2008年12月20日

土曜日の調整報告 【 Pelikan M700 トレド 18C-OBB ソケットゆるゆる・・・ 】

2008-12-20 01今回の依頼品は現行のPelikan M700 トレド。バイカラーの18C-OBBニブが付いている。以前ならOBBをBBに研ぎ直すような事をやっていたが、最近では形状はOBBのままで調整をするようにしている。刻印と形状を変えると、やはり気持ち悪い。次世代の人々から【改造ペン】と蔑まれるのは不本意という気持ちに代わってきた。

2008-12-20 022008-12-20 03 調整前のペン先。画像だけ見た段階ではインクフローが悪いだけかな?と考えたが、実は背開き気味で段差もあった。

 書き味もガサツで、お世辞にも上品とは言い難い。普通に持つと、左下から右上への線を描く際に先端部のエッジが引っ掛かってまともに運筆出来ない!これがオブリークを使う場合の唯一の難儀。これは比較的簡単に克服できる。

 そして致命的欠陥がある。ペン先とペン芯が左右にズレやすいのじゃ。この状態はペン先とペン芯をソケットに相当押し込んでも改善されない。実は、このグラグラ状態の改善が依頼事項だった・・・

2008-12-20 042008-12-20 05 横顔がこちら。一見何の問題も無さそうな形状だが、右側画像の手前側のペンポイント面が絶壁のように切り立っている。

 これが運筆をガサツにする原因。解決するにはオブリークの形状は変えずに、多少捻っても書けるような微調整を施すのじゃ。もちろん小さなスイートスポットを埋め込む事も必要。

2008-12-20 06 こちらはソケットから外した状態のペン先。ほとんど汚れていないが、スリットは詰まっている。この詰まりは一瞬で改善できる。多少ペン先のエラ部分を反らすようにすればよい。Pelikan 400NN時代のペン先スリットを拡げるのは大変だが、最近のペン先はすぐに形状変化が出来る。

 最近のニブに関して言えば、調整師の生産性は格段に上がったし、インクフロー向上の自由度も格段に良くなった。すなわち低筆圧でも潤沢なインクフローが得られるようになった。

 インクフロー
重視の拙者は、最近のニブの書き味の方がはるかに好きじゃ。飽きが来ない。ただ弾力のある書き味好きの人には、現行ニブは何とも味気ない書き味と感じられるであろう。

 自分で調整して書き味を楽しもうとするなら、最初はVintageはやめておいた方がよい。調整の幅が狭いので、自分の腕はたいしたことないな・・・とがっかりするはず。むしろ現行品の方が変化が大きく楽しめる。そちらで十分に修業した後でVintageに入るのがよいであろう。

2008-12-20 07 今回の生贄の最大の弱点はペン先がグラグラすること。調べてみると、ソケットの内径はやや大きく、ペン芯はやや細いようであった。従ってどちらかを生かしても、グラグラは直らない。

 そこでペリスケ用のニブからペン芯とソケットを流用して、それにM700のペン先を取り付けた。実はペリスケもM400もM700も同じソケット/ペン芯なので相互に融通が可能なのじゃ。

 交換後はゆるゆる感は消え、ピッタリとホールドされた。やはりペン先が薄いわけではなかったな。

2008-12-20 082008-12-20 09

 こちらが調整後に首軸にセットした状態。ペンポイントの向かって右下のエッジが多少丸みを帯びているのがわかるかな?これによって右上方向への運筆がウソのように楽になったはずじゃ。

 拙者がバイカラーニブが好きではない原因のひとつは、最終仕上げに表面をピカピカに磨き上げられないこと。それをバイカラーでやると、プラチナ鍍金がまだらに剥がれてしまう・・・ペン先表面はいつもピカピカに輝いて欲しいという拙者の気持ちはバイカラーニブでは達成できないのが残念!

 それにしてもペン先の刻印は拡大表示するとすさまじいな・・・かなり金を彫り込んでいる。

2008-12-20 10 生贄と言うことなので、最後の段階でスイートスポットを作り込んだ。げげ、ここまで削るの?という感じを持つかも知れないが、OBBを通常の持ち方で書いても書き味がよいように研ぐには腹側の研ぎはかなり大胆にやる必要がある。上から見たらOBBでも書き味はBBというのがオブリークに対する【隠密研ぎ】じゃ。今思いついただけで、深い意味はない・・・


【 今回執筆時間:3時間 】 画像準備1h 修理調整1h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
      


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Posted by pelikan_1931 at 08:00│Comments(2) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
つきみそうしゃん

OBBの刻印と形状は一致させつつ、書き味も良く・・・という無理な要望こそ面白いのじゃ!またよろしく。
Posted by pelikan_1931 at 2008年12月21日 20:43
 そういえば今日は忘年会・・・なぜ東京にいないのか、不思議です(そんなことは全くない)。

 オブリークという先入観で持つと、おおっ!となるペンですね。右に倒し気味の私がオブリーク! こういう変態なペンが大好きです。生け贄には御利益があります。
Posted by つきみそう at 2008年12月20日 11:10