今回の依頼品はドルチェビータのオーバーサイズ。2005年8月3日の記事も参照して欲しいが、非常に大柄で卓越したペン芯を持つモデルじゃ。昨今の輸入筆記具カタログからは削除されているが、米国ではバーメイル・モデルがしっかりとカタログに掲載されている。
今回の症状は、インクが切れて仕方がないということ。このオーバーサイズは、軸内に直接インクを入れても使えるというのが売り文句だっかが、実際にそうしてみると不具合もあった。
手の中に握りしめるようにして、ペン先を下に向けているとポタオタとインクが滴る。普通はそんな事はしないが、会議中に無意識に握りしめてしまうこともある。君子危うきに近寄らず・・・ということで自宅専用にしていた。
従って、インクが出ないという症状は予想してなかった・・・てっきりインク漏れだと勘違いしていた。 しかし、ペン先を首軸から抜いてみて愕然とした。これは萬年筆のせいではなく、インクとの相性の問題だと!
ペン先の裏表にべっとりとインクが【煮こごり】のようにこびりついている。こんな状態には初めて遭遇した。画像ではわからないであろうが、インクがプリプリした状態でこびりついている。
ちなみに、指につけて洗ってみるとすぐに皮膚から流れ落ちたので【色彩雫】シリーズではない。
ペン先だけなら、多少フローが悪くなるぐらいですむがペン芯は大問題。なんとペン芯の周囲と、インク溝の中にもインクがベトベトに詰まっている。インクの通り道も、空気の通り道も塞がれている。これではいくら立派なペン芯であってもインクは出ない。
これをインクのせいだと断言は出来ない。所有者は萬年筆についてまったく詳しくない人なので、前に入れていたインクをよく洗わないで、別のインクを入れたかも知れない。メーカーや年代が違うインクを混ぜれば固まるトラブルも考えられる。
人づてでヒアリングしたところによると、国産インクとのことだが、詳しくは覚えていないらしい。どう使ったか、どれくらいの頻度で萬年筆を使ったかも藪の中。少なくともインクの組成の問題ではなく、使い方の問題だと考えられるのだが・・・ こちらがインクを綺麗に清掃し、ペン先調整も施したドルチェビータのオーバーサイズ。実に端正な姿をしている。昨今のユーロの高騰で、非常識な価格になっていなければ、もっともっと売れてしかるべき極上品。ペン先は柔らかく、ペン芯はエボナイト製(実はモンテグラッパの超大型限定品に使われていたのと同じ製造元で設計も同じ)。文句なく世界一魅力的なペン芯じゃ。
ペンポイントは【B】。極太好きの拙者には物足りないが、通常筆記【いたずら書きではなく、文章を書く】には、太字といえどもこの程度が限度であろう。実に優しい筆記感を持っている。
デルタは小さな会社で、当然ペン先の自社生産など出来ないが、ペン先製造会社への指示が的確で、良いペン先を出してくる。ペンポイントの元々の形状もGood!
レバーフィラーのゴムサックがすぐに劣化してしまうという弱点が改良されれば、また是非にも使ってみたい萬年筆メーカーじゃ。もちろんカートリッジ / コンバーター式のものはまったく問題ない!
【 今回執筆時間:4時間 】 画像準備1.5h 修理調整1.5h 記事執筆1h
画像準備とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間