2008年10月13日

月曜日の調整報告 【 Pelikan M805 18C-F 上品な書き味に 】

2008-10-13 01 今回の依頼品は長らく利用した萬年筆の微調整。どんなに完璧に調整してある萬年筆といえども、時間が経過すると筆圧や衝突によって調整が狂ってくる。萬年筆とは、本来は自分で微調整をしながら良い状態を保っていくものじゃ。

 車に定期点検、空気圧のチェックが必要なように、萬年筆にも定期点検が望ましい。本当に愛用するとは、ひたすら書き続けることではなく、たまには休ませたり、スリットのゴミを除去したり、可能であれば、分解して再アセンブルするなどして、常に良い状態を保ちながら使うことだと考えている。

2008-10-13 022008-10-13 03 ペン先をつぶさに観察すると、ペン芯とペン先の位置関係、首軸に挿す位置・、スリットの開き具合など、ほぼ完璧な状態を保っている。

 これはプロの仕事に間違い無い。メーカー出荷時点でここまで完璧な状態はありえない。

2008-10-13 042008-10-13 05 横顔を見ると、筆圧でペン先がペン芯から浮き気味になっている。また長年の使用でペン先が斜めに削り取られたような状態に磨耗している。

 この状態では多少下品な書き味になっているのは否めない。しかしエッジが立っているだけでは、ここまで品が無い書き味にはならない。もうひとつ理由がある。それは・・・

2008-10-13 06 左右の段差!左画像のように左右に段差がある。依頼人はこれまで多少左に捻って書いていたが、最近では右捻りが出てきて、ペン先もそのように傾いてしまった。

 ところがエッジの調整は左捻りの時のままなので、納得のいかない書き味になったように感じているのだろう。これはエッジを多少丸めればよい、書き癖の移行期にはえてして書き味が劣化したような感覚を受ける。何も知らないころの拙者は、そういう時にむやみに研磨して萬年筆を何本もダメにした・・・

 最近、他人の萬年筆の調整を通じて、やっとからくりがわかってきた。実は自分の書き癖は正面から見えないので、変化に気付かない。しかも過信がある。結果として自分の萬年筆の調整に一番時間がかかってしまうのじゃ・・・。床屋が自分の髪を刈るのが苦手なのといっしょかな?

2008-10-13 07 このペン芯には加工が施されている。上から見ると、溝の根元と先端部にナイフで溝が補強されている。また何度かの調整の際に、途中の溝もナイフで軽くさらわれている痕跡がある。実はこういう微調整は調整して販売する店で行われるケースが多い。各メーカーの萬年筆を長年取り扱って、欠点を知り尽くした人の調整であろう。

2008-10-13 08 驚いたことに、溝だけではなく、ペン芯の根元にも加工が施されている。通常は左図下のようになっているペン芯の根元が、削り落とされている。

 これを削り落としたことによって、その部分に溝が無くなって、そこに新たな溝を作ったというのがひとつ上の画像の説明じゃ。

 では何のために削り落としたのか?拙者も初めて見たので想像でしかないが、やはりインクフローの向上か、筆記途中のインク切れ対策であろう。おそらくは後者・・・

 拙者はヘビーライターではないので、筆記途中のインク切れ息切れ呼吸困難発作とも呼ぶ】を経験したことは無い。が、資格試験受験者カルテを書く人にとっては致命傷となりかねない症状。このあたりは先人の知恵にすがるしかないが、今回の調整はそのヒントになるのかもしれない。実効性の検証は必要だろうがな・・・

2008-10-13 092008-10-13 10 こちらが微調整後の状態。ペン芯は極わずか後退させた。0.5舒焚爾琉榮亜スリットから見えるペン芯とペン先の模様の位置を合わせるのが拙者の趣味なので今回は完璧にあわせておいた。

 またペン先とペン芯を密着させるため、ペン芯先端部を研ぎ、さらに上に反らせた上で熱湯調整!ペンポイントは酷使前の状態を想像しながら丸めた。

 こういう微調整は実に楽しい。また元々すばらしい調整が施された萬年筆の微調整というのは、作業が楽なうえ仕上がりも良い。まるで自分の腕が上がったかのような錯覚を覚える。実に気持ちよい!


【 今回執筆時間:3時間 】 画像準備1h 修理調整1h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
            

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Posted by pelikan_1931 at 07:00│Comments(2) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
怠猫しゃん

文鎮王子は二の腕に血管が盛り上がっていますが、あれは重い萬年筆で鍛えているからでしょうな・・・
Posted by pelikan_1931 at 2008年10月14日 00:04
>可能であれば、分解して再アセンブル

掃除をしようとペン先叩き出したら、元に戻せず、
猫@狼狽したことがあります。
マエストロの方々は“ひょい”と嵌めてますが...
いやぁ熟練とは恐ろしい...
ゴム板一枚で抜き差しできる国産は素敵です。
なにせ猫は万年筆より重いものを持ち上げたことがない?!ので(^^;
Posted by 怠猫 at 2008年10月13日 13:36