2008年12月13日

土曜日の調整報告 【 Montblanc No.256 14C-KM まるで新品! 】

2008-12-13 01 本日紹介する依頼品は1950年代のNo.256。胴体は後期のブルーインク窓だが、ペン芯は初期のフラットフィード。この組み合わせが最も具合がよい。インク窓がブルーのモデルではキャップのクラックが発生する確率が小さいからな。

 キャップと胴体の時代も合っている。初期のモデルではキャップにロゴを彫っていたのでクラックが発生しやすかったのかも知れない。後期ではロゴはクリップに移った。

 後期でも最初はクリアなインク窓であったということなので、移行期にはありとあらゆる組み合わせが存在したと思われる。

2008-12-13 022008-12-13 03 ペン先は14C-KM。すなわちクーゲルのペン先を持っている。ご当地ではいまだにこういうお宝が発掘されることがあるのじゃな・・・羨ましい。

 ペン先はぴっちり詰まっていてインクは出ない。それによく見るとエボ焼けもすごい。ただしペン先にセットする位置はベストポジションなので、No.256を良く知っている人が調整したと思われる。ただしペン先は研いではいない。

2008-12-13 042008-12-13 05 こちらが横顔。これぞクーゲルの姿!というほどの端正な顔をしている。

 考えようによってはニブの厚さよりもペンポイントの厚みが勝っているので、ペンポイントをペン先の金で包み込めていない。従って必要以上に筆圧がかかるとポロっと逝ってしまうかもしれない。

 それを防ぐためにクーゲル・ポイントを付けるペン先は通常よりも筆圧を吸収出来るような柔らかいペン先にした・・・と推理を楽しんでみた。

 何故クーゲル・ニブ付きのペン先は柔らかいのか?に対する仮説としては面白かろう。この画像を見ているうちに思いついただけじゃが・・・

2008-12-13 062008-12-13 07 左が調整前、右が調整後。単にエボ焼けや汚れを落とし、スリットを多少拡げただけ。一番の目的は綺麗にすること。金磨き布の上でゴシゴシペン先を擦っていると表面は見事に光ってくる。金磨き布を手に持って擦るよりもはるかに生産的。

 一番難しいのはスリットを開くこと。上面がフラットなペン先ではエラを張るように両縁を持ち上げると、スリット周辺の見映えが悪くなる。従って指の力でスリットを拡げるしかない。これが大変・・・

2008-12-13 08 上記右側の画像の部分拡大。微妙にスリットが開いているのがわかるかな?これ以上拡げると、ペン先が波打ってしまう。これが美しさを保てる限界の調整じゃ。

 まさに芸術品のように美しいペンポイント!この時代のペン先は鍛錬にもペンポイントの溶着にもずいぶんと時間をかけて慎重にやったのではないかと思えるような仕上げ。眺めているうちに自分が時間軸のどこにいるのかわからなくなりそう。

2008-12-13 092008-12-13 10 こちらが装着完了した状態。実は今回は一切研磨はしなかった。このペンポイントには呪いをかけ、次世代に繋いで欲しいと思ったのじゃ。

 将来、必ずクーゲルの真の姿を追求する時が来る。その時に、この【典型的なクーゲル・ニブ】が非常に良い資料になるであろう。

 自分の萬年筆ではないので、気軽に呪いをかけているが、いったい何本に呪いをかけたのかなぁ・・・


【 今回執筆時間:3時間 】 画像準備1.5h 修理調整0.5h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
      
   


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Posted by pelikan_1931 at 07:45│Comments(2) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
venezia 2007しゃん

このクーゲルは美しい!ぜひ文化遺産として次世代に伝えて下され。
Posted by pelikan_1931 at 2008年12月14日 21:08
「呪いをかけ封印。」しかと承知しました。256はこれ1本しかありませんので使ってみたい気持ちも有るのですがキャップが割れていないものを探すこと自体が難しいはずなので、お蔵入りさせておきます。まるで新品のように再生して頂き有難うございました。ところでこんなものがまだまだ出てくる独逸はたいしたもんです。
Posted by venezia 2007 at 2008年12月14日 19:42