今回はデュオフォールド・インターナショナルの初代軸。当時、このマーブル・ブルー軸のほかに、マーブルレッド軸、マーブルグリーン軸、黒軸があった。ただし日本ではグリーン軸の萬年筆は売れないというジンクスがあり、マーブルグリーン軸は結局は輸入されなかった。拙者はこのマーブル・グリーン軸の一本目はをニューヨークの文具雑貨店で購入した。まだまだインターネットなんて良く知らなかったころじゃ・・・
月曜日に紹介したセンテニアルと大きさを比べると・・・意外に差が無い。感覚的には相当大きさに差がある感じがしていたのだがな。
軸の径が細いので握った感覚はかなり違う。またペン先の大きさもかなり違う。インターナショナルの方が剛性がやや強いかな?値段はセンテニアルの5万円に対して4万円だった。1990年時点。日本で発売されていたペン先のバリエーションはXF、F、M、B、XXB、BO、XXBO、MI。
1987年10月にデュオフォールド100として発売された時にはインターナショナルはラインナップに無かった。18金ペン先付が40,000円、14金ペン先付が38,000円だった。当時は18金ペン先の方が相当偉い?と思われていたのか、14金ペン先付きを買う人はほとんどいなかったらしく、すぐに姿を消した。
デュオフォールドの宣伝文句の中に、一時【クルミのチップの中でXX時間磨き上げたペン先】・・・なんて表現があった。てっきりそれが【ベルベットの書き味】を実現する秘密だと思っていたが、販売マニュアルには【クルミのチップ云々】は記載されていない。かわりに新開発のペン芯のインク供給システムが優れていることによって【ベルベットの書き味】が実現できると書いてある。
すなわち、安定し、ふんだんなインクフローで書き味を向上させるという王道じゃ。この時代に、主旨を理解できていたら無駄な研磨で何百本も萬年筆をオシャカにする必要はなかったのに・・・と悔やまれてならない。 今回のペン先は矢羽根タイプのペン先で、XXB。パーカーのXXBのペンポイントは実に大きい!いかようにでも研磨出来るだけのキャパシティを持っている。
それが今では、(日本では)Bまでしか入手できない。それこそ萬年筆愛好家にとっては、生殺しのような状態になっている。以前はどのモデルも首軸とペン先は同じだったので、首軸毎交換するシステムがあった。ところが昨今は、軸の色に合わせてペン先の鍍金を塗り分けている。3種類のパターンが存在する。それによってペン先の種類を減らしたのだとしたら、本末転倒もの!しっかりユーザニーズを把握しなくっちゃ!
上の画像のようにスリットは詰まっているわけではない。ただし広大な接紙面積をカバーするには、このスリット幅では心許ない・・・ こちらが横顔。実に美しい・・・
ペン先の折れ方、ペン芯のカーブ、そしてペンポイントの形状・・・実に自然で癖がない。これとくらべるとセーラーの研ぎは研ぎ跡がクッキリとつき、お世辞にもエレガントとは言えない。伝統を継承した研ぎや書き味も大事だが、見映えも重視して欲しいなぁ・・・
ちなみにこの研ぎは、研ぎ師の手による物かな?それとも自動研磨?というのも・・・ 多少の段差はあるものの、あまりに左右対称に研がれている。目安となる直線部分を削り込まないで研ぐにはものすごい時間がかかるはず。また仕上がり具合も試し書きしないとわからない。
実に時間がかかる作業。パーカーにそれだけ多くの研ぎ師が養成されているとも思えない。やはり機械研ぎと考えるのが自然ではないかな?もちろん検品は人間がやっているのかもしれないが・・・
上の図でペンポイント先端の逆ハート型になっている部分が接紙部分。これだけの面積にインクを供給するには、現状のスリット幅では・・・ ということで、スリットを拡げたのがこちらの画像。
多少腹開きになっているのが分かるかな?
ペン芯の先端が、ペン先の矢羽根の彫りの延長上に見える。このあたりのデュオフォールドのこだわりようは半端ではない。我々以上の萬年筆ヲタクが社内にいて、【君らが望む機能や性能を、デュオフォールドの復刻というテーマでやってみよ】との指令を受けて、嬉々として昼夜を徹して楽しんだ結果が、このデュオフォールドだったのではないかな・・・オーディオもそうらしいが、マニアックな世界では、マニアが設計した商品がヒットするらしい。デュオフォールドもご多分に漏れず大ヒットした! ペンポイントは依頼者の書き癖に合わせてかなり削り込んだ。以前の状態からすると、ペンポイントの斜面の角度が変わっているのがわかるかな?最近寝かせて書くようになった。通常はペンを多少左に倒して書くが、ペンの後を持つときには、たまに右傾斜になる・・・というような筆記時の特徴思い出しながら調整するのじゃ。
調整が終わったペン先をそっとインク瓶に浸して、ティッシュで軽く拭い、フッとペンポイントを吹いてから紙に当てて書いてみる・・・筆圧ゼロで紙にインクが着けば良し!ああ気持ち良い!
【 今回執筆時間:4.5時間 】 画像準備1.5h 修理調整1.5h 記事執筆1.5h
画像準備とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間