2008年06月28日

土曜日の調整報告 【 Warl Eversharp Red Ripple 14K-Flexible 】

2008-06-28 01 今回は修理。患者はエバーシャープ赤縞エボナイト軸。症状はまったくインクを吸わないこと。古い萬年筆ゆえ、インクサックが溶けてしまっているのだろうと思った。よくある話なのでな。

 昔のRed Rippleは美しい!偶然が織りなす模様であるが、まるでフィヨルドの海岸のように規則的な感じがする。古い物なのにエボナイトはほとんど曇っていない。良い状態の萬年筆じゃ。

 キャップの金具も凝っている。これだけ派手な軸なので、キャップはシンプルにしないと、日本人がデザインしたら野暮ったくなる。それをここまでエレガントに出来るとはな。しかも鍍金の技術がすばらしい!当時の独逸のへなちょこ鍍金とは雲泥の差!

2008-06-28 02 書いてみるとペン先は柔らかいのに、ザラザラする。多少研いでもザラザラは直らない。こういう時は、形状を整えたら研ぐのをすぐに止めた方がよい。

 ペンポイントの粒度が荒くて研いでもクレーター状態が直らない。逆に研ぐほど新しいクレーターが下から現れてくる。こういう場合はインクフローを良くして、書き手の筆圧を下げ、紙にかかる圧力を下げて相対的書き味を上げるのが常套手段。

2008-06-28 032008-06-28 04 横から見るとペン先とペン芯の間に多少隙間が出来ている。

 しかしペン先のスリットは全くないので、何度か修理しながら今日まで生き延びてきたのであろう。ただ、その過程で、最低一人はへたくそがいたということかな・・・

2008-06-28 05 サックは交換してみたが、まったくインクを吸う気配はない。そこで内部機構を引っ張り出して見たら・・・これでは吸わん!しかも、拙者も見たこともない仕組み。何か部品が足りないのかも知れない。こういうのが平気で流通していくのがオークションの世界。拙者は最近はまったく信用していない。

2008-06-28 06 役に立たない部品に変わって、FPHなどで販売しているJ-Barを使うことにした。これは形状が【】の字に似ているのでJ-Barと呼ばれている。ちなみにボタンフィラー用は真っ直ぐなので、I-Barと呼ばれている。

 このJ-Barをレバーでちゃんと押せる位置にセットして、胴軸内に押し込む。レバーを立てた時にBarがインクサックを押す状態になればOK。非常に簡単な修理なので、壊れたレバーフィラーがあれば、WAGNERに持ち込まれたし!

2008-06-28 072008-06-28 08 ペン先のスリットを開いたら、見違えるように超柔らかい書き味になった。

 インクフローも劇的に改善。これでWarl Eversharp独特の柔らかい書き味を堪能できるであろう。

 このペン先の【EVERSHARP】の刻印は斜めに彫ってある。長いから仕方ないとはいえ、大胆なデザインじゃな。


2008-06-28 092008-06-28 10 こちらは横顔。ペン先のカーブに合わせてペン芯を研磨し多少反らせた。これでペン先とペン芯との間の隙間は無くなりインクフローも安定する。

 またペンポイントの腹の部分は依頼者の書き癖に合わせてかなり削り込んだ。以前の角度だと、あまりにエッジがあたりすぎて少々研いでも症状が改善しなかった・・・これも粒度の粗いペンポイントのせい。現在の国産萬年筆と比べると数段階品質の悪いペンポイントを使っていた時代じゃ。

 Vintageを溺愛する人が増えているが、ペン先の弾力を除けば残り全ての面で現在のペン先の方が優れているペン芯性能に至ってはミジンコくらい性能が違う・・・

 【ペン先の弾力】の魅力にあらがえない人はVintageの世界へ行くのが一般的だが、それでも満足できない人の為に【らすとフォルカン】が開発された。こちらもぜひお試しあれ。5,000円程度の萬年筆で全盛期のONOTOを越える柔らかさを実現することも可能じゃ。



