2008年09月24日

水曜日の調整報告 【 1950年代 Montblanc No.146G 14C-B クレーター 】

2008-09-24 01 今回の依頼品も状態としては極めて良い!1950年代後期Montblanc No.146G厚いペン芯のモデル。

 最近1950年代No.146を立て続けに調整したが、No,14Xシリーズの中では非常にバランスが良い。重量バランスだけではなく、プロポーションや価格性能比などもGood!

 欠点の一つは経年変化で首軸を胴軸から外すのに苦労すること。これだけはいつでもヒヤヒヤもの。本国独逸ではヘアードライヤーを使うらしいが、拙者はまだお湯しか試したことはない・・・

2008-09-24 022008-09-24 03 今回の症状だが、左の画像のとおり、ペン先が詰まりすぎている。スリット左右のニブの寄りが強すぎてインクがほとんど出ない。それどころか、寄りが強すぎて、書き終わった状態の段差のまま元に戻らないほど・・・

 せっかくの巾広ニブなのにインクフローがカスカスでは面白くない。なをこの当時のニブはBやBB、BBBといっても横に太いだけでペンポイントの厚みは薄い。ほとんどペン先の金の厚さと同程度じゃ。従って書かれた文字はカリグラフィーっぽくなる。これが漢字を書くにはピッタリ!

 拙者はスタブやイタリック系のニブが好きなので、この時代のBやBBには憧憬を抱いてしまう。飽きやすいのも事実だが・・・


2008-09-24 042008-09-24 05 横からの画像で見ると、なんと金の厚みよりペンポイント先端部が薄い

 エッジは腹と頭の両方にあり、どう書いても引っ掛かってしまう。インクフローを上げるだけでも書き味があがるが、ここまでエッジが立っていると多少の研磨は必要!

 ということで研磨をはじめて見ると・・・ペンポイントクレーターのようにザラザラ!研磨しても滑らかにならない!ペンポイントの素材か製法に問題があるのかな?

 実はこの時代のNo.14Xのもう一つの欠点がこれ。ペンポイントの素材自体がザラザラしていること!戦後の物資難でイリジウムやルテニウムの調達先を変えたのかも知れないが
、製造ロット?によって粒度にバラツキがある。今回調整した4本No.146は全て研磨しても滑らかにならないペンポイントであった。

2008-09-24 06 もっとも調整の最終段階で、ツルツルに磨いたペンポイントに多少粗いペーパーで傷を付けた方が書き出しの掠れが少ないのはご存じの通り。

 それをやる必要がないという点では、少なくとも太字系にとっては粒度が粗い事は問題とはならない。むしろ好都合なほどじゃ。

 ペン先を外して綺麗にエボ焼けを落とし、スリットを多少拡げた。このスリットを拡げる作業はそう簡単ではない。ペン先を反らせばスリットは簡単に開くが、そうするとペン芯とペン先の間に隙間が出来てしまう。1950年代前期のフラット・ペン芯
であればお湯につければ如何様にでも変形させられるのでペン先のカーブに追従させられるが、この厚いペン芯だとそうはいかない。

 そこで根気よくエラを拡げたり、スリットを削ったりする作業を繰り返す・・・小一時間はかかる地味な作業。この行程で生産性を追求してはならない。十分にルーペで表面も観察しながら研磨し、必要があれば金磨き布で表面を綺麗に磨くのじゃ。

2008-09-24 072008-09-24 08 こちらが首軸に装着した状態。これくらいスリットがひらけば、原稿用紙の上では気持ち得インクが出てくる。

 紙が変わると書き味も変わるので絶対的な評価は出来ないが、Montblancのロイヤルブルーを入れれば惚れ惚れする書き味になる。調整後の試し書きの瞬間が最高に楽しい!何度も感動を味わえる。


2008-09-24 092008-09-24 10 この萬年筆を立てて書いたら気絶しそうなほど書き味が悪そうだが、幸いにして依頼者は寝かせ持ち!従って使うのは腹の部分のみ。

 そこで腹を徹底的に研磨した。さらにペン芯を多少後退させ、お辞儀していたニブの猫背を多少弱くした。これでタッチは激変する。紙にペン先をおくとふぅわっとスリットが開くようになれば、もう手放せなくなる。あとは縦太横細の字形が好きかどうかじゃ。

 1950年代No.146300ドル以内で確実に入手出来ていた時代が懐かしい。ずいぶんと調整を楽しませてもらった・・・と過去形にしようかと思ったが、最近の萬年筆研究会【WAGNERでの1950年代No.146の流行具合を見ると、まだまだ楽しめそうじゃ。

 個人的には1950年代はNo.144の方が好きだが、金属部品が小さくなるだけ故障も多い。後世に残すにはやはりNo.146が最適だろうな・・・


【 今回執筆時間:3時間 】 画像準備1h 修理調整1h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
            
    

