2009年01月05日

月曜日の調整報告 【 Montblanc No.142 14C-BB  ガタガタからの復活 】

2009-01-05 01 今回の依頼品はMontblancのNo.142。過去の調整講座への登場回数から考えても、1950年代のMontblanc製品が構造上劣化しやすいのは明白。ただし修理器具、修理部品とも充実しているので、これからもかなり長期間の延命が可能なのも事実。ペンポイントの摩耗が無ければ・・・

2009-01-05 022009-01-05 03 今回のNo.142BBのペン先付き。この時代のBBは現在ではスタブとかイタリックに近い。カリグラフィー用と同じような扁平なペンポイントを持っている。

 そして筆圧をかけて線の太さの変化を楽しむように出来ている。そのせいか強筆圧で書かれる機会が多く、ペン先が異様に摩耗しているものにしょっちゅう出会う。今回もそうじゃ。上から見るとスリットが詰まっているだけに見えるが・・・

2009-01-05 042009-01-05 05 横顔を見るとペンポイントが鋭利な刃物でスパっと切り落としたように斜めに削れている。これはかなり強筆圧で愛用した証だが、軸はそれほど劣化していない。ということは比較的短期間に集中的に手紙を書き続ける人が使っていた萬年筆ということになる。

 こうやって一本の万年筆の過去に思いをはせるのはロマンティック。もし軸に個人の名前でも彫ってあれば言うことはない。

2009-01-05 06 ペン先をソケットから外してみると、やはりペン先のスリットは詰まっている。裏側のエボ焼けはほとんど無い。ということは海外のプロの修理人の手を経ていると考えられる。

 国内の修理人の手を経ていれば、スリット調整やペン先研磨はやってくれるはずだが、海外ではペン先研磨はほとんどの場合やっていない。このあたりに国民性が出るのかな?ペン先調整は自己責任でやるか、別途費用を払って依頼する物と考えているようじゃ。

2009-01-05 072009-01-05 08 ただ今回のプロ、あるいは経験豊富なアマチュアの修理人は、1950年代のソケットとペン先の あるべき位置関係を知らなかった!

 ソケットには正面に切れ目がある。ここに器具を差し込んで、右に捻ってペン先+ペン芯+ソケットを首軸にねじ込むのじゃ。従ってソケットより幅の広いペン先は対面するソケット溝に対して90度の角度で差し込まないと、器具の凸部分がペン先のエラにひっかかってソケットの凹まで到達しない。

 今回はまさにその状態だった。幸いにしてペン先とペン芯を挟んで引き抜く事が出来たが、抜けなければ首軸を外して後からペン芯とペン先をたたき出す必要があった。

2009-01-05 09 今回はほとんどの時間をペン先研磨に費やした。イタリック形状のペン先は右上に線を引く時に紙にひっかかりやすいので、右側の肩を丸めておく必要がある。この個体では既にかなり丸められていたのだが、それは外周だけでありペンポイントの腹に当たる部分がまったく研磨されていない。

 まずはスリットを広げてインクフローをギリギリまで上げた上で、ペンポイントの内側も(それとわからない程度に) 研磨する・・・と、想像も付かないほど良い書き味に激変する。

 拙者は現行萬年筆愛好派なので、かなり悔しいのだが、この書き味に対抗できる現行品は見あたらない。負け惜しみを言えば、このNo.142で書いているとすぐに書き味に麻痺して飽きてしまうこと。M800ならこういう飽きはこないで長時間書き続けられる。Vintage萬年筆は拙者にとっては【お口直し】のようなもの。大量に摂取は出来ない。調整の度に数分間堪能すれば十分じゃな。

2009-01-05 10 こちらが研磨されたペンポイントの横顔。切り落とされていたペンポイントは適度の丸みを帯びているのがわかるかな?

 これはペンポイントのエッジの上下をすこし丸めただけ。それでもこのように丸く見えるようになり、引っ掛かりは消える。あとはペンポイントの表面仕上げをすれば、滑らかな書き味になる。ただ滑らかすぎるとNo.142独特の書き味を損なってしまうので、エッジ以外にはラッピングフィルムをかけないのがコツじゃ。


【 今回執筆時間:4.5時間 】 画像準備1.5h 修理調整2h 記事執筆1h
画像準備
とは画像をスキャナーでPCに取り込み、向きや色を調整して、画像ファイルを作る時間
修理調整
とは分解・清掃・修理・ペンポイント調整の合計時間
記事執筆とは記事を書いている時間
   
        


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Posted by pelikan_1931 at 07:07│Comments(2) このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 萬年筆調整 
この記事へのコメント
venezia 2007しゃん

Pelikan M300のニブはすばらしく柔らかかったのですが、2年ほど前に設計がかわって猫背になりました。

それ以前のはなかなか良かったですぞ。
Posted by pelikan_1931 at 2009年01月08日 23:12
実は、師匠に調整をお願いする前にこのガタガタの状態で一年以上も使っていたんですが、この度は素晴らしい書き味に変身させて下さり有難うございました。BBニブは50年代ではこの142の他に144、146も使っているんですが、何故かガタガタでしたが使っていて一番楽しいのは142でした。小さな胴体についているスタブのBBってもうそれだけで何を書いても凄く快感です。本当に今はこういうのが現行品にないのが残念です。
Posted by venezia 2007 at 2009年01月08日 22:25