品な書き味へ・・・   

2008-05-14 Pelikan M400 茶縞 生贄:やりたい放題  
2008-05-12 セーラー・プロフィット・・・女王からの宿題 その2 
2008-05-10 Montblanc No.252 14C-F インクフロー改善    
2008-05-07 Pelikan 400NN 14C-F 超硬いピストン     
2008-05-05 masahiro エボナイト軸 ペン先交換   
2008-05-03 女王陛下のプラチナ・ミュージック   
2008-04-30 Pelikan M700 18C-F → BB ペン先交換 
2008-04-28 Pelikan M800 18C-3B ペン先交換              
2008-04-26 Montblanc No.644 14C-B ピストントラブル  
2008-04-23 Pelikan 400 茶縞 14C-BB 秀逸なペン先  
2008-04-21 ROLEX Pen 14C-M インク吸入せず! 
2008-04-19 Omas ミロード 青軸 18K-M 生贄               
2008-04-16 Waterman Gentleman かなりボロボロ!
2008-04-09 Pelikan 100N 14K-O ペンポイントが・・・   
2008-04-07 Montblanc No.264 14C-F ペンポイント段差 
2008-04-05 Pelikan 400NN 茶縞 14C-F ソケット交換 
2008-04-02 Montblanc No.254 14C-BB インク切れ 
2008-03-30 Pelikan M800 螺鈿 18C-M 未使用 & おまかせ 
2008-03-28 Montblanc No.234 1/2G 14C-BB 賽の河原の・・・
2008-03-26 Pelikan 140 緑縞 14C-B ソケット交換
2008-03-24 プラチナ #3776 赤軸・黒軸 ペン先交換
2008-03-22 Montblanc No.254 14C-M ぬるぬるに・・・  
2008-03-19 Waterman ラプソディ Green 18K-F 胴軸痩せ?
    
2008-03-17 Parker 75 18K-M 自然コンコルド 魑魅魍魎  
2008-03-15 Pilot New エラボー 14K-SF スイートスポット形成
2008-03-12 Parker Duofold センテニアル 18K-F 生贄
2008-03-10 Montblanc No.32 14C-B インクが出ない・・・ 
2008-03-08 Montblanc No.256 18C-EF 仏蘭西 珍品!   
2008-03-05 Montblanc No.149 75周年記念 18K-EF 
2008-03-03 Montblanc No.342 14C-F 満身創痍 
2008-03-01 Pelikan 140 緑縞 14C-M ペン芯調整:苦闘3時間 
2008-02-27 Montblanc No.142 14C-M 壮絶なる死闘
2008-02-25 Pelikan 1931 ホワイトゴールド スイートスポット 2点 
2008-02-23 '80年代後半 Montblanc 14K-M 再鍍金    
2008-02-20 Pelikan 100N 14C-KF あやしいペンポイント 
2008-02-18 プラチナ Sterling Silver 地獄からの復活 
2008-02-16 Montblanc N0.142 14C-O はたして直るか?  
2008-02-13 Pelilam M250 バーガンディー 切り割りからドクドク  
2008-02-11 Montblanc No.149 14C-M 掠れる・・・実は大変 
2008-02-09 Pelikan M320 オレンジ 14C-M 呼吸困難 
2008-02-06 Montblanc No.144G 14C-M ペンポイント凸凹
2008-02-04 Pelikan 140 14C-M ペン先交換 → BB 
2008-02-02 Montblanc No.149 合体して開高健 

Posted by pelikan_1931 at 16:00│Comments(4) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
venezia 2007 しゃん

楽しみにしておりますぞ。
Posted by pelikan_1931 at 2008年06月07日 20:54
師匠、
まだお目見えしていませんが、もっと強烈なのがまだまだ何本か。。。後日お世話になります。
Posted by venezia 2007 at 2008年06月07日 20:01
venezia 2007 しゃん

このような貴重な物が、ごろごろあるとは!やはり独逸は侮りがたい!
Posted by pelikan_1931 at 2008年06月07日 19:19
師匠、
有難うございます。先日調整して頂いたやはり非常に状態の良い144同様にこれもこのまま次世代への貴重な文化遺産にしたいと思います。どちらもオークションでの入手ではなく、直接欧州での調達ですが、やはりまだまだ欧州ではこのような状態のものが入手できるということは、かの地での万年筆文化の深さと歴史を感じます。
Posted by venezia 2007 at 2008年06月07日 18:28