2008年10月29日

水曜日の調整報告 【 Sheaffer Snorkel 14C-F サック硬化 】 そしてポロリ・・・

2008-10-29 01

 今回は非常に綺麗なSheafferのスノーケル。まだネットが無かった時代にMint物がアメ横に出た時には一本5.5万円したピンク軸。アラブ首長国連邦に買いに行った事もあったが、その時にはピンク軸はなかった・・・

 こういうパステル・カラーが大好きでスノーケルは数え切れないほど買ったが、すぐに吸入機構がダメになるので、何本も、何十本も壊して分解し、構造も直し方も100%理解している。従ってこの修理はすぐに終わるはずだった。実際すぐに終わってしまった・・・

2008-10-29 022008-10-29 03 ペン先は元々書き味がよい。この時代のSheafferはペン先の素材にほとんど弾力がないのにタッチは柔らかい。細字の書き味としては5段階評価の5を与えても良いと考えている。

 ただ、この個体はスリットが開きすぎかな・・・。毛細管現象が働く限界を超えてスリットが開いているようじゃ。後でこれは多少詰めておいた方が良い。下に向けて書いている間は問題ないが、たまにペン先を上に向けて考える習慣がある人などにはインク切れのリスクがある。

2008-10-29 042008-10-29 05 スノーケルは良く知っているつもりでいたが、左の画像を見て驚いた。

 ペン先が上に反っていると思っていたが、反っているように見えるだけで、途中からお辞儀の角度が浅くなっているだけじゃった!ペン芯自体がお辞儀するように設計されたスノーケルモデルでは、上に反らさなくても、途中からお辞儀角度を浅くするだけで、あの柔らかなタッチを演出する事も出来るのか!

 確かにペンを持って書いている際には、平行から上に反っているか、お辞儀の角度が浅くなっているかは関係は無いわな・・・

2008-10-29 06 尻軸を回してみるとスノーケル機構はすんなりと出てくる。しまうには多少トルクが高いがこの部分には問題は無さそう。

 ただしインクは全く吸わない。サックの硬化とOリングの硬化が原因なのは、中を空けなくともわかる。いままで何十本も修理していると触れば原因は想像が付く。外れる事はほとんど無いし、外れると嬉しい!また新た知識を得ることが出来る。

 スノーケルの先端部は非常に危険。安価モデルでは斜めではなく、直角に切断しているが、高級モデルでは鋭角にカットしている。これで子供が目を刺して失明したため、それ以降の製造を中止したと言われているが・・・本当かいな?

 これだけ複雑で壊れやすい機構と、ちょっぴりのインク吸入量・・・メンテナンスコストを考えれば、スノーケルが販売側やユーザ側から見放されていったのではないかと考える事もある。拙者も書き味の良さで気に入っているだけであって、機構が好きな萬年筆というわけではない。サック交換も実は非常にやりにくい。

2008-10-29 07 こちらが内部機構の一部だが、左側の穴の部分に黒く見えているのがゴムサック。カチカチに硬化している。

 インクを長期間入れていて、インクが乾くとそれがゴムサックに付着して、ゴムを硬化させる。そうなるとサックを交換するしかないが、その際は、細い金属棒を、左側頂点の穴からツッコミ、トンカチでたたき出すのじゃ。

 その際にスノーケルの筒をホールドしている中間部分を温めて拡げておくとやりやすい。ただし、その部分の内部はゴムなので炎は厳禁。100度のお湯が安全。
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 左側が胴軸に入っていたOリング。腐ってはいないがかなり硬化していた。耐久年数はあと数年。この際、新しいOリングと交換することにした。こちらは非常に弾力がある新品なので10年は大丈夫!

 スノーケルの修理で、いちばん作業時間にバラツキが出るのが、Oリングの交換。たまにまったく滑って嵌められないことがある。先の曲がったピンセットで時計修理技師のようにルーペを目に挟んでやるのだが、上手く嵌らないとイライラする。今回は30秒ほどで終了!早かった!

2008-10-29 09 さて次はサック交換と言うことで、スノーケルの筒を抜き、ゴムをたたき出そうとして部品を摘んでなにげに捻ったら・・・ポロっと部品が二つに割れた。目が点・・・

 初めての出来事でビックリ!切断面を見るとサビの上に瞬間接着剤のようなものが付いている。ああ、以前の所有者が錆びて折れた部分を瞬間接着剤で修理して使っていたのか・・・

 ゴムはご覧のとおりボロボロになっている。まだましな方かも・・・金属と一体化して上の部品の中にこびりついて取れないケースも多々ある。

 これがスノーケルが市場から姿を消し、現在でも海外では二束三文で取引されている原因だと考えている。

 これほどまでに魅力的で、すばらしい書き味の萬年筆も、修理出来る人が付近にいないとただのガラクタになってしまう。海外オークションものは、ほぼ全て修理が必要。Mint物でもOリングは硬化しているケースが多い。注意しなされ。

2008-10-29 10 スノーケルの部品は山のようにあるおもって部品箱を捜してみたが、なんと一番上の部品だけがない。他は全て修理しても、この部品が無ければ修理は完成しない。

 幸いどのスノーケルの部品も同じような物なので、そのうち手にはいるじゃろう。依頼者にはあと半年ほど待ってもらうことにしよう。

 拙者はピンク、薄緑、薄青の3本の軸の金キャップを持っていたが、今はピンクだけが残っている。高級品でピンク軸というのは、スノーケルしか無いのではないかな?非常に珍しい色だし、書き味は絶妙なので、ぜひ復活させてあげたいと考えている。


【 今回執筆時間:3時間 】 画像準備1.5h 修理調整0.5h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
   
   


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Posted by pelikan_1931 at 08:00│Comments(5) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
syokubutsuen99 しゃん

おお、ありがたい。筒だけで結構です。お湯で煮ればゴムサック滓は多少剥がれやすくなりますので。
Posted by pelikan_1931 at 2008年11月02日 01:37
スノーケル部品あります。
写真上部の金属部品なら丁度1本あります。
以前修理したものの残部品です。
いつか使うだろうと思って残しておきましたが、
万年筆が1本再生できるなら、それで誰かがニッコリなら
喜んで提供します。
私も最近その恩恵にあずかった者ですので・・・。

ただし、若干硬化気味のゴムサックが入ったままなのと
注射針(これこそがスノーケルか?)凹が何箇所かありますので交換の必要あり。
もっとも、この部分は不要なので問題なしですかね。

明日持って行きたいのですが、法事で参加できません。
次回ということでご勘弁を。
(N様の講義を聴けずとても残念です)
Posted by syokubutsuen99 at 2008年11月01日 22:58
>アラブ首長国連邦に買いに行った

わかります♪
卵殻もそのころですか?
まぁ猫もエジンバラまで...

Posted by 怠猫 at 2008年10月30日 01:26
>>アラブ首長国連邦に買いに行った

万年筆を買いに海の彼方へ
なんと素晴らしい執念
コレクターの鑑というべきですな
Posted by yemo at 2008年10月29日 13:30
 LivedoorのBlogが不調で、復活したところにこの記事。もの凄いことをお願いしてしまったのですね。
 また、適当なシュノーケルが見つかれば生贄として差し出します。半年でも1年でも待ちますので、じっくりお願いします。
Posted by つきみそう at 2008年10月29日 08:28