2008年06月30日

月曜日の調整報告 【 Pilot 旧エラボー 14K SB ペン芯乖離 】

2008-06-30 01 今回の患者はパイロットの初代エラボー。独特の形状とソフトな書き味で有名な萬年筆じゃ。このクリップに非常にコストがかかっていると聞いたことがある。爆発的に売れた時代もあるが、コストがかかりすぎて利益にはあまり貢献出来なかったとの噂を複数の関係者から聞いた。

 拙者にとってはやや軸が細すぎて快適には書けなかった。New エラボーの方が好み!太い軸と回転式のキャップ、そして漆を塗っていないペン芯というのが潔くて良い。

 症状はペン先とペン芯との間に大きな隙間が空いているというもの。通常ではあまり考えられない症状。面白そうなので、自宅に持ち帰ってじっくりと分析してみた。

2008-06-30 022008-06-30 03 一目見て、ペン先の首軸への突っ込み方が足りないのではと考えた。あと1ミリほどは突っ込まないと見映えが良く無さそう・・・拙者の場合は常に見映えが重要と考えている。また完成度の高い定番工業製品は、どれもデザイン的な破綻も少ないものじゃ。MontblancのNo.25Xもそうだが、イカペン形状のペン先で根元部分が首軸外から見えるのは無粋・・・

 ペン先のスリットの開き具合は実によいので、ペン先の首軸への固定度合いだけが問題であろうと考えた。


2008-06-30 042008-06-30 05 横顔を見ると・・・ドヒャー!これはすごい!こんなに離れていたのか!

 隼の飛行状態のように、頭を低くした形状であるべきなのに、ずいぶんとヘッドアップしている。多少はペン先が上に反っているのかも知れない。

2008-06-30 06 こちらはペン芯。上がペン先と密着する側、下が外気に接する側じゃ。下側が黒く光っているのは黒漆をかけてあるから。パイロット・ペンステーションで指摘されるまで、拙者は古いインクがこびりついているのだと考えていた。表面がブツブツ状態になってもいるしな・・・

 パイロット以外のペンクリでも、当初はインクがこびりついていると考えていたという噂もある。

 ありがたがろうと考えてみたのだが、どうしても好きになれなくて、漆を剥がしてもらった。今回の患者でもペン芯から一部漆が剥離しているので、思い切って全部剥がすことにした。

2008-06-30 07 こちらがペン芯の横顔。ずいぶんと複雑な形状のペン芯をつくったものじゃ!この凹んだ部分がペン先が柔らかくてもインクが切れない秘密なのかも知れない。

 世界一不可解で魅力的なペン芯!エラボー以外では見かけないので、製造ロットも小さく、かなり割高のペン芯と思われる。

2008-06-30 08 こちらがペン先の表と裏。首軸内に入っている部分は少ないが、ペン先自体がそれほど大型ではないので、特に問題はないと思われる。

 ペン先の裏はほとんど研磨されていない。この方がインクの乗りは良いのではないかな?

 よく見るとペンポイントの先端が開いている。しかも若干背開きになっている。これではインクフローはともかく書き味はガリガリとしてしまう。腹開きにすべくペン先を多少お辞儀させて、スリットの内側を削ることにしよう。それによってお辞儀を強めてもスリットは若干開き、書き出しの掠れも無くなる。

2008-06-30 092008-06-30 10 こちらがそうやって調整したペン先の拡大図。

 まずは首軸にピッタリとペン先が押し込まれているのがわかろう。これでペン先とペン芯の位置関係も固定し、乖離は無くなるはず。しかもお辞儀させたので腹開きも実現でき書き味はぬめぬめとなる。

 そして何より大事な書き出しでの掠れ対策。まずは依頼者の筆記角度【極端に寝かせる】に合わせてペンポイントを研磨。その後エッジをとって秘密兵器でバフ掛け。

2008-06-30 112008-06-30 12 これでペン先とペン芯はピッタリと密着し、ペンポイントの形状も筆記者の筆記角度と一致した。

 インクを入れて書いてみると、まさにエラボーのSoft Broadの本領発揮!【柔らかいのに力強い弾力】を心ゆくまで堪能出来る。この書き味はNew エラボーにも120%伝承されているので、ぜひお試し下され。実に良い感じじゃ!

 歴代学究肌の一族から突然出現したスポーツ選手のような【 エラボー / New エラボー 。一本は持っていて損はないと思われますな。


【 今回執筆時間:4.5時間 】 画像準備1.5h 修理調整1.5h 記事執筆1.5h
画像準備
とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
      
   

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Posted by pelikan_1931 at 07:30│Comments(5) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
しまみゅーらしゃん

最近のは漆を塗っていないのでずいぶんと安くできるのかも知れませんな。
Posted by pelikan_1931 at 2008年08月05日 20:42
> 世界一不可解で魅力的なペン芯!エラボー以外では見かけないので、製造ロットも小さく、かなり割高のペン芯と思われる。

 今日休み時間に色々見て回っていたのですが、あるブログにパイロットの「万年筆部品価格表」というのが載っていまして、エラボーのペン芯の値段は315円!とのことでした。ちなみに、シルバーンのと15号ペン用のペン芯は1,575円とか。

 特異なペン先も、3号ペン(グランセ)と同じ値段(6,300円)とか…。10号ペン(13,650円)の半額以下です。

 エラボーのは、ペン先もペン芯ももっと高価なものだと思ってました。
Posted by しまみゅーら at 2008年08月05日 12:42
yemo しゃん

1機種だけ・・・というところが理解できませんな。
これの大型ニブなんてのは魅力的なんですが・・・
Posted by pelikan_1931 at 2008年07月03日 05:58
実は私も銀座の某店などで逆輸入された
ナミキ・ファルコンを見る度に
「このペン芯は一体どのような形をしておるのだ」
と疑問に思っておりました。
通常の、横から見てペン先と接する面が平らに近い
芯ではペン先との間に空洞が生じて
フローに悪影響を及ぼすでしょうし、
かといってペン先に沿って隆起した不気味な形状の芯は
私の想像力の範疇を遥かに越えていて、またコストの面からも
よもやあるまじと考えていたのですが・・・

いやはや、パイロットの技術は恐ろしいですなあ
Posted by yemo at 2008年07月01日 01:40
エラボー、新旧ともに所有しておりますよ。
柔軟ニブ主力の負傷により、これらを急遽引っ張り出してフル稼働させてます。

もう暑中見舞いの時期ですよ〜。心当たりの皆さん、お楽しみに‥。
Posted by 三日堂 蓮覇 at 2008年06月30日 17:49