
その昔、アメ横中の在庫を全部買ったのではないかと思うくらい集めた事がある。当時は新品で15,000円くらい。今なら同程度の品がさらに安く入手出来る事もある。オークションの魅力はそこであり、また、リスクもそこにある。
依頼人は、このUsed Sheafferをかなり競って落札したらしい。ところが翌日?新品がさらに安い値段で落札しているのを発見したとか・・・
こういう時、届いた物が考えていたよりも状態が良ければあきらめも付く。しかし、そうでなければあちらもこちらも気に入らなくなってしまう。
依頼人は気になっていなかったようだが、この個体はキャップがゆるい。締めたときに多少カタカタする。試しに部品箱にある別の首軸に挿してみたらピタっと決まった。首軸が痩せてしまったか、キャップを止める部分が摩耗していると考えられる。


筆記には問題はないはずだが、上記の経緯があるので、気になって仕方ないのであろう。ここまで状態の良い大きなペンポイントはなかなかSheafferでは見つからないのに・・・惜しいなぁ・・・


ペン芯の素材もエボナイト。とにかくこの時代のSheafferには手抜きがない。MontblancやPelikanが苦境にあえいでいた時代だが、ParkerやSheafferは日本市場では我が世の春を謳歌していたのかな?
会社に勢いがあるときには良い萬年筆が出現する。会社が利益追求を求めてコスト削減【人件費削減:機械化、原材料費削減:コストカット穴・・・】などを始めると、書き味は良くても魅力に乏しい萬年筆になってしまう。拙者は萬年筆に回転寿司の手軽さ、安さ、早さは要求しない。

しかも機構内部の金属を一部溶かしたかのように貼りついて、ピンセットなんぞで抜き取るなんて不可能。歯科用の小さなメスで丹念に硬化したゴムを削り落とすしかない。
しかし、よしんばサックを交換したとしても首軸が痩せているのでは、キャップの収まりは悪い。
そこで首軸を別の物と交換することにした。非常に書き味は良いのだが、尻軸が無いので部品化していた軸があった。そちらの首軸ユニットをこの胴軸と合体させた。


そして元々の首軸ユニットはそのままの状態でお返ししよう。ペン先先端の微妙な曲げなど、将来身につけるべき修理ノウハウ取得の絶好の生贄じゃ。多少研いでもペンポイントはたっぷりある。つい削りすぎてしまう依頼者にはうってつけ!


理想と現実のギャップに悩むのは調整師も同じじゃ・・・まだまだ達観出来ない。
【 今回執筆時間:3.5時間 】 画像準備1.5h 修理調整1h 記事執筆1h
画像準備とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間