2008年09月29日

月曜日の調整報告 【 Montblanc Dumas 18K-M 新品 】

2008-09-29 01 今回の依頼品はMontblancDumas。発売に当たってサインが子デュマの物であった事がわかり、あわてて回収しようとしたが、値上がりを期待して回収に協力しなかった販売店も多かったらしい。

 期待に反して子デュマ萬年筆は相場が上がらず、それに引くきずられてか、真性デュマも一向に相場が上がらなかった。

 胴体の懲り方はヘミングウェイの比ではない!すばらしい出来なのに人気がない・・・萬年筆の人気というのも不思議じゃ。


2008-09-29 02 ヘミングウェイは当時のNo.149と同じペン先だった。従ってBBなどのペン先にも簡単に付け替えられた。またペン芯の径も、直前のNo.149と同じだったのでエボナイト製ペン芯に付け変える事も出来た。

 拙者はコストカット穴のない18金BBペン先二段式エボナイト製ペン芯を装填してヘミングウェイを使っていた。

 Dumasが発売されたときも、さっそく購入して同じ事をしようとしたが、こいつはペン芯の径が太くなっていた!従ってエボナイト製ペン芯が使えない!これでがっかりしてDumasはすぐに手放してしまった。

 またペン先の剛性もヘミングウェイよりも弱くなり、筆圧をかけた時の戻りが鈍いような気もした。細工はしやすいが筆記では物足りない書き味だったのが、それほど人気が出なかった原因かも知れない。

 もっとも筆圧をかけないで書く人にとっては、ある程度の重さのある胴体は、筆記にかかる負担が少なく好都合でもあったのだろう。

 依頼者からの要望は【新品ですが、普段使いにするので、ゴツゴツ感なく書けるように・・・】とのこと。多少スリットを拡げ、スイートスポットを作れば一丁上がり!と思ったのだが、そうは甘くなかった。

2008-09-29 032008-09-29 04 こちらが横顔。Dumasからは、ペン芯とペン先の位置関係が固定されるようになった。これによって未熟な作業員であっても設定にムラが出ることはなくなったが、微調整をしようというマニアには物足らない萬年筆になってしまった。

 従って萬年筆研
究会【WAGNER】のようなマニア集団では驚くほど持っている人が少ない。以前は持っていたが手放したという会員も多い。上等な書き味には出来るが、極上の書き味は味わえなくなってしまった・・・

2008-09-29 05 このペン芯を見てもわかるとおり、ヘミングウェイ前よりは相当に進化している。Montblancの宿命と言われたインク漏れなどは完璧に改善されているはず。

 気になるのはペン芯の左端がやや細くなっている事。これが原因で以前よりはインクフローの急激な変化に追随するレスポンスが遅れているのではないかと批判する人もいる。

 想像で言っているだけなのだが、そういう現象が発生しているから疑いをもたれているのであろう。拙者は不具合を認識できるほど長期間はDumasを使っていないので、悪い印象は持っていない。

 川窪萬年筆の店主が、【ヘミングウェイよりずっと良い萬年筆】とつぶやいていたのは覚えている。

2008-09-29 062008-09-29 07 左が調整前、右が調整後のペン先じゃ。ある程度の清掃を施してからスリットを拡げた。拡げるのにかかった時間は0.5秒。クィ・・・でおしまい。このあたりが柔いペン先の利点。力を入れればすぐに変形してくれる。所有者にとっては困りものだが、製造者や調整師の生産性は飛躍的に高い。

2008-09-29 08 中字なのでドバドバとインクが出る必要はない。また依頼者は筆圧が低く、筆記時のポンプ運動によるインクフローを期待できないので、毛細管現象が働くように先端に行くほどスリットが狭くなるように調整した。

 拙者はペン先が大好き!こういうペン先の拡大画像を見る度に【萬年筆はペン先じゃ】と思ってしまう。だからこそ胴体と色味が違うメディチのペン先は許せないのじゃ。

2008-09-29 092008-09-29 10 こちらが横顔。Mではあるがペン先をペリカンのシャイベン(Scheibenのように研いでみた。

 普段使い用はヌラヌラではいけない。筆記に溺れて会議中でも耳がおろそかになってしまう。書くことにストレスを与えず、かつ、興奮もせず・・・という書き味が必要じゃ。

 仕事で萬年筆を使わない拙者にとっては、一番悩ましい調整。経験していない書き味を想像しながら作り上げていく・・・・ちょちょいのちょいで終わるはずだったが思いのほか時間がかかってしまった。


【 今回執筆時間:5時間 】 画像準備1.5h 修理調整2.5h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
      
   


