2008年11月10日

月曜日の調整報告 【 Montblanc No.149 14C-EF ペン先交換 】

2008-11-10 01 依頼品は1980年代のNo.149。クリップはなで肩で、ペン芯はエボナイト製切れ込み有りだが、首軸先端はラッパ型。時代の切れ目に位置しているのかもしれないが美しさは削がれている。

 今回の依頼事項はペン先を別の物と交換して欲しいというもの。はて、その理由は?

2008-11-10 02 上から見る限り、ペン先に特に問題はなさそうじゃ。多少スリットが詰まっているが、細字ならインクが出ないという事はない。

 またエラの張った柔らかそうな形をしているし、実際書き味も悪くない。オリジナルではここまでの書き味は出ないので、誰かが調整を施しているのは事実であろう。ではどこに不満が?

2008-11-10 032008-11-10 04 理由がこれ!右側の画像を見るとわかるように、ずいぶんと背中側を削っている。

 こういう裏表同じような角度での研磨は、あまり意味がない。背側で書くときには、ペン芯が上から押さえる形になるので、筆圧をかけるほどインクが出ない為、自然と筆圧が下がり、それにともなって紙へのひっかかりも少なくなる。従って、エッジ処理さえ少しやれば、研磨はほとんど必要ない。

 依頼者はルーペでシゲシゲとペンポイントを観察するタイプらしく、この醜さに我慢できなくなったらしい。その気持ち、よくわかる・・・

2008-11-10 05 こちらが代替用に依頼者が持ち込んだペン先。実は拙者のペンクリで清掃しておいたのだが、どうしても胴軸の内径とペン芯+ペン先の外周が合わなかったので、持ち帰って再検討することにしたのじゃ。

 同じ時代のペン先に見えるが、元々のペン先よりも薄く、首軸に突っ込んでもスカスカになってしまう。自宅にあるどのペン芯と交換してみてもダメ!

2008-11-10 06 そこで胴体を交換することにした。首軸先端がラッパ型の胴体から、1980年代前半までの古い胴軸。これに差し込んで見たところ、ぴったりと決まった。

 調べてみると、当初の依頼品はペン芯を首軸に差し込む位置が180度ずれていた!この時代のラッパ型首軸の中には、首軸内部にペン芯のスリットにあわせて止めるストッパーがあり、その位置がずれるとインクフローが悪化するのだが、まさにその状態になっていた。180度ずらすと多少はきつくなるので、ぐらぐらを防ぐ為に180度ひっくり返して挿入していたのじゃ。ということは、元々の組み合わせはオリジナルではなく、ニコイチということになる。

 今回の胴軸交換でやっと正しい状態になった。元々あったものは、キャップと吸入機構とペン芯だけ・・・でペン先と胴軸は交換したことになる。まてよ、萬年筆の魂はどこにあるのだろう?胴軸+ペン先交換と呼ぶのが正しいのか、キャップ+吸入機構+ペン芯交換と呼ぶのが正しいのか・・・

2008-11-10 07 ともあれ、組み合わせを換えたNo.149はバッチリ!

 グラツキもなく、インクフローも良い。薄くて大きなペン先で細字の場合は、ペン先のスリットが多少詰まっていても筆記角度が合っていれば書き出しでの掠れやインク切れは発生しにくい。

 紙に触れた瞬間にスリットが萬年筆の自重で開くので、スリット巾に神経質になる必要もない。気にするべきは、そこから先の滑らかさ調整を、いつあきらめられるかじゃ。早々に終わらせないと、すぐにペンポイントが無くなってしまう。


2008-11-10 082008-11-10 09 今回は交換用に差し出されたペン先のペンポイントが非常に良かった!こういうナタ型の綺麗な研ぎにはなかなか遭遇しない。

 ペン芯とペン先のカーブを合わせるのにかなり時間がかかったが、結果オーライ!実に満足のいく状態となった。


【 今回執筆時間:8時間 】 画像準備2.5h 修理調整4h 記事執筆1.5h
画像準備
とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間

    


【これまでの調整記事】

2008-11-08 HAKASE Jade Green 14K-F  インクフロー絞り     
2008-11-05 1950年代 Montblanc No.142 14C-B ?     
2008-11-01 Pelikan M800 18C-M → 18C-B(PF) 交換しての仮説   
2008-10-29 Sheaffer Snorkel 14C-F サック硬化、そしてポロリ・・・
     
2008-10-13 Pelikan M805 18C-F 上品な書き味に      
2008-10-08 1950年代 Montblanc No.146 14C-KOB 何か変?     
2008-10-06 1990年代 Montblanc No.146 14K-BB 激変      
2008-10-04 1980年代 Montblanc No.149 14C-BB   
2008-10-01 1950年代 Montblanc No.146G 14C-M ペン先干渉    
2008-09-29 Montblanc Dumas 18K-M 新品      
2008-09-27 1950年代 Montblanc No.146G 14C-BB 柔らかく・・・      

