2008年09月03日

水曜日の調整報告 【 Sheaffer PFM- 幻の18K-B ニブ・・・インク吸入せず 】

2008-09-03 01 今回の依頼品は珍品。少なくとも出逢った人は日本では少ないであろう。Sheaffer好きの拙者も初めて遭遇した。

 ベースモデルはSheafferPFM-の黒軸。こちらはものすごく売れた名品。このPFM-が世界一の万年筆と呼ばれた時期もある。PFMとはPen For Menの頭文字。スノーケル機構を持つ太軸万年筆だが、ものすごく握りやすい。キャップを尻軸に挿した感触も絶妙であり、拙者が最も好きなSheaffer製萬年筆じゃ。PFM-ではなくPFM
-がな。

 依頼品を珍品と呼んだのは18金ペン先が付いていること、しかもBニブ付き!これまで18金ペン先付きのPFMには出逢ったことがなかった。おそらくは仏蘭西向けに販売されていたのであろう。

2008-09-03 02 残念なことにキャップがグニャグニャに曲がっている。ストーブの上にでも誤って置いたのであろう。かわいそう!

 しかし、この曲がっている部分を覗けばボディ自体は極めて綺麗で、傷もほとんど無い。もし自分用として入手したのであれば、未使用のPFM-黒軸(14K-F)の首軸部分に依頼品の首軸を取り付けたであろう。

2008-09-03 032008-09-03 04 ペン先には18金を示すマークがいっぱい刻印されている。

 それにしても首軸埋め込み式のニブの形状は美しい!いったいどうやって樹脂と接合してあるのだろう?と疑問に思うが、スノーケル機構廃止となった以降のインペリアルの金ペンは首軸との接合は・・・接着剤。ひょっとするとPFM-もそうかもしれない。この部分はいままで壊れた事がなく分解した記憶
もないのでようわからん。

2008-09-03 052008-09-03 06 非常に魅力的な【B】ニブ。当時のSheafferはペンポイントまで自社生産していたので、他社と比べて非常に大きな玉だった。それをザックリと腹を削いだだけのような大胆な削り方。

 よくもまぁこんな手抜きの研ぎで・・・と思うのだが、インクを入れて書いてみると超幅広ニブのタッチは滑らかでなかなか良い!ただしインクの出が付いてこないので、とてもヌルヌルとはいかない。やはりスリットの詰まりを解消せねばなるまい。

2008-09-03 07 内部の吸入機構とバネを見て驚いた!新品なのじゃ!スノーケルは内部が金属なので、そこからやられていく。しかるにここが新品とは・・・買ってすぐにストーブ?事故で使わなくなっていたのかな?と思ったが、胴軸内部のリングは摩耗と経年変化で硬くなっていた。ということは、別の個体か修理部品から吸入機構とバネを移植したと思われる。これはラッキー!

 まったく吸入しなかったがOリングを交換したら見事に復活!サック交換不要のスノーケルに出逢ったのは久しぶりじゃ。


2008-09-03 08 ペン先のスリットを左の画像のようにごくわずかだけ開けば、インクフローは極端に良くなる。これがスノーケル式七不思議の一つ。レントゲン写真で見ても、インクは筒の先端部からしかにじみ出さないはず。にもかかわらずインク吸入と同時にインクが出てくるのは何故?

 通常の吸入式ならペン芯をインクに浸すのであたりまえだが、スノーケル式では筒先端しかインク瓶に浸さない。それなのに何故すぐにインクが出るのか?まだまだ解明できないことは多い。

2008-09-03 092008-09-03 10 すばらしく大きなペンポイントであったが、極端に寝かせて書く依頼者の筆記角度とあまりに違う研磨角度・・・

 これでは書いていてストレスが溜まるであろう事は容易に想像される。そこで筆記角度に合わせてかなり研磨した。しかる後に和紙ペーパーで仕上げをすると・・・オー!ヌルヌルになった!これぞSheafferの太字の書き味!

 ついでにキャップのぐにゃぐにゃも研磨して目立たなくした。多少軽減されたぐらいだが変色が消えただけでもだいぶ印象が違う。

 あとは、依頼者がこのペン先に飽きるのを待つばかりじゃ・・・。いままで200本以上の調整報告をしてきたが、欲しいと思った個体はこれが初めて・・・かも知れない。


【 今回執筆時間:5時間 】 画像準備1.5h 修理調整2h 記事執筆1.5h
画像準備
とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間

   