【 今回執筆時間:5時間 】 画像準備1.5h 修理調整2.5h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
      
   


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Posted by pelikan_1931 at 12:00│Comments(9) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
pelikan_1931さま

>Vintageの米国製は決してなめらかなペンポイントではないのじゃ。

そうなんですか。知りませんでした。

>当時のParkerやSheafferの細字の書き味は極上です!それはインクフローのコントロールが完璧なためです。

そう言えば、私が上質と感じたParker、Sheafferとも細字です。
だからよかったんですね。

勉強になりました。
Posted by yamamoto at 2008年07月01日 00:10
yamamotoしゃん

Vintageの米国製は決してなめらかなペンポイントではないのじゃ。ただし非常にインクフローを良くしてあるので、筆記時の筆圧が下がり、心地良い書き味を提供してくれる。

当時のParkerやSheafferの細字の書き味は極上です!それはインクフローのコントロールが完璧なためです。
Posted by pelikan_1931 at 2008年06月30日 22:39
三日堂 蓮覇 さま

>目の保養になりました

こちらこそ、お言葉をありがとうございます。

ご愛用のヴィクトリーも是非、拝見させていただきたいです。
Posted by yamamoto at 2008年06月30日 21:20
>yamamoto様

目の保養になりました。

私のヴィクトリーは、生贄に捧げてみますかね。
Posted by 三日堂 蓮覇 at 2008年06月30日 18:53
もしかしてこれは私が修理依頼した万年筆でしょうか?サック交換だけでなく、ペンポイントまで私の癖に合わせて調整していただくとは思っていなかったので感激です。ありがとうございます。

ヴィンテージペンはペンポイントの質がよくないとは知りませんでした。総じてそうなのか、またはメーカーや、モデル、製造年代によるのでしょうか?ヴィンテージのパーカーデュオフォールドやシェ−ファーのフラットトップモデルを使ってみて、非常に質が高いと思っていましたので意外でした。

私も、ヴィンテージの魅力に抗えない者のひとりです。ペン先の柔らかさもそうですが、この万年筆のように、エボナイト軸の質感と複雑な色彩、クリップデザインの隙の無さ、ゴールドフィルドによるのでしょうか、金属部分の高級感など、この完ぺきな美しさは現代のペンにはないものを感じます。
Posted by yamamoto at 2008年06月30日 17:54
らすとるむ様

>もしかしたらエラ削りも…

まさにその通りです。
件の845、手紙用としては、和紙物に対して有効に活用させて貰ってます。
興味本位で、そちらへ生贄として提出した気がします。
それが、あれだけ面白くなっちゃいました。
…改めて、感謝しておりますm(u_u)m。
Posted by 三日堂 蓮覇 at 2008年06月29日 03:53
師匠こんばんは。

「らすとフォルカン」取り上げていただき恐縮です。

三日堂 蓮覇 さん。

やった本人が良く覚えていないのは申し訳ないのですが・・・ハート穴付近の両サイドに半円形の削りこみがフォルカン加工です。フォルカン加工をしない場合は思いっきり裏全体を薄く削ったはずです。もしかしたらエラ削りもしているかも知れませんネ。
Posted by らすとるむ at 2008年06月28日 23:54
『らすとフォルカン』之件にて

訂正です。あれはどう見ても『かものはし化』でした。
でもコレはコレで、手放せなくなってますよ〜。
Posted by 三日堂 蓮覇 at 2008年06月28日 22:38
このペンにも惚れてしまいました(//▽//)!
我が愛しのヴィクトリーは、ペンポイントに関して言うと、堀切‥のアノ方の手により、『21世紀品質』となっております。
サックの方は毎日吸入(そのくらい書きまくっておりました)しながらも、2年持ちました。
ハイ、只今吸入不能でもあります。

>『らすとフォルカン』

1月に、らすとるむ様が私の845に施されたのはコレでしょうか?
Posted by 三日堂 蓮覇 at 2008年06月28日 22:28