2008年07月07日

月曜日の調整報告 【 Delta ドルチェビータ オーバーサイズ 呼吸困難】

2008-07-07 01 今回の依頼品はドルチェビータのオーバーサイズ2005年8月3日の記事も参照して欲しいが、非常に大柄で卓越したペン芯を持つモデルじゃ。昨今の輸入筆記具カタログからは削除されているが、米国ではバーメイル・モデルがしっかりとカタログに掲載されている。

 今回の症状は、インクが切れて仕方がないということ。このオーバーサイズは、軸内に直接インクを入れても使えるというのが売り文句だっかが、実際にそうしてみると不具合もあった。

 手の中に握りしめるようにして、ペン先を下に向けているとポタオタとインクが滴る。普通はそんな事はしないが、会議中に無意識に握りしめてしまうこともある。君子危うきに近寄らず・・・ということで自宅専用にしていた。

 従って、インクが出ないという症状は予想してなかった・・・てっきりインク漏れだと勘違いしていた。

2008-07-07 022008-07-07 03 しかし、ペン先を首軸から抜いてみて愕然とした。これは萬年筆のせいではなく、インクとの相性の問題だと!


2008-07-07 042008-07-07 052008-07-07 06 ペン先の裏表にべっとりとインクが【煮こごり】のようにこびりついている。こんな状態には初めて遭遇した。画像ではわからないであろうが、インクがプリプリした状態でこびりついている。

 ちなみに、指につけて洗ってみるとすぐに皮膚から流れ落ちたので【色彩雫】シリーズではない。

 ペン先だけなら、多少フローが悪くなるぐらいですむがペン芯は大問題。なんとペン芯の周囲と、インク溝の中にもインクがベトベトに詰まっている。インクの通り道も、空気の通り道も塞がれている。これではいくら立派なペン芯であってもインクは出ない。

 これをインクのせいだと断言は出来ない。所有者は萬年筆についてまったく詳しくない人なので、前に入れていたインクをよく洗わないで、別のインクを入れたかも知れない。メーカーや年代が違うインクを混ぜれば固まるトラブルも考えられる。

 人づてでヒアリングしたところによると、国産インクとのことだが、詳しくは覚えていないらしい。どう使ったか、どれくらいの頻度で萬年筆を使ったかも藪の中。少なくともインクの組成の問題ではなく、使い方の問題だと考えられるのだが・・・

2008-07-07 07 こちらがインクを綺麗に清掃し、ペン先調整も施したドルチェビータのオーバーサイズ。実に端正な姿をしている。昨今のユーロの高騰で、非常識な価格になっていなければ、もっともっと売れてしかるべき極上品。ペン先は柔らかく、ペン芯はエボナイト製(実はモンテグラッパの超大型限定品に使われていたのと同じ製造元で設計も同じ)。文句なく世界一魅力的なペン芯じゃ。

2008-07-07 082008-07-07 09 ペンポイントは【B】。極太好きの拙者には物足りないが、通常筆記【いたずら書きではなく、文章を書く】には、太字といえどもこの程度が限度であろう。実に優しい筆記感を持っている。

 デルタは小さな会社で、当然ペン先の自社生産など出来ないが、ペン先製造会社への指示が的確で、良いペン先を出してくる。ペンポイントの元々の形状もGood! 

 レバーフィラーのゴムサックがすぐに劣化してしまうという弱点が改良されれば、また是非にも使ってみたい萬年筆メーカーじゃ。もちろんカートリッジ / コンバーター式のものはまったく問題ない!



【 今回執筆時間:4時間 】 画像準備1.5h 修理調整1.5h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
  
   


【これまでの調整記事】

2008-07-05   Sheaffer インペリアル 純銀 首軸ユニット交換   
2008-07-02   Montblanc No.149 胴軸交換   
2008-06-30 Pilot 旧エラボー 14K SB ペン芯乖離                     
2008-06-28 Warl Eversharp Red Ripple 14K-Flexible                      
2008-06-25 Pelikan M800 18C-M 現行品最高の書き味に!   
2008-06-23 Marlen スケルトン 18K-M 掠れと出過ぎ   
2008-06-21 Montblanc No.342 14C-EF ひっかかり 
2008-06-18 Sheaffer Tuckaway 14K-XF ペン先曲がり   
2008-06-16 AURORA 88 14K-B 書き出し掠れ解消   
 
2008-06-14 Montblanc No.234 1/2G 14C-OB 斜面調整      
2008-06-11 Montegrappa 八角軸 バーメイル 18K-B 背開き

2008-06-09 Sailor キングプロフィット 21K-M ほんの少し・・・

2008-06-07 Montblanc 50年代No.146 14C-OB 斜面調整 
2008-06-04 Sheaffer PFM ?&? 部品そろえ!    
2008-06-02 性懲りもなく、ドボドボイジャー排斥への挑戦 
2008-05-31 Parker 75 赤ラッカー 18K-B 西の・・・・
2008-05-28 Pelikan 旧M800 18C-F EN+刻印  
2008-05-26 Platinum 純銀軸 18C・WG-Music 段差修正
2008-05-24 Pelikan M250 緑マーブル 14C-M カビと段差     
2008-05-21 Waterman セレニテ・ドラゴン 18C-M インク漏れ 
2008-05-19 Sheaffer Snorkel 14C-XF 内臓はボロボロ? 
2008-05-17 Montblanc No.149 14C-B 上品な書き味へ・・・ 

