2008年11月05日

水曜日の調整報告 【 1950年代 Montblanc No.142 14C-B ? 】

2008-11-05 01 今回の依頼品は1950年代のNo.142。ペン先は14C-Bと思われるが尻軸にはOMとの刻印がある。おそらくは付け替えたものであろう。普通はMと書いてあってもOBとかのケースが多い。独逸ではともかく、他の地域ではオブリークはあまり人気が無いのでな。

 依頼内容は太字ならではの書き味に!とのこと。使われなくなってから久しいと見えて、ピストン機構以外はかなりくたびれている。

2008-11-05 022008-11-05 03 こちらがペン先の拡大図。どう見てもBであり、OMをBに研ぎ直した物とは思えない・・・

 もっとも独逸には何十人もの研ぎが出来るプロがいるので、卓越した腕を持つ人がやったのかも知れないが・・・

 それにしてもペン先のスリットが詰まっている。もしインクが毛細管現象だけで出てくるのであれば、スリットは狭い方が良いが、【萬年筆と科學】に述べられているように、ペン先左右の開閉によるポンプ運動で供給される事を考えればスリットは開いている事も必要。このあたりの理屈は経験則でしか整理できていないが、いつかは体系だった理論をメーカーが発表してくれることを願っている。

2008-11-05 042008-11-05 05 こちらが調整前のペン先。黄砂のようなブツブツはインク滓であろうか?

 幸いなことにペン先はほとんど摩耗していない。軸のくたびれ具合とあまりに差があるので、おそらくはペン先を未使用に近い物と交換したのであろう。はたしていつ頃だったのかなぁ・・・

2008-11-05 062008-11-05 07 ソケットから外した調整前のペン先。ペン芯よりもかなり曲率が小さいカーブにペンポイントの反対側が絞られている。従ってペン先がペン芯から浮こうとする力が強く働いている。

 こういう場合、ペン先に余分な力が働いているので、書き味の巾も狭くなってしまうような気がする。そこでツボ押し棒でやや開いて緊張感をほぐしてからペン芯と合わせることにした。

 またペン芯と分離した段階で、酷いほどの左右の段差があった。おそらくはペン芯と一緒にソケットに挟んだまま段差調整をしようとして無理に力をかけたのであろう。ペンポイントはそろっていたとしても、不要な力がペン先内に溜まっているので書き味が損なわれるような気がする。

 ペン先の調整は出来るだけペン芯と分離した状態でやって欲しい。特に時間がいくらでもある素人調整の場合はな・・・

2008-11-05 08 こちらが全ての緊張感を取り除いた上で、首軸にセットしたペン先。スリットも適度に開いているのでインクフローはドバドバ!久しぶりのドバドバ調整じゃ。

 なをペン芯の溝にあるインク滓には十分注意すること!インクが途中で途切れる要因のかなりの割合が、エボ焼けとインク溝の詰まり!今回は交換したペン先だったせいか、エボ焼けはほとんど無かった。

2008-11-05 092008-11-05 10 こちらが完成状態の横顔。ペンポイントの腹の部分が若干滑らかになっているのがわかろう。

 こうすることによって、夢のような書き味になる。小さな柔らかいニブ、しかも厚さが薄いニブの場合は、まさにヘロヘロの書き味。これは大型ニブでは絶対に味わえない。

 ぐぅわんぐぅわんという大きなうねりのある柔らかさではなく、ピコピコと小さな振幅の柔らかさ。ただし感触ははるかに小さなニブの方が心地良い。モンテローザに嵌る人はほとんどこのピコピコに参ってしまうのじゃ。

 同じような書き味は当時の独逸や英国、伊太利亜製の万年筆でも味わえる。それが主流だった時代が一変したのはボールペンの登場からだろう。

 しかし今や筆圧で書く油性ボールペンは、筆圧不要の水性ボールペンなどに変わろうとしている。ということは近い将来、万年筆のペン先も再び柔らかくなり、書き味を楽しめる時代が来るかも知れない。

 考えようによっては、萬年筆は筆記具としての終焉にいるのではなく、まさにこれから花が咲こうとしているのかも知れない。



【 今回執筆時間:6時間 】 画像準備2.5h 修理調整2h 記事執筆1.5h
画像準備
とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
    
   


【これまでの調整記事】

2008-11-01 Pelikan M800 18C-M → 18C-B(PF) 交換しての仮説   
2008-10-29 Sheaffer Snorkel 14C-F サック硬化、そしてポロリ・・・
     
2008-10-13 Pelikan M805 18C-F 上品な書き味に      
2008-10-08 1950年代 Montblanc No.146 14C-KOB 何か変?     
2008-10-06 1990年代 Montblanc No.146 14K-BB 激変      
2008-10-04 1980年代 Montblanc No.149 14C-BB   
2008-10-01 1950年代 Montblanc No.146G 14C-M ペン先干渉    
2008-09-29 Montblanc Dumas 18K-M 新品      
2008-09-27 1950年代 Montblanc No.146G 14C-BB 柔らかく・・・      

2008-09-24 1950年代 Montblanc No.146G 14C-B クレーター       
2008-09-22 Pelikan 500NN 黒縞軸? 14C-EF 超段差!      
2008-09-20 Montblanc No.149 18C-F ペン先曲がり復活!       
2008-09-17 1950年代 Montblanc No.144 14C-KM 封印の呪い        
2008-09-15 WARL 金張り Pencil Set 14C-M ペン芯が緩い・・・            
2008-09-13 1950年代 Montblanc No.146 14C-KOB → KB 却下!
2008-09-10 1950年代 Montblanc No.144 14C-KEF クーゲルらしく 
2008-09-08 梅田阪急限定ブライヤー 21K-M・・・シャリシャリ感撲滅
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2008-09-03 Sheaffer PFM- 幻の18K-B ニブ・・・インク吸入せず
2008-09-01 Montblanc No.134 14C-OB ペン先波打ち修整
2008-08-30 柘製作所 マイカルタ 21K-B ペン先段差   
2008-08-27 1950年代 Montblanc No.144 14C-OBB 生贄 
2008-08-25 1960年代 Montblanc No.72 ペン先曲がり、そして・・・
2008-08-20 Montblanc No.146 14K-F 首軸よりインク漏れ 
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2008-07-21 Parker Duofold センテニアル 18C-XXB 生贄
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2008-07-15 Montblanc No.149 14C-M 書き味向上
2008-07-07 Delta ドルチェビータ オーバーサイズ 呼吸困難  
2008-07-05   Sheaffer インペリアル 純銀 首軸ユニット交換   
2008-07-02   Montblanc No.149 胴軸交換   


Posted by pelikan_1931 at 08:00│Comments(0) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整