2008年12月10日

水曜日の調整報告 【 1960年代 Montblanc No.149 18C-F 超合金-Z ? 】

2008-12-10 01 今回の生贄は1960年代のNo.149。当時は18金ペン先と14金ペン先が同時並行で製造されていた。日本市場でどちらが多かったのかは・・・わからない。拙者の手元に持ち込まれる物は、海外オークションで購入した物、海外から入手した物を国内で整備して販売している物が大半なのでな・・・

 今回の生贄で書いてみてビックリ!【硬〜〜〜〜〜い!】。なんじゃこりゃぁ!と叫びたくなるほど硬い。この時代のNo.149は極太ニブを除けばそれほど硬い物はなかったはずなのだが・・・

2008-12-10 022008-12-10 03 ペン先の拡大図を眺めても特に問題はない。スリットもちゃんと開いている。インクフローが悪いわけではない。

 多少先端部が開き気味だがインクが切れたりするほどではない。ペン芯とペン先の位置関係も問題はない。まだペン先一枚ごとの個体差も多かった時代なのでその影響もあるのであろうが、いくらなんでも硬すぎる。

2008-12-10 042008-12-10 05 横顔を見てわかった。ペン先先端部がわずかにお辞儀が強まっている。そしてペン先とペン芯との間に若干の隙間がある。

 想像するに、何かの加減でペン先とペン芯との間に隙間が出来た。それを解消しようとペン先を下に曲げたが隙間は解消出来ず。たまにインク切れする。使うのがイヤになってオークションに出した・・・というところではないかな?

 修理方針としては、

 1:まずはペン先端部がわずかに開いているのを直す。これは1秒で終了。
    例のゴムブロックにテープで貼り付けた隙間ゲージの上の作業をやればよい。

 2:ペン芯のお辞儀を直す。これは熱湯に入れて多少柔らかくしたペン芯を火傷覚悟で力ずくで猫背矯正。

 3:ペン先先端部の猫背をツボ押し棒の横側で矯正。

 4:それらを組み合わせて、再度熱湯に入れ馴染ませる。

 ということになる。今まで何年も修理講座を記録に残したおかげで、拙者自身の知識も整理・体系化出来たので迷いが少なくなった。このBlogは読者に自分で萬年筆の修理・調整を促す目的で書き始めたが、一番恩恵を受けているのは、実は拙者じゃ。

2008-12-10 062008-12-10 07 こちらが作業完了後のペン先。美観の観点からペン先先端部の擦り傷は金磨き布で消してある。

 また左右のペンポイントの大きさのアンバランスも修整した。そしてスイートスポットを作り込んでおいた。ペン先の厚みは薄いのでしっかりと首軸に押し込む作業も怠ってはいけない。調整は決まった手順どおりにやるだけではなく、臨機応変でアレンジが必要になってくる。今回はこの【押し込み】がアレンジだった。

2008-12-10 082008-12-10 09 こちらが横顔。多少強かったお辞儀は取れ、ペン先とペン芯とは密着し、筆記角度に合わせてペンポイント上にわからない程度に平面を刻み込む。これがスイートスポット作りのコツじゃ。

 粗い耐水ペーパーの上で文字を書いて貰うのは、スイートスポットの位置を確かめるため。ゴリゴリという音の割には研磨自体にはほとんど役にたっていない。その後で拙者がゴリゴリやる作業は依頼者の10倍は削っている。

 調整終了後の書き味だが・・・激変した!紙の上でインクが盛り上がるようなインクフローは筆圧を下げ、実に良い筆記感を提供してくれる。調整前後の書き味変化の度合では、これまでで5本の指に入るであろう。

 微調整】も馬鹿に出来ないとわかった貴重な体験であった!


【 今回執筆時間:4.5時間 】 画像準備1.5h 修理調整2h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
   
    

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Posted by pelikan_1931 at 06:00│Comments(4) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
t_stoneしゃん

基本的には小さなニブほど柔らかく作れるのでな。146が149より柔らかいのは理にかなっている。
Posted by pelikan_1931 at 2008年12月13日 22:59
yemoしゃん

そう、実戦経験です。4月のペンクリはよろしく!
Posted by pelikan_1931 at 2008年12月13日 22:37
やはり硬かったのですね。
入手後、ユーロボックスにて各年代の149の比較をさせていただいたのですが、
149は146に比べると硬いように思います。
50年代のものでも、146の50年代のものに比べて遥かに硬い印象でした。
これほどちがうものかと・・・。
 それとも50年代でも146と同じくらい柔らかいものが存在するのでしょうか?
どなたかお持ちでしたら一度試し書きをさせていただきたいのですが・・・。
ぜひともよろしくお願いします。


Posted by t_stone at 2008年12月12日 23:32
>調整は決まった手順どおりにやるだけではなく、
>臨機応変でアレンジが必要になってくる。

武道でいうところ、「守破離」のうちの「破」の段階ですな。
調整に必要な知識や論理の型を徹底的に身に染め付け(守)、
しかるのちその型を実践を通じて自由自在に現実に即して
適応させるクレバーさを体得してゆく・・・

理論や命題知はあらゆる行動の基礎原則となるため
もちろん重要ですが、しかしその型にばかり捕らわれ、
頭でっかちになっては柔軟性に欠けてしまう。

そうならないために多く実戦経験を積み、その中で
経験知、勝負勘といったものも身につけなければならない。
万年筆の調整に即していえば、とにかく多くの筆を壊して
どの調整法を、どんなときに、どの程度施すかについての勘
を会得することとでもいえましょうか。

流石師匠、見事な見識、御見逸れいたしました。
Posted by yemo at 2008年12月10日 15:21