2008年10月08日

水曜日の調整報告 【 1950年代 Montblanc No.146 14C-KOB 何か変? 】

2008-10-08 01 今回の依頼品は、またしても1950年代No.146。いままでに多くの症例を紹介したが、同じ物は二つと無い。この時代のモデル・バリエーションがいかに多かったかに驚かされる。それだけNeedsが多かったのであろう。

 また、拙者と同い年くらいの萬年筆が、これほど良い状態で残っているのには、物を大事にする国民性だけではなく、湿気が少ない気候も影響しているのではないかなぁ・・・。高温多湿の日本の環境では、素材の劣化や、インク漏れの頻発で、途中で捨てられてしまったものが多いはず。

 この個体はキャップリングの緩みなどの外観上の劣化がほとんど無い。日本の気候の中ではこういう状態では残り得ないはず。良いボディをみつけたものじゃ。

2008-10-08 022008-10-08 03 こちらはペン先の拡大画像。例によってスリットは詰まっており、かなり筆圧をかけないとインクは出てこない。

 また書き味も酷い。スイートスポットがまったく作られていないので、日本文字を書くには適していない気がする。元々クーゲルニブが何故出来たのか?と想像してみるに・・・

 当時のB、BB、BBBはイタリックの文字を書くことを前提に作られており、横細縦太の字になる。漢字を書くのであれば実に綺麗なのだが、英語を速書きするのには向いていない。カリグラフィーではゆっくりと書くのが基本。そこで縦横の字巾が一緒の文字を書くペンポイントとしてクーゲルが生まれたのであろうと想像している。

 このペン先を観察していて、なんか変だなぁ・・と感じた。その理由はすぐにわかった。ペン先が金一色じゃ!この時代のNo.14Xのペン先はすべからくバイカラーであったはず。どうやら鍍金した銀色部分がすり切れてしまったらしい。

2008-10-08 042008-10-08 05 こちらが横顔。これぞクーゲルの真の姿!というほどに典型的なクーゲル型のペンポイントじゃ。

 ただしかなりタッチは硬い。どうやらホンの少しペン先がお辞儀するような力が内部にかかっているような気がする。筆圧をかけると、かなり反発を感じる。これはクーゲル本来の書き味ではない。

 筆圧をかけると、世界のナベアツ3の倍数の時のような感じで、ペン先が開くのがクーゲルポイントの妙味!この状態では多少もの足りない。

2008-10-08 06 ソケットから外してみると、バイカラー鍍金部分はしっかりと残っている。これほどまでにクッキリと差があると言うことは、ペン先をサンドペーパーで削ってバイカラーを落としたとしか考えられない。そういえば、上のペン先表面の拡大図では、表面が必要以上にザラつている。おそらく表面にひっかき傷でも出来て、それを消そうとしてこうなってしまったのかも知れない。

2008-10-08 07 こちらは表面を金磨き布で丹念に磨いた後で、スリットを開いた状態。まるで新品のような輝きじゃ!

 金磨き布で磨くにはコツがある。布を上から被せて、布を動かすのではなく、10僂曚匹旅發気里△訛の端を金磨き布二枚重ねで覆い、その上にペン先を力一杯擦りつけると効果絶大。ぜひお試しあれ。


2008-10-08 082008-10-08 09 こちらが首軸にとりつけた後の画像。しっかりとスリットは開いている。

 調整前よりもペン先が前に出ているが、ちゃんとキャップ内部に入るかどうかはテスト済。テストしないでねじ込むと、ガリっと音がして、キャップの天井にペンポイントがぶつかり、無惨に曲がってしまうので要注意!

 多少ペン先を反らせ気味に改造し、それに伴ってペン芯も多少反らせた。熱湯に入れて、クィっと力を入れれば、ペン芯は簡単に反る。微調整はペン先を首軸にセットした状態で熱湯につけて、ルーペで確認して、冷水につける・・・という作業を繰り返せばよい。今回は一発で決まった。

2008-10-08 10 ペンポイントにスイートスポットを作り込むと・・・見違えるようにソフトな書き味になった。

 依頼事項の中には、オブリーク形状のペンポイントをノン・オブリークにして欲しいとの要望があったが、これは却下。実はオブリーク形状であっても筆記角度に合わせて研げば何の支障もない。クーゲルというある意味アグリーな形状のペンポイントであれば、さらにオブリークが付加された方が面白い。また将来左利きの使い手に遭遇するかも知れない。その場合に備え、形状は維持して研ぎだけで対応することにした。


【 今回執筆時間:3.5時間 】 画像準備1.5h 修理調整1h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
   
   
【これまでの調整記事】

2008-10-06 1990年代 Montblanc No.146 14K-BB 激変      

2008-10-04 1980年代 Montblanc No.149 14C-BB   
2008-10-01 1950年代 Montblanc No.146G 14C-M ペン先干渉    
2008-09-29 Montblanc Dumas 18K-M 新品      
2008-09-27 1950年代 Montblanc No.146G 14C-BB 柔らかく・・・      

2008-09-24 1950年代 Montblanc No.146G 14C-B クレーター       
2008-09-22 Pelikan 500NN 黒縞軸? 14C-EF 超段差!      
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2008-09-17 1950年代 Montblanc No.144 14C-KM 封印の呪い        
2008-09-15 WARL 金張り Pencil Set 14C-M ペン芯が緩い・・・            
2008-09-13 1950年代 Montblanc No.146 14C-KOB → KB 却下!
2008-09-10 1950年代 Montblanc No.144 14C-KEF クーゲルらしく 
2008-09-08 梅田阪急限定ブライヤー 21K-M・・・シャリシャリ感撲滅
2008-09-06 Montblanc No.242G 14C-KF クーゲルの書き味ではない 
2008-09-03 Sheaffer PFM- 幻の18K-B ニブ・・・インク吸入せず
2008-09-01 Montblanc No.134 14C-OB ペン先波打ち修整
2008-08-30 柘製作所 マイカルタ 21K-B ペン先段差   
2008-08-27 1950年代 Montblanc No.144 14C-OBB 生贄 
2008-08-25 1960年代 Montblanc No.72 ペン先曲がり、そして・・・
2008-08-20 Montblanc No.146 14K-F 首軸よりインク漏れ 
2008-08-18 Pelikan M800 現行品 18C-M 軽い引っ掛かり 
2008-08-16 1970年代 Montblanc No.149 14C-F 尻軸ユニット破損 
2008-08-14 NAMIKI Vanishing Point 14K-B インクフロー改善 
2008-08-11 1960年代 Montblanc No.149 14C-M 首軸破損 
2008-08-09 Parker Victory 酔いどれの後始末  
2008-08-06 Montblanc No.149 18C-EF ペン先曲がり   
2008-08-04 Sheaffer インペリアル 14K-F 手が伸びるペンに!
2008-08-02 Montblanc No.149 14C-F ピストン動かず・・・
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2008-07-23 1950年代 Montblanc No.142 14C-M 書き味向上
2008-07-21 Parker Duofold センテニアル 18C-XXB 生贄
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2008-07-07 Delta ドルチェビータ オーバーサイズ 呼吸困難  
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2008-06-07 Montblanc 50年代No.146 14C-OB 斜面調整 
2008-06-04 Sheaffer PFM ?&? 部品そろえ!    
2008-06-02 性懲りもなく、ドボドボイジャー排斥への挑戦 
Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整