2008年06月23日

月曜日の調整報告 【 Marlen スケルトン 18K-M 掠れと出過ぎ 】

2008-06-23 01 今回の患者はMarlen スケルトン萬年筆研究会【WAGNER】では、まったく人気のないMarlenであるが、このスケルトン軸には、皆ショックを受けた。【美しい!】。まるでPelikan・イカロスのよう。

 内部機構が美しくないボタンフィラーの部分は巧みに純銀で覆ってある。正式名称は不明だが、吸入機構が見えない以上、Demonstratorとは呼べない。

 【書き出しで掠れるにもかかわらず、トメでは時々出過ぎる傾向がある。コントロールされた多めのフローにしてください。紙あたりに不満無し。掠れる割にドバット出るのは?解説求む!】 という内容の症状説明が書き添えられていた。

2008-06-23 022008-06-23 03 まずスリットが詰まっている。従って書き出しでインクが出にくい。こういう萬年筆を使う場合、それを意識して筆圧が強くなる。特に筆圧がかかりやすいトメでは、ググっと力が入ってしまう。従って、これはスリットを開けば症状は解決するはず。

 書き出しでインクが出れば、相対的筆圧が下がるので、トメでも軽い筆圧になるから。人間の対応力の不思議さに感心してしまう・・・スリットを開いて、インクがドバっと出るのを押さえられる・・・人間側の筆圧の変化があってこそだがな。

2008-06-23 042008-06-23 05 横顔を見ると、依頼者の筆記角度から大きくズレている。依頼者の筆記角度がペンポイントの一番不味いところに当たっている。

 いくらインクフローが安定しても、これでは気持ちよい筆記は出来ない。筆記時に紙に当たるペンポイントがゴツゴツとして不安定なので、インクの出もばらつき、心地良くない。紙あたりに【不満はない】から、紙あたりに【目が輝く】レベルにしてみよう。

2008-06-23 06 これがMarlenのペン先。弱小メーカーから巨大メーカまで、世界のペン先の大半は独逸のペン先製造専門会社が作っている。当然、Marlenも同じと考えられる。

 従って、書き味の差は、一本いくらで作るというコストに依存する。ロット数が少なければ、ペン先コストが上がるが、品質が落ちるか、自社の利益を減らすか・・・じゃ。

 Marlenのペン先は悪くない。けっこう良い品質だが、惜しむらくは長さが短い。出来れば、もう少し首軸内部の長さを伸ばした方がよい。

2008-06-23 07 なぜならMarlenの最大の弱点が、ペン先が左右にグラグラしてくること。これはペン芯にも原因があろう。

 ペン芯も当然別の部品メーカーから仕入れて、アセンブルしているのに過ぎない。首軸にペン先とペン芯を押さえて押し込む時、きつくてなかなか押し込めないほうがペン先が安定する。そうするとアセンブルの職員からブーブー不満が出るはず。それに妥協して押し込みやすいペン芯を選んだり、首軸内径を広くすると、ズレる症状が出てしまう。

 一時のViscontiの小さい方のニブを使った限定品が同じ症状だった。大きいペン先は首軸やペン芯と接触している面積が広いのでスレ難いのであろう。

 Marlenも小さいニブの場合は、首軸かペン芯を加工して、定位置からずれない設計にした方がよい。

2008-06-23 082008-06-23 09 こちらがスリット調整後のペン先の拡大図。この程度のスリとならそっと紙に触れる程度の筆圧でも、書き出しでインクが掠れる確率はうんと小さくなる。

 Marlenのペン先とペン芯がズレやすい原因のひとつが、画像から見て取れる。首軸の径に比して、ペン芯の径が細い。これはペン先の根元がぐっと狭められていることでもわかる。これによって摩擦力が減ったのじゃ・・・

2008-06-23 102008-06-23 11 筆記角度に合わせて研磨するのは、何も筆記時の書き味を良くするためだけではない。筆記角度と合わせると、書き出しの掠れが減るのじゃ。紙に当てた瞬間にインクが紙と密着する・・・筆記角度と逢っていなければ、インクが来ていない部分が最初に紙に接するかも知れない・・・

 書き出し掠れは調整師の最大の課題じゃ!しかし理論から詰めれば、ペン先をこねくり回す人以外には、書き出しの筆記角度とペンポイントの傾斜を合わせ、馬尻に気をつければ極楽を演出出来る!お試しされてはいかがかな?


【 今回執筆時間:5.5時間 】 画像準備2h 修理調整1.5h 記事執筆2h
画像準備
とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
       
     


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Posted by pelikan_1931 at 07:30│Comments(3) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
b787 しゃん

この軸は実に美しいですな。ボタンフィラーは直前に出たインク量から推定するしかないのじゃ。

あるいは、インク吸入前との重量比較でしかわかない・
Posted by pelikan_1931 at 2008年06月26日 22:41
1
続き…

このボタンフィラー等では、インク残量が見えません。ラバーサックの為、振っても残量が伝わってきません。皆さんどの様に使っておられるのでしょうか?念力で想像すれば、残量は分かるとのアドバイスを頂いた事もあるのですが。(私の場合、きっちり吸入出来たかどうかもよく分からず、余り吸ってもいないまま、持ちだした後すぐインクが無くなってしまい、失敗した事もありました。)
Posted by b787 at 2008年06月25日 11:58
5
Pelikan・イカロスを頂点として、あの色合いやスケルトン物にとても魅力を感じています。このマーレンも、目にした瞬間にBidしてしまいました。大きさが手に馴染み、又持ち歩きやすく、気軽に使える所が気に入っております。(イカロスだと緊張してしまって。)
調整前は、全くコントロールされていない感じのインクフローでした。調整後は、気持ちの良いフローにコントロールされている感じがします。(掠れたり、反対に思いも寄らずドバッとでてしまうような事が無い。)
フローが悪い状態では人間が勝手に筆圧を上げていたのですね。納得しました。
書き心地もストレスがなく、より気持ちよく持ち歩けるようになりました。ありがとうございました。
Posted by b787 at 2008年06月25日 11:57