ブラウン運動は、溶液内の分子衝突によって、微粒子が不規則な動きをする現象で、動きを発見したのがロバート・ブラウンであり、理論を証明したのはアインシュタインらしいが、本文中にアインシュタインの名は出てこない。
なぜ渡部氏がブラウン運動に魅力を感じたかと言えば、もしブラウン運動が永久に発生し続けるならば、沈殿物は溶液中をさまよい、決して底には溜まらないのでは?という期待があったからじゃろ。

渡部氏の凄さは、この方程式からインク化学にとっての啓示を引っ張りだした事。方程式を理屈として理解するだけではなく、自分の仕事に対する解釈を施して紹介している。こういう方程式は、高校生ぐらいの時なら興味津々理解しようとしたであろうな。

【1】ブラウン運動の振幅Aは粘度ηの平方根に反比例する
すなわちブラウン運動は粘度が大きくなるほど遅鈍となり、反対に粘度の小さなサラサラインクほど活発になるということ。
これまではインクの粘度を上げることによって沈殿を防ごうとしていたのが、ブラウン運動を応用するなら、サラサラインクでも沈殿を防げるということになる。渡部氏が最も貴重とする解釈じゃ。
【2】ブラウン運動の振幅Aは粒子の大きさrの平方根に反比例するが粒子の重量には無関係である事
すなわちブラウン運動は溶液中の粒子の図体が大きくなるほど動きがのろくなる!これは粒子の大きさがある一定以下になると、地球引力から解脱してブラウン運動を始めるということ。従って、インクの粒子をある一定以下の大きさにすれば、引力による沈殿を防げることを意味する。粒子の細かいインクを作る意味を教えてくれる部分じゃ。
【3】ブラウン運動の振幅Aは、溶媒1モル中の粒子数Nの平方根に比例する
溶液中のインク粒子が少ないほど沈殿は少ないことを意味している。つまりは少数の粒子でも濃い色が出せる色素があれば、沈殿は防げることになる。これも研究テーマとしてはおもしろかったであろう。
【4】ブラウン運動の振幅Aは、絶対温度Tの平方根に正比例する
すなわち、温度が上がると運動が活発になるということ。温度が上昇すれば溶液の粘度も下がるので、ますます好都合と言うことになるが、逆に温度が下がった場合は?
沈殿だけを考えれば、暖かいが、直射日光の当たらないところに保存するのが良いとなる。
ブラウン運動は自然衰滅するものらしい。渡部氏はブラウン運動の若返り策が無いものか?どうして自然衰滅してしまうのか?・・・と、沸々と興味が湧いてきたようじゃ。次回は【ブラウン運動は自然衰滅】がテーマ!楽しみじゃ!
【過去の記事一覧】
解説【インキと科學】 その3−2
解説【インキと科學】 その3−1
解説【インキと科學】 その2−3
解説【インキと科學】 その2−2
解説【インキと科學】 その2−1
解説【インキと科學】 その1