2008年09月06日

土曜日の調整報告 【 Montblanc No.242G 14C-KF クーゲルの書き味ではない 】

2008-09-06 01 今回の依頼品はMontblancNo.242G。ペン先はクーゲルF。最近、またクーゲルが持ち込まれる事が多くなってきた。

 日本の文字は、横線が細く縦線が太い方が綺麗に見える。従って1950年代BBBのように薄く研がれている方が好ましいはず。一方でアルファベットは(カリグラフィー用途以外では)縦横の線幅の違いが無いほうが書きやすい。基本的に字が曲線から成っているからな。

 何故に日本でクーゲルがもてはやされるのかなぁ・・・と考えていたが、ある時ふと思った。原稿用紙に文字を埋めるのにはクーゲルは良いのかも知れない!

 kugel_149しゃんは、
原稿用紙にペンポイントを置くようにして丸い文字を書くが、その筆記スタイルと流れ出る字のテンポのマッチングが非常に良かった!なるほどクーゲルはこういう筆記スタイルに向くのか・・・

 No.242はキャップトップが【でべそ】に似てカワイイので、万年筆倶楽部【fuente】のでべそ会長も愛用されている。不思議と拙者には縁が薄くて今までにNo.244の壊れたのを一本入手しただけ。No.246No.242も保持した記憶はない。No.246を究極のMontblancと絶賛する人もいるので、縁があれば使ってみたいな。

 No.1XXよりは安価なラインであろうが、構造上トラブル発生確率はNo.1XXシリーズよりは少なそうじゃ。

2008-09-06 022008-09-06 03 さて依頼品のペン先を見てみると、ペンポイントが詰まりすぎている。

 これは元々詰まっているのではなく、中古品の整備を行った業者が拡がってしまったスリットを狭める細工をしたのではないかと考えている。インクの濃淡を出しながらある程度の筆圧をかけて早書きするなら問題はないが、低い筆圧でゆっくり書く場合にはインクが紙に付かないケースが多い。

2008-09-06 042008-09-06 05 こちらは横顔。ありゃ!クーゲルの一番おいしい部分がさらわれている。オブリーク系を除き、クーゲルはペンポイントの腹の一番下の部分を紙に引っかけながら書くと、いわゆる、クーゲルらしい書き味になる。

 ところがその部分が筆記角度に合わせて研磨されて無くなっている。スリットを開けば書き味は良くなるが、クーゲルらしさを味わうには今一歩・・・

 そこで多少の書き味を犠牲にして、クーゲルらしい味付けに変えてみることにした。萬年筆を何本も使う人は、それぞれの万年筆の微妙な味付けの違いを楽しむようなことろもあるのじゃ。

2008-09-06 072008-09-06 08 こちらが調整後のペンポイント。上の調整前のペンポイント拡大図と比べると、スリットが開いていること以外にも気付く点があろう。

 それはペンポイント頂点の形状が丸形から、多少角張った形に変わったこと。ホンの少しの変化だが、これで書き味はだいぶ変化する。どこにスイートスポットがあるのかわからない、変化に乏しい書き味から、スイートスポットの所在が明確な多少メリハリの効いた書き味になる。

2008-09-06 092008-09-06 10 ペンポイントは相当研磨した。クーゲルの味を出すため、斜めに削られていたペンポイントの角度を立てるように研磨した。

 多少のグリグリ感がないとクーゲルらしくない・・・ということで若干の書き味悪化を狙ったのだが、なかなか難しい。良化させる手法は身につけているが、悪化させる方法はそれほどニーズがないので毎回試行錯誤。

 今回はグリグリ感を出すのに、ペン先を多少お辞儀させた。書き味を柔らかくするにはペン先を起こすのだが逆に寝かせることにした。結果、当初よりはクーゲルに近い筆記感になったし、インクフローも良く、実用に耐えうる書き味になった!