2008-05-14 Pelikan M400 茶縞 生贄:やりたい放題  
2008-05-12 セーラー・プロフィット・・・女王からの宿題 その2 
2008-05-10 Montblanc No.252 14C-F インクフロー改善
2008-05-07 Pelikan 400NN 14C-F 超硬いピストン
2008-05-05 masahiro エボナイト軸 ペン先交換   
2008-05-03 女王陛下のプラチナ・ミュージック   
2008-04-30 Pelikan M700 18C-F → BB ペン先交換 
2008-04-28 Pelikan M800 18C-3B ペン先交換 
2008-04-26 Montblanc No.644 14C-B ピストントラブル
2008-04-23 Pelikan 400 茶縞 14C-BB 秀逸なペン先  
2008-04-21 ROLEX Pen 14C-M インク吸入せず! 
2008-04-19 Omas ミロード 青軸 18K-M 生贄
2008-04-16 Waterman Gentleman かなりボロボロ!
2008-04-09 Pelikan 100N 14K-O ペンポイントが・・・   
2008-04-07 Montblanc No.264 14C-F ペンポイント段差 
2008-04-05 Pelikan 400NN 茶縞 14C-F ソケット交換 
2008-04-02 Montblanc No.254 14C-BB インク切れ 
2008-03-30 Pelikan M800 螺鈿 18C-M 未使用 & おまかせ 
2008-03-28 Montblanc No.234 1/2G 14C-BB 賽の河原の・・・
2008-03-26 Pelikan 140 緑縞 14C-B ソケット交換
2008-03-24 プラチナ #3776 赤軸・黒軸 ペン先交換
2008-03-22 Montblanc No.254 14C-M ぬるぬるに・・・  
2008-03-19 Waterman ラプソディ Green 18K-F 胴軸痩せ?
    
2008-03-17 Parker 75 18K-M 自然コンコルド 魑魅魍魎  
2008-03-15 Pilot New エラボー 14K-SF スイートスポット形成
2008-03-12 Parker Duofold センテニアル 18K-F 生贄
2008-03-10 Montblanc No.32 14C-B インクが出ない・・・ 
2008-03-08 Montblanc No.256 18C-EF 仏蘭西 珍品!   
2008-03-05 Montblanc No.149 75周年記念 18K-EF 
2008-03-03 Montblanc No.342 14C-F 満身創痍 
2008-03-01 Pelikan 140 緑縞 14C-M ペン芯調整:苦闘3時間 

Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(6) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
monolith6しゃん

キングプロフィットのペン先にはZoomの型が無いようです。
角を研磨しない状態のZoom玉が欲しい・・・

立てると細く書ける必要はなく、常に太く書きたい・・・
Zoomの利用者は皆そうではないかなぁ・・・萬年筆を一本で太くも細くも・・・という人はZoomの利用者には少ないと思われるがなぁ・・・
Posted by pelikan_1931 at 2008年07月13日 19:19
ポンちゃん

いったん地獄まですそ野がひろがれば、その後集約してきます。
それが利用ということなら、それで嵐がおさまりますが、調整趣味ならさらなる地獄が待っています。・・・地獄からの生還者より
Posted by pelikan_1931 at 2008年07月13日 19:15
 以前、これのヴェアメイ・モデルの背開きBニブを調整頂き、誠にありがとうございました。

 結果が恐ろしくてインクを直接胴軸に注入、というのは試みたことはありませんでしたが、なるほど、そういう結果になるのですか。確かに、価格から言っても両用式で、ニブもB止まりというのは、他のオーバーサイズと比べてもちょっと不満ですが、でもセーラーよりはマシ(同じく両用式で、Bニブ止まり)かも。いやいや、セーラーはペンクリで直接頼めば何でもありという感じなので、もしかしてキング・プロフィットをZニブ付きで販売ということは可能かも。だったら買いですね(本来の話題から完全に脱線)。
Posted by monolith6 at 2008年07月08日 19:02
デルタは食わず嫌い?だったのですが、興味が湧いてしまいました。
危険な兆候です。
興味のなかったメーカーに目がいくようになり、書き味も太字柔らかめ
一辺倒だったのが、細字も硬めも好きになって…とだんだん裾野が広がっております。
ああ、この先どうなっていくのか、恐ろしい…。
Posted by ポンちゃん at 2008年07月08日 03:17
Bromfield しゃん

日本にはカートリッジ式をいやがる人も多い。しかもその人たちが一番万年筆を購入する・・・No.149と同様の価格帯でカートリッジ式というのは弱いであろうな・・・
Posted by pelikan_1931 at 2008年07月07日 23:04
ドルチェビータ・オーバーサイズのバーメイル・モデルを昨年、アメリカの万年筆店のインターネットサイトにて、保証つきの新品を入手しました。値段は、日本のディスカウント店でのM800程度の値段でした。

アメリカドルもユーロに対しては値下がりを続けているので、大幅な値上がりをしても不思議でないのですが、この万年筆をはじめ、モンブランなどを含めて、ヨーロッパ製万年筆のアメリカでの実売価格はさほど変わっていないように思います。

万年筆の値段が、アメリカと比べて、日本が割高(ジャパン・プレミアム??)になっているような感じがします。[ちなみに、生活物価は一般的にアメリカの方が高めのように思います。]
Posted by Bromfield at 2008年07月07日 09:10