2008-09-24 1950年代 Montblanc No.146G 14C-B クレーター       
2008-09-22 Pelikan 500NN 黒縞軸? 14C-EF 超段差!      
2008-09-20 Montblanc No.149 18C-F ペン先曲がり復活!       
2008-09-17 1950年代 Montblanc No.144 14C-KM 封印の呪い        
2008-09-15 WARL 金張り Pencil Set 14C-M ペン芯が緩い・・・            
2008-09-13 1950年代 Montblanc No.146 14C-KOB → KB 却下!
2008-09-10 1950年代 Montblanc No.144 14C-KEF クーゲルらしく 
2008-09-08 梅田阪急限定ブライヤー 21K-M・・・シャリシャリ感撲滅
2008-09-06 Montblanc No.242G 14C-KF クーゲルの書き味ではない 
2008-09-03 Sheaffer PFM- 幻の18K-B ニブ・・・インク吸入せず
2008-09-01 Montblanc No.134 14C-OB ペン先波打ち修整
2008-08-30 柘製作所 マイカルタ 21K-B ペン先段差   
2008-08-27 1950年代 Montblanc No.144 14C-OBB 生贄 
2008-08-25 1960年代 Montblanc No.72 ペン先曲がり、そして・・・
2008-08-20 Montblanc No.146 14K-F 首軸よりインク漏れ 
2008-08-18 Pelikan M800 現行品 18C-M 軽い引っ掛かり 
2008-08-16 1970年代 Montblanc No.149 14C-F 尻軸ユニット破損 
2008-08-14 NAMIKI Vanishing Point 14K-B インクフロー改善 
2008-08-11 1960年代 Montblanc No.149 14C-M 首軸破損 
2008-08-09 Parker Victory 酔いどれの後始末  
2008-08-06 Montblanc No.149 18C-EF ペン先曲がり   
2008-08-04 Sheaffer インペリアル 14K-F 手が伸びるペンに!
2008-08-02 Montblanc No.149 14C-F ピストン動かず・・・
2008-07-30 Pelikan M700 雑巾トレド 18C-M 書き味微調整 
2008-07-28 Montblanc No.144G 14C-OB→B 研ぎ出し    
2008-07-26 Parker Duofold International 18C-XXB 生贄
2008-07-23 1950年代 Montblanc No.142 14C-M 書き味向上
2008-07-21 Parker Duofold センテニアル 18C-XXB 生贄
2008-07-19 1950年代 Montblanc No.146 14C-BB 生贄
2008-07-17 Pelikan 500N 茶縞 14C-M インクフロー改善
2008-07-15 Montblanc No.149 14C-M 書き味向上
2008-07-07 Delta ドルチェビータ オーバーサイズ 呼吸困難  
2008-07-05   Sheaffer インペリアル 純銀 首軸ユニット交換   
2008-07-02   Montblanc No.149 胴軸交換   


Posted by pelikan_1931 at 10:00│Comments(8) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
coulomb しゃん

結局、不要となった軸が、めだかさんのお役に立ち、よかったですな。

皆が幸せになった一日でした。
Posted by pelikan_1931 at 2008年11月16日 10:30
yemo しゃん

萬年筆の、萬年筆たる根本はペン芯の発明ですからな。ペン芯が萬年筆の真髄というのは確かかも。
Posted by pelikan_1931 at 2008年11月16日 10:26
安達功太 しゃん

たまに訪問させていただいております。

お互い、細かいところが異様に気になるタイプのようで!
ま、大局観も必要でしょうがね。
Posted by pelikan_1931 at 2008年11月16日 10:23
>>万年筆の魂

面積・体積の大きさでいえば・・・胴軸(+尻軸+首軸+キャップ)

原価の高さでいえば・・・ニブ(軸に凝った限定品を除く)

機能的な心臓部という点では・・・ペン芯

こんなところでしょうか

歴史的・技術的に万年筆をそれ以前のペンから分かたせ
万年筆たらしめたものという点で個人的にはペン芯に一票
Posted by yemo at 2008年11月12日 22:36
簡単に考えてお願いしてたのですが・・・・
こんな大事になるとは,お手数おかけしました.

さすがの推測,全て正解です!
>誰かが調整を施しているのは事実であろう。
>ルーペでシゲシゲとペンポイントを観察するタイプ
どちらも正解です.

再会が楽しみです.アリガトウございました.
Posted by coulomb at 2008年11月11日 08:21
5
こんばんは。
島根県松江市の安達功太です。

先日の8時間にも及ぶ“戻し”との闘いと言い、今回の調整と言い、
誠に素晴らしいです。とくに、最後のペンポイントの横顔の画像
などは、非常に美しい…。まさに神業としか言いようがありませ
ん。(調整前の画像からは想像も出来ない。。。)

実は、私もルーペでシゲシゲとペンポイントを観察するタイプでし
て(苦笑)、いつもながら調整後の横顔の美しさには惚れ惚れいた
しております。m(_ _)m

これからも楽しみにしております!
どうか、お体にはお気を付けて。^^;

では失礼いたします。



by 安達功太

Webmaster's Diary 〜知的生産ツールの話題を中心として〜

■http://www.h7.dion.ne.jp/~i-trans/
※Contentsの画像をクリックすると「隠しページ」へ行けます。
Posted by 安達功太 at 2008年11月10日 21:32
ポンちゃん

萬年筆とは複合体の事を指すが、敢えて言えばどれか?
ペン先か、ペン芯か、首軸か、胴軸か・・・
あるいはペン先+ペン芯+胴軸か・・・

こう考えると、少しずつ宿っているというsetuが正しいような気もしてきますな。

とすれば、開高健80%モデルなんてのが出てきそう・・・
Posted by pelikan_1931 at 2008年11月10日 20:37
“万年筆の魂”の下り、興味深く読ませていただきました。
考えた事もなかった発想ですが、非常に深いテーマですね。
各パーツそれぞれにちょっとづつ宿っている気がしますが…
うーむ。
Posted by ポンちゃん at 2008年11月10日 16:48