 最近はVintage物は一本も使っていないし、ほとんど所有もしていない。その分、調整過程でいろんな萬年筆の書き味を堪能させてもらっている。1960年以前の万年筆は率直に言って【体はガタガタ】じゃ。メイン戦力として現場でガシガシ働かせるのはかわいそう。ただしゆったりとした雰囲気の中で、筆記を楽しみながらカサカサになった精神のケアをするには最適の書き味を提供してくれる!いたわりながら使ってあげて欲しいものじゃ・・・


【 今回執筆時間:5.5時間 】 画像準備2h 修理調整2h 記事執筆1.5h
画像準備
とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間

   


【これまでの調整記事】

2008-09-03 Sheaffer PFM- 幻の18K-B ニブ・・・インク吸入せず       
2008-09-01 Montblanc No.134 14C-OB ペン先波打ち修整       
2008-08-30 柘製作所 マイカルタ 21K-B ペン先段差   
2008-08-27 1950年代 Montblanc No.144 14C-OBB 生贄 
2008-08-25 1960年代 Montblanc No.72 ペン先曲がり、そして・・・
2008-08-20 Montblanc No.146 14K-F 首軸よりインク漏れ 
2008-08-18 Pelikan M800 現行品 18C-M 軽い引っ掛かり 
2008-08-16 1970年代 Montblanc No.149 14C-F 尻軸ユニット破損 
2008-08-14 NAMIKI Vanishing Point 14K-B インクフロー改善 
2008-08-11 1960年代 Montblanc No.149 14C-M 首軸破損 
2008-08-09 Parker Victory 酔いどれの後始末  
2008-08-06 Montblanc No.149 18C-EF ペン先曲がり   
2008-08-04 Sheaffer インペリアル 14K-F 手が伸びるペンに!      
2008-08-02 Montblanc No.149 14C-F ピストン動かず・・・    
2008-07-30 Pelikan M700 雑巾トレド 18C-M 書き味微調整    
2008-07-28 Montblanc No.144G 14C-OB→B 研ぎ出し    
2008-07-26 Parker Duofold International 18C-XXB 生贄    
2008-07-23 1950年代 Montblanc No.142 14C-M 書き味向上     
2008-07-21 Parker Duofold センテニアル 18C-XXB 生贄       
2008-07-19 1950年代 Montblanc No.146 14C-BB 生贄      
2008-07-17 Pelikan 500N 茶縞 14C-M インクフロー改善      
2008-07-15 Montblanc No.149 14C-M 書き味向上     
2008-07-07 Delta ドルチェビータ オーバーサイズ 呼吸困難  
2008-07-05   Sheaffer インペリアル 純銀 首軸ユニット交換   
2008-07-02   Montblanc No.149 胴軸交換   

2008-06-30 Pilot 旧エラボー 14K SB ペン芯乖離                     
2008-06-28 Warl Eversharp Red Ripple 14K-Flexible                      
2008-06-25 Pelikan M800 18C-M 現行品最高の書き味に!   
2008-06-23 Marlen スケルトン 18K-M 掠れと出過ぎ   
2008-06-21 Montblanc No.342 14C-EF ひっかかり 
2008-06-18 Sheaffer Tuckaway 14K-XF ペン先曲がり   
2008-06-16 AURORA 88 14K-B 書き出し掠れ解消   
 
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2008-05-26 Platinum 純銀軸 18C・WG-Music 段差修正
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Posted by pelikan_1931 at 08:00│Comments(3) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
stylustip しゃん

高倍率顕微鏡は昔、子供用を持っていたのですが、ペンを手持ちではほとんど撮影不可能でした。顕微鏡側もペン側も固定し、なおかつ光も一様でないとペンポイントなど光ってDetailがわかりません。

ライティングの基本が出来ていない拙者には使いこなせませんでした・・・
Posted by pelikan_1931 at 2008年09月08日 06:03
師匠...感謝 <(_ _*)> デス!

ちょ〜っと思わぬ方向に.....
Posted by yakumo at 2008年09月06日 21:50
師匠、ご無沙汰しています。
最近、変節してしまいROTRING のROLL-KULIばかり使っています。
球極のKugel?なんて親父駄洒落はおいといて、
ペンポイントの横顔ですが、研磨調整の変化を見ようとすると、
スキャナーの解像度の限界に近づいてきている気がします。
(web用に圧縮しているから?)
最近USB接続の高倍率顕微鏡を買おうかと逡巡しています。
もし宜しかったら、一緒にドボンしませんか?
Posted by stylustip at 2008年09月06日 16:20