2008年10月01日

水曜日の調整報告 【 1950年代 Montblanc No.146G 14C-M ペン先干渉 】

2008-10-01 01 今回は【生贄】ということでの依頼。【生贄】の場合は拙者の好きなように調整して良いルールになっている。

 とはいえ、自分の萬年筆になるわけではないので、素材を与えられて【存分に料理して下さい。ただし食べるのは私です】と言われているようなもの。調整の行程を楽しむ事が生き甲斐の人間にしか理解できないルールじゃろう。

 獲物は1950年代のNo.146Gじゃ。書き味に納得できないとのことなので、まずはじっくりと現状把握をしてみることにした。

 毎週金曜日に掲載している【ドクターズルール】にもあるように、診断が最も重要。現状把握が出来ればあとは作業だけ。この診断に最も時間がかかるのじゃ。

2008-10-01 022008-10-01 03 何の破綻もなく美しいペン先!難点はスリットが詰まりすぎていること。この強烈な寄りではインクはほとんど出てこないだろう。

 それにしても何故ここまで強く寄ってしまったのか?調整をされた痕もないし、そもそもそれほど使われた形跡もない逸品じゃ。

2008-10-01 042008-10-01 05 横顔を見て原因が特定出来た。必要以上にペン先がお辞儀している。

 こういう場合、ペン先とキャップの天井が干渉している可能性が高い。もしそうであれば、キャップの内側に夥しいインクのミイラが付着しているはず・・・

2008-10-01 06 ということで天冠とクリップを外して洗ってみると、インク滓がモクモクと出てきた。やはりキャップ天井にペンポイントが干渉して曲がっていたのじゃ。

 それではと、ペン先をもう少し押し込もうとしたがビクともしない。ペン先を外してペン芯だけを首軸に突っ込んでみて原因がわかった。ペン芯がごくわずか太すぎて首軸内部まで入っていかない!

 ということは元々の不良か、修理店で当初
と違うペン芯を装着したかじゃ。いずれにせよペン芯が入るところまで入れて出荷した・・・キャップ天井とペン先の干渉をチェックしていなかったということじゃ。

 そこでペン芯の根元を耐水ペーパーで研磨して、首軸内部まで押し込めるようにした。

2008-10-01 072008-10-01 08 以前と比べるとペン先に彫られたMontblancという刻印の位置が少し奥になっているのがわかろう。これで干渉は無くなった。

 ただ念のために天冠底(=キャップ内部天井)も0.5个曚標λ瓩靴討いた。これで完璧!

 スリットも開いておいたので筆圧をかけないでも、すっと書き出しでインクが乗る。そして実はもうひと味の調整も加えている。

2008-10-01 092008-10-01 10 比較するとわかるが、ペン先のお辞儀が無くなっている。これはペン芯を反らし、さらにペン先も微調整を加えながら反らせ気味に少しずつ曲げていった。

 これで書き味は激変!ゴツゴツした感じがフェザータッチに変化した。カリグラフィーのような文字が筆圧をかけずにスラスラと書ける。極楽のよう!

 しかも最近調整した1950年代のNo.146のペンポイントは素材からしてザラザラのものが多かったが、今回のMニブでは非常に細かい粒度のペンポイントであった。

 素材の鮮度や季節によって料理方法を変えるように、調整も素材の生まれ、育ちを考えながら好きに仕上げていく【生贄方式】は実に楽しい!

 しかし【生贄方式】だけでは腕は上がらない。無理難題に直面し、冷や汗をかくことによっても調整師は育つ。ライブでやるペンクリと工房でやる加工。その二つのバランスを保つのが楽しく調整を続けられるコツだと考えている。


【 今回執筆時間:4時間 】 画像準備1.5h 修理調整1.5h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
     
   

