2008年12月03日

水曜日の調整報告 【 1950年代 Montblanc No.144 14C-KF 多少ひっかかる? 】

2008-12-03 01 今回の依頼品は1950年代No.1441950年代No.14XではNo.144が一番拙者の好みに合っている。No.146は多少とも大きい分だけ、不具合が出る確率も上がっている。No.149はさらに壊れやすい。No.142は小さいわりに重くて壊れやすい・・・特に落下に弱い。

 No.144は大きさと重さのバランスが一番しっくりと来るような気がする。縞軸No.146のそれと比べれば、まだ狂ったような価格にはなっていない。何より1950年代Montblanc No.14X群では、一番修理がしやすいモデルで、実はここが一番重要かも知れない。

2008-12-03 022008-12-03 03 今回の依頼事項は、右上に書くときに多少ひっかかるのを直して!ということであった。

 図を見てもわかるが、スリットが詰まりすぎ。またKF(クーゲル・ファイン)とのことだが、KOFではないかな?少し左オブリークがかかっているような気がする。

2008-12-03 042008-12-03 05 横顔を見れば、右上に線を引く際に引っ掛かるというのがよくわかる。

 かなり右側が下がっているので、左下に時を書くときにはエッジがひっかかり、右上に線を引く時には、筆圧をかけないとインクが紙につかない。

 インクが出るほど筆圧をかけると線を引く際に、あらゆる方向にエッジが引っ掛かってしまう。やれやれ・・・

 スリットを多少開いてインクフローを良くすると同時に、段差を無くして筆圧をかけなくてもインクが紙に付くように調整する・・・書けばたった一行だが、柔らかいペン先を手なずけることが如何に大変かは、やったことのない人にはわかるまいなぁ・・・調整戻りとの戦いなのじゃ!

2008-12-03 06 まずは首軸をお湯で温めて、ソケットの凹に専用工具を入れて左回しに捻って抜き取る。専用工具が無くても、以前に紹介した3本100円のフォークの先端を削って曲げた器具でもOK。先端部を丹念に磨けば専用工具にひけを取らない性能を発揮する。

 それにしてもソケットにインク滓も接着剤の痕跡も無い。調整者が完璧にクリーニングしてから販売していると思われる。

2008-12-03 072008-12-03 08 ソケットからペン先を外し、スリットの寄りを弱め、さらに段差を直した状態が左画像。

 この状態でも、ペンポイントの左右の大きさ(高さ)に相違があり、上を合わせれば下がはみ出し、下を合わせれば上が段差になると言う状態・・・

 そこで、ペンポイントの上部を合わせた上で、下部に飛び出したペンポイントを研磨した。これで正面から見ても破綻のないペンポイントになった。

 さらにはお辞儀角度が強いのにペン先とペン芯の間にスリットが発生していた。これは下記にように調整した。

2008-12-03 092008-12-03 10 ペン先のお辞儀の角度を弱めて猫背を矯正した。それに合わせてペン芯を熱湯で反り気味に曲げ、その上にペン先を載せてソケットで挟んで再度熱湯に入れると、ペン先の反りの戻る力で、熱湯で柔らかくなったペン芯がもとの状態に戻ろうとする。その一瞬のタイミングで冷水に入れると、ペン先とペン芯は密着したまま、最適な位置で固定される。

 これは何度かやればタイミングは自ずとわかる。難しくはない。大切なのは仕組みを理解したうえでトレーニングをすることじゃ。プロの方々は、蒸気でやるケースが多い。川窪さんはストーブにかけたヤカンの口にかざしていたように記憶している。海外ではヘアードライヤーでやるとか・・・このあたりは試していない。それぞれ身についた方法でやっているようじゃ。

 試してみたが、書き味が俄然柔らかくなった。これは猫背を矯正したから。また引っ掛かりを解消したことによって、ストレスのない筆記が可能になった。

 今まで何本ものクーゲルに出逢ったが、どれも調整を施して初めて滑らかな書き味になった。ということは、クーゲルの持ち味は滑らかな書き味では無いということ。今回はペンポイントの状態が悪かったのでかなり研磨して滑らかな書き味にしてしまったが、次世代に伝えたいような状態のクーゲルであれば、呪いをかけて死蔵していただくか、インクフローだけの改善に留めたいものじゃ。


【 今回執筆時間:5時間 】 画像準備1.5h 修理調整2h 記事執筆1.5h
画像準備
とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間  
     


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Posted by pelikan_1931 at 06:00│Comments(2) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
しまみゅーら しゃん

やはり伝統の技だったようですな!
Posted by pelikan_1931 at 2008年12月06日 08:42
>川窪さんはストーブにかけたヤカンの口にかざしていたように記憶している。

 弘前の「平山萬年堂」の主人もそういえばその方法でした。
Posted by しまみゅーら at 2008年12月03日 09:31