【これまでの調整記事】

2008-09-27 1950年代 Montblanc No.146G 14C-BB 柔らかく・・・    
2008-09-24 1950年代 Montblanc No.146G 14C-B クレーター       
2008-09-22 Pelikan 500NN 黒縞軸? 14C-EF 超段差!      
2008-09-20 Montblanc No.149 18C-F ペン先曲がり復活!       
2008-09-17 1950年代 Montblanc No.144 14C-KM 封印の呪い        
2008-09-15 WARL 金張り Pencil Set 14C-M ペン芯が緩い・・・            
2008-09-13 1950年代 Montblanc No.146 14C-KOB → KB 却下!
2008-09-10 1950年代 Montblanc No.144 14C-KEF クーゲルらしく 
2008-09-08 梅田阪急限定ブライヤー 21K-M・・・シャリシャリ感撲滅
2008-09-06 Montblanc No.242G 14C-KF クーゲルの書き味ではない 
2008-09-03 Sheaffer PFM- 幻の18K-B ニブ・・・インク吸入せず
2008-09-01 Montblanc No.134 14C-OB ペン先波打ち修整
2008-08-30 柘製作所 マイカルタ 21K-B ペン先段差   
2008-08-27 1950年代 Montblanc No.144 14C-OBB 生贄 
2008-08-25 1960年代 Montblanc No.72 ペン先曲がり、そして・・・
2008-08-20 Montblanc No.146 14K-F 首軸よりインク漏れ 
2008-08-18 Pelikan M800 現行品 18C-M 軽い引っ掛かり 
2008-08-16 1970年代 Montblanc No.149 14C-F 尻軸ユニット破損 
2008-08-14 NAMIKI Vanishing Point 14K-B インクフロー改善 
2008-08-11 1960年代 Montblanc No.149 14C-M 首軸破損 
2008-08-09 Parker Victory 酔いどれの後始末  
2008-08-06 Montblanc No.149 18C-EF ペン先曲がり   
2008-08-04 Sheaffer インペリアル 14K-F 手が伸びるペンに!
2008-08-02 Montblanc No.149 14C-F ピストン動かず・・・
2008-07-30 Pelikan M700 雑巾トレド 18C-M 書き味微調整 
2008-07-28 Montblanc No.144G 14C-OB→B 研ぎ出し    
2008-07-26 Parker Duofold International 18C-XXB 生贄
2008-07-23 1950年代 Montblanc No.142 14C-M 書き味向上
2008-07-21 Parker Duofold センテニアル 18C-XXB 生贄
2008-07-19 1950年代 Montblanc No.146 14C-BB 生贄
2008-07-17 Pelikan 500N 茶縞 14C-M インクフロー改善
2008-07-15 Montblanc No.149 14C-M 書き味向上
2008-07-07 Delta ドルチェビータ オーバーサイズ 呼吸困難  
2008-07-05   Sheaffer インペリアル 純銀 首軸ユニット交換   
2008-07-02   Montblanc No.149 胴軸交換   

2008-06-30 Pilot 旧エラボー 14K SB ペン芯乖離
2008-06-28 Warl Eversharp Red Ripple 14K-Flexible
2008-06-25 Pelikan M800 18C-M 現行品最高の書き味に!
2008-06-23 Marlen スケルトン 18K-M 掠れと出過ぎ 
2008-06-21 Montblanc No.342 14C-EF ひっかかり 
2008-06-18 Sheaffer Tuckaway 14K-XF ペン先曲がり 
2008-06-16 AURORA 88 14K-B 書き出し掠れ解消

2008-06-14 Montblanc No.234 1/2G 14C-OB 斜面調整 
2008-06-11 Montegrappa 八角軸 バーメイル 18K-B 背開き

2008-06-09 Sailor キングプロフィット 21K-M ほんの少し・・・

2008-06-07 Montblanc 50年代No.146 14C-OB 斜面調整 
2008-06-04 Sheaffer PFM ?&? 部品そろえ!    
2008-06-02 性懲りもなく、ドボドボイジャー排斥への挑戦 
2008-05-31 Parker 75 赤ラッカー 18K-B 西の・・・・
2008-05-28 Pelikan 旧M800 18C-F EN+刻印  
2008-05-26 Platinum 純銀軸 18C・WG-Music 段差修正
2008-05-24 Pelikan M250 緑マーブル 14C-M カビと段差     
2008-05-21 Waterman セレニテ・ドラゴン 18C-M インク漏れ 
2008-05-19 Sheaffer Snorkel 14C-XF 内臓はボロボロ? 
2008-05-17 Montblanc No.149 14C-B 上品な書き味へ・・・ 

2008-05-14 Pelikan M400 茶縞 生贄:やりたい放題  
2008-05-12 セーラー・プロフィット・・・女王からの宿題 その2 
2008-05-10 Montblanc No.252 14C-F インクフロー改善
2008-05-07 Pelikan 400NN 14C-F 超硬いピストン
2008-05-05 masahiro エボナイト軸 ペン先交換 
2008-05-03 女王陛下のプラチナ・ミュージック 
Posted by pelikan_1931 at 06:00│Comments(1) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
 私も師匠に調整していただき、モンブランのセピアを入れて使っていますが、紙質を選ぶペン先と感じています。エヌビー社のエレガンス便箋はトレース感がマッチしていて書きやすいです。しかし満寿屋の便箋で使うと、砂を咬んだような筆感が伝わり、書こうとしたことを忘れてしまうほどです。高級で滑らかな紙質とは相性が悪いようです。ペン先の柔軟性と全体の剛性感のアンバランスさがあるように感じます。オフロードタイヤを硬いサスペンションで舗装路を走るような感覚です。しかしロデアとは相性がよいので日常使いには意外とよいのではないでしょうか。
 この万年筆の華やかさは職場の殺伐とした中でメモ用紙に使うには・・・。こうしたアンバランスさが不人気の理由かもしれないですね。
Posted by 快ショク快ペン at 2008年09月29日 07:14