【これまでの調整記事】

2008-09-29 Montblanc Dumas 18K-M 新品    
2008-09-27 1950年代 Montblanc No.146G 14C-BB 柔らかく・・・     
2008-09-24 1950年代 Montblanc No.146G 14C-B クレーター       
2008-09-22 Pelikan 500NN 黒縞軸? 14C-EF 超段差!      
2008-09-20 Montblanc No.149 18C-F ペン先曲がり復活!       
2008-09-17 1950年代 Montblanc No.144 14C-KM 封印の呪い        
2008-09-15 WARL 金張り Pencil Set 14C-M ペン芯が緩い・・・            
2008-09-13 1950年代 Montblanc No.146 14C-KOB → KB 却下!
2008-09-10 1950年代 Montblanc No.144 14C-KEF クーゲルらしく 
2008-09-08 梅田阪急限定ブライヤー 21K-M・・・シャリシャリ感撲滅
2008-09-06 Montblanc No.242G 14C-KF クーゲルの書き味ではない 
2008-09-03 Sheaffer PFM- 幻の18K-B ニブ・・・インク吸入せず
2008-09-01 Montblanc No.134 14C-OB ペン先波打ち修整
2008-08-30 柘製作所 マイカルタ 21K-B ペン先段差   
2008-08-27 1950年代 Montblanc No.144 14C-OBB 生贄 
2008-08-25 1960年代 Montblanc No.72 ペン先曲がり、そして・・・
2008-08-20 Montblanc No.146 14K-F 首軸よりインク漏れ 
2008-08-18 Pelikan M800 現行品 18C-M 軽い引っ掛かり 
2008-08-16 1970年代 Montblanc No.149 14C-F 尻軸ユニット破損 
2008-08-14 NAMIKI Vanishing Point 14K-B インクフロー改善 
2008-08-11 1960年代 Montblanc No.149 14C-M 首軸破損 
2008-08-09 Parker Victory 酔いどれの後始末  
2008-08-06 Montblanc No.149 18C-EF ペン先曲がり   
2008-08-04 Sheaffer インペリアル 14K-F 手が伸びるペンに!
2008-08-02 Montblanc No.149 14C-F ピストン動かず・・・
2008-07-30 Pelikan M700 雑巾トレド 18C-M 書き味微調整 
2008-07-28 Montblanc No.144G 14C-OB→B 研ぎ出し    
2008-07-26 Parker Duofold International 18C-XXB 生贄
2008-07-23 1950年代 Montblanc No.142 14C-M 書き味向上
2008-07-21 Parker Duofold センテニアル 18C-XXB 生贄
2008-07-19 1950年代 Montblanc No.146 14C-BB 生贄
2008-07-17 Pelikan 500N 茶縞 14C-M インクフロー改善
2008-07-15 Montblanc No.149 14C-M 書き味向上
2008-07-07 Delta ドルチェビータ オーバーサイズ 呼吸困難  
2008-07-05   Sheaffer インペリアル 純銀 首軸ユニット交換   
2008-07-02   Montblanc No.149 胴軸交換   

2008-06-30 Pilot 旧エラボー 14K SB ペン芯乖離
2008-06-28 Warl Eversharp Red Ripple 14K-Flexible
2008-06-25 Pelikan M800 18C-M 現行品最高の書き味に!
2008-06-23 Marlen スケルトン 18K-M 掠れと出過ぎ 
2008-06-21 Montblanc No.342 14C-EF ひっかかり 
2008-06-18 Sheaffer Tuckaway 14K-XF ペン先曲がり 
2008-06-16 AURORA 88 14K-B 書き出し掠れ解消

2008-06-14 Montblanc No.234 1/2G 14C-OB 斜面調整 
2008-06-11 Montegrappa 八角軸 バーメイル 18K-B 背開き

2008-06-09 Sailor キングプロフィット 21K-M ほんの少し・・・

2008-06-07 Montblanc 50年代No.146 14C-OB 斜面調整 
2008-06-04 Sheaffer PFM ?&? 部品そろえ!    
2008-06-02 性懲りもなく、ドボドボイジャー排斥への挑戦 
2008-05-31 Parker 75 赤ラッカー 18K-B 西の・・・・
2008-05-28 Pelikan 旧M800 18C-F EN+刻印  
2008-05-26 Platinum 純銀軸 18C・WG-Music 段差修正
2008-05-24 Pelikan M250 緑マーブル 14C-M カビと段差     
2008-05-21 Waterman セレニテ・ドラゴン 18C-M インク漏れ 
2008-05-19 Sheaffer Snorkel 14C-XF 内臓はボロボロ? 
2008-05-17 Montblanc No.149 14C-B 上品な書き味へ・・・ 

2008-05-14 Pelikan M400 茶縞 生贄:やりたい放題  
2008-05-12 セーラー・プロフィット・・・女王からの宿題 その2 
2008-05-10 Montblanc No.252 14C-F インクフロー改善
2008-05-07 Pelikan 400NN 14C-F 超硬いピストン
2008-05-05 masahiro エボナイト軸 ペン先交換 
2008-05-03 女王陛下のプラチナ・ミュージック 
Posted by pelikan_1931 at 06:00│Comments(4) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
t_stone しゃん

これほど劇的に書き味が変わった例も珍しい!
大切にな。
Posted by pelikan_1931 at 2008年11月07日 07:26
師匠

発送ありがとうございました。 早速使っています。 やはり50年代のタッチはいいですね。
この2ヶ月、タッチを忘れそうになっていましたが、改めてこのタッチ。 
手放せそうにありません。 老朽化もあまりみられない個体ですので、今後末永く使っていこうと思います。



Posted by t_stone at 2008年11月05日 23:52
t_stone しゃん

お楽しみに。現在南半球にいるのですぐには送れませんが・・・
Posted by pelikan_1931 at 2008年10月03日 06:43
師匠

いつも、診断の細やかさ、確実さに感心しながら読ませていただいています。
ためになる情報ありがとうございます。
先日のBBの調整とともにありがとうございました。 
Posted by t_stone at 2008年10月02日 00:45