【これまでの調整記事】

2008-09-22 Pelikan 500NN 黒縞軸? 14C-EF 超段差!    
2008-09-20 Montblanc No.149 18C-F ペン先曲がり復活!       
2008-09-17 1950年代 Montblanc No.144 14C-KM 封印の呪い        
2008-09-15 WARL 金張り Pencil Set 14C-M ペン芯が緩い・・・            
2008-09-13 1950年代 Montblanc No.146 14C-KOB → KB 却下!
2008-09-10 1950年代 Montblanc No.144 14C-KEF クーゲルらしく 
2008-09-08 梅田阪急限定ブライヤー 21K-M・・・シャリシャリ感撲滅
2008-09-06 Montblanc No.242G 14C-KF クーゲルの書き味ではない 
2008-09-03 Sheaffer PFM- 幻の18K-B ニブ・・・インク吸入せず
2008-09-01 Montblanc No.134 14C-OB ペン先波打ち修整
2008-08-30 柘製作所 マイカルタ 21K-B ペン先段差   
2008-08-27 1950年代 Montblanc No.144 14C-OBB 生贄 
2008-08-25 1960年代 Montblanc No.72 ペン先曲がり、そして・・・
2008-08-20 Montblanc No.146 14K-F 首軸よりインク漏れ 
2008-08-18 Pelikan M800 現行品 18C-M 軽い引っ掛かり 
2008-08-16 1970年代 Montblanc No.149 14C-F 尻軸ユニット破損 
2008-08-14 NAMIKI Vanishing Point 14K-B インクフロー改善 
2008-08-11 1960年代 Montblanc No.149 14C-M 首軸破損 
2008-08-09 Parker Victory 酔いどれの後始末  
2008-08-06 Montblanc No.149 18C-EF ペン先曲がり   
2008-08-04 Sheaffer インペリアル 14K-F 手が伸びるペンに!
2008-08-02 Montblanc No.149 14C-F ピストン動かず・・・
2008-07-30 Pelikan M700 雑巾トレド 18C-M 書き味微調整 
2008-07-28 Montblanc No.144G 14C-OB→B 研ぎ出し    
2008-07-26 Parker Duofold International 18C-XXB 生贄
2008-07-23 1950年代 Montblanc No.142 14C-M 書き味向上
2008-07-21 Parker Duofold センテニアル 18C-XXB 生贄
2008-07-19 1950年代 Montblanc No.146 14C-BB 生贄
2008-07-17 Pelikan 500N 茶縞 14C-M インクフロー改善
2008-07-15 Montblanc No.149 14C-M 書き味向上
2008-07-07 Delta ドルチェビータ オーバーサイズ 呼吸困難  
2008-07-05   Sheaffer インペリアル 純銀 首軸ユニット交換   
2008-07-02   Montblanc No.149 胴軸交換   

2008-06-30 Pilot 旧エラボー 14K SB ペン芯乖離
2008-06-28 Warl Eversharp Red Ripple 14K-Flexible
2008-06-25 Pelikan M800 18C-M 現行品最高の書き味に!
2008-06-23 Marlen スケルトン 18K-M 掠れと出過ぎ 
2008-06-21 Montblanc No.342 14C-EF ひっかかり 
2008-06-18 Sheaffer Tuckaway 14K-XF ペン先曲がり 
2008-06-16 AURORA 88 14K-B 書き出し掠れ解消

2008-06-14 Montblanc No.234 1/2G 14C-OB 斜面調整 
2008-06-11 Montegrappa 八角軸 バーメイル 18K-B 背開き

2008-06-09 Sailor キングプロフィット 21K-M ほんの少し・・・

2008-06-07 Montblanc 50年代No.146 14C-OB 斜面調整 
2008-06-04 Sheaffer PFM ?&? 部品そろえ!    
2008-06-02 性懲りもなく、ドボドボイジャー排斥への挑戦 
2008-05-31 Parker 75 赤ラッカー 18K-B 西の・・・・
2008-05-28 Pelikan 旧M800 18C-F EN+刻印  
2008-05-26 Platinum 純銀軸 18C・WG-Music 段差修正
2008-05-24 Pelikan M250 緑マーブル 14C-M カビと段差     
2008-05-21 Waterman セレニテ・ドラゴン 18C-M インク漏れ 
2008-05-19 Sheaffer Snorkel 14C-XF 内臓はボロボロ? 
2008-05-17 Montblanc No.149 14C-B 上品な書き味へ・・・ 

2008-05-14 Pelikan M400 茶縞 生贄:やりたい放題  
2008-05-12 セーラー・プロフィット・・・女王からの宿題 その2 
2008-05-10 Montblanc No.252 14C-F インクフロー改善
2008-05-07 Pelikan 400NN 14C-F 超硬いピストン
2008-05-05 masahiro エボナイト軸 ペン先交換 
2008-05-03 女王陛下のプラチナ・ミュージック 

Posted by pelikan_1931 at 07:30│Comments(2) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
monolith6しゃん

素材が粗いだけで硬くはないので、本物イリジウムの期待は削がれてしまった・・・

細字にはこういうペンポイントは無さそうなんですが・・・
とはいえ、細字なんてほとんど持ったことありませんが。
Posted by pelikan_1931 at 2008年09月24日 19:54
 このペン・ポイントはもしかしたら、本物のイリジウムを使っているのでは?だとすると、サンド・ペーパーではなく、砥石の出番かも知れませんね。
Posted by monolith6 at 2008年09月24日 12:37