【これまでの調整記事】

2008-09-01 Montblanc No.134 14C-OB ペン先波打ち修整 
2008-08-30 柘製作所 マイカルタ 21K-B ペン先段差   
2008-08-27 1950年代 Montblanc No.144 14C-OBB 生贄 
2008-08-25 1960年代 Montblanc No.72 ペン先曲がり、そして・・・
2008-08-20 Montblanc No.146 14K-F 首軸よりインク漏れ 
2008-08-18 Pelikan M800 現行品 18C-M 軽い引っ掛かり 
2008-08-16 1970年代 Montblanc No.149 14C-F 尻軸ユニット破損 
2008-08-14 NAMIKI Vanishing Point 14K-B インクフロー改善 
2008-08-11 1960年代 Montblanc No.149 14C-M 首軸破損 
2008-08-09 Parker Victory 酔いどれの後始末  
2008-08-06 Montblanc No.149 18C-EF ペン先曲がり   
2008-08-04 Sheaffer インペリアル 14K-F 手が伸びるペンに!      
2008-08-02 Montblanc No.149 14C-F ピストン動かず・・・    
2008-07-30 Pelikan M700 雑巾トレド 18C-M 書き味微調整    
2008-07-28 Montblanc No.144G 14C-OB→B 研ぎ出し    
2008-07-26 Parker Duofold International 18C-XXB 生贄    
2008-07-23 1950年代 Montblanc No.142 14C-M 書き味向上     
2008-07-21 Parker Duofold センテニアル 18C-XXB 生贄       
2008-07-19 1950年代 Montblanc No.146 14C-BB 生贄      
2008-07-17 Pelikan 500N 茶縞 14C-M インクフロー改善      
2008-07-15 Montblanc No.149 14C-M 書き味向上     
2008-07-07 Delta ドルチェビータ オーバーサイズ 呼吸困難  
2008-07-05   Sheaffer インペリアル 純銀 首軸ユニット交換   
2008-07-02   Montblanc No.149 胴軸交換   

2008-06-30 Pilot 旧エラボー 14K SB ペン芯乖離                     
2008-06-28 Warl Eversharp Red Ripple 14K-Flexible                      
2008-06-25 Pelikan M800 18C-M 現行品最高の書き味に!   
2008-06-23 Marlen スケルトン 18K-M 掠れと出過ぎ   
2008-06-21 Montblanc No.342 14C-EF ひっかかり 
2008-06-18 Sheaffer Tuckaway 14K-XF ペン先曲がり   
2008-06-16 AURORA 88 14K-B 書き出し掠れ解消   
 
2008-06-14 Montblanc No.234 1/2G 14C-OB 斜面調整      
2008-06-11 Montegrappa 八角軸 バーメイル 18K-B 背開き

2008-06-09 Sailor キングプロフィット 21K-M ほんの少し・・・

2008-06-07 Montblanc 50年代No.146 14C-OB 斜面調整 
2008-06-04 Sheaffer PFM ?&? 部品そろえ!    
2008-06-02 性懲りもなく、ドボドボイジャー排斥への挑戦 
2008-05-31 Parker 75 赤ラッカー 18K-B 西の・・・・
2008-05-28 Pelikan 旧M800 18C-F EN+刻印  
2008-05-26 Platinum 純銀軸 18C・WG-Music 段差修正
2008-05-24 Pelikan M250 緑マーブル 14C-M カビと段差     
2008-05-21 Waterman セレニテ・ドラゴン 18C-M インク漏れ 
2008-05-19 Sheaffer Snorkel 14C-XF 内臓はボロボロ? 
2008-05-17 Montblanc No.149 14C-B 上品な書き味へ・・・ 

2008-05-14 Pelikan M400 茶縞 生贄:やりたい放題  
2008-05-12 セーラー・プロフィット・・・女王からの宿題 その2 
2008-05-10 Montblanc No.252 14C-F インクフロー改善
2008-05-07 Pelikan 400NN 14C-F 超硬いピストン
2008-05-05 masahiro エボナイト軸 ペン先交換   
2008-05-03 女王陛下のプラチナ・ミュージック   



Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(4) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
Mont Peli しゃん

アロンゆるみ止めは50年代No.149のインク窓のクラックもふさげますので、そちらの利用も考えてみましょう。ああ、生贄が欲しい!
Posted by pelikan_1931 at 2008年09月05日 23:07
nibとshellの境目で微量のインク漏れが起きてsealing
するというような場合は接着剤が必要ですね。
これもRichard Binderが、The Fountain Pen Network
の投稿(PFMのインクもれにshellacを使っても良いか
との問い)に寄せている回答なのですが、shellacの使用
は不可とし、Capt.Tolley社の‘Creeping Crack Cure'
を推奨しています。
Shellacやrosinのような天然素材の成分でないのは気に
かかりますが、Richard Binderが書名付き寄稿で推奨して
いるので、軸の変色などのリスクがないことはテスト済み
であろうと思います。
Posted by Mont Peli at 2008年09月05日 12:02
Mont Peli しゃん

いつも貴重な情報ありがとしゃん!
あれはインジェクション成型でしたか・・・接面がベタついていたので接着剤かと思っていた。
Posted by pelikan_1931 at 2008年09月04日 21:41
Richard Binder によれば、PFMのような inlaid nibは、接着剤で
貼り付けるのではなく、shellを成型する型枠(台座)の凹みに
完成品の nib をセットしておいて射出成型機でプラスチックを流し
込み一体成型するそうです。Sheaffer社のライセンスのようですね。
shellを成型しておいて後付で接着したnibは、inset nibと定義し、
区別しています。
根拠資料は、Richard Binderのペンサイトのglossary(用語集)
の 'inlaid nib'の項。
Posted by Mont Peli at 2008年09月